IgG4関連疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231144A
報告書区分
総括
研究課題名
IgG4関連疾患に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-043
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 勉(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 和一(関西医科大学 内科学)
  • 下瀬川 徹(東北大学 医学系研究科 )
  • 神澤 輝実(がん・感染症センター駒込病院 内科 )
  • 川 茂幸(信州大学 総合健康安全センター)
  • 中村 誠司(九州大学 医学研究院)
  • 木梨 達雄(関西医科大学 生命科学研究所)
  • 三嶋 理晃(京都大学 医学研究科)
  • 坪内 博仁(鹿児島大学 医歯学総合研究科)
  • 松田 文彦(京都大学 医学研究科)
  • 能登原 憲司((財)倉敷中央病院 病理検査科)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学 医学部)
  • 梅原 久範(金沢医科大学 医科学研究科)
  • 住田 孝之(筑波大学 人間総合科学研究科)
  • 三森 経世(京都大学 医学研究科)
  • 坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
  • 吉野 正(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
  • 友杉 直久(金沢医科大学 総合医学研究所)
  • 赤水 尚史(和歌山県立医科大学 医学研究科)
  • 川野 充弘(金沢大学 医学部附属病院)
  • 田中 良哉(産業医科大学 医学部)
  • 高橋 裕樹(札幌医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
62,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「IgG4関連疾患」は、世界中で注目をあびている新しい疾患概念で、血清IgG4高値と組織のIgG4形質細胞浸潤を特徴とする。本疾患の研究は常に日本が世界をリードしてきた。平成21-23年度には、厚労省難治性疾患研究の2つの研究班が連携し「IgG4関連疾患の病名統一」「疾患概念確立」「包括診断基準の制定」を実現した。またH23年10月に開催された第1回IgG4関連疾患国際シンポジウムでも、本邦で確立された病名と疾患概念が国際的に承認された。以上より、本疾患のさらなる研究が必要と考えられたため、IgG4関連疾患研究者全員が合流して本班が開始された。IgG4関連疾患の病変は全身臓器に及ぶが、その病因病態は未だに不明である。このため本研究班では、(1)専門家による臓器別の7分科会を設置し、各臓器におけるIgG4関連疾患の診断基準策定を行う。さらに(2)前向き症例登録によってIgG4関連疾患関連遺伝子の同定を行う。さらに(3)上記解析によって、ステロイド治療効果、再発の予測方法を確立するとともに、治療の標準化や新しい治療法の検討も行う。
研究方法
1. 臓器別専門家による分科会を組織して臓器別診断基準策定を行う。また包括的な重傷度分類の策定にむけて検討を行う。
2. 厚労省遺伝子解析班と連携し、本疾患の遺伝子解析、蛋白解析を行う。
3. ステロイド治療の、効果規定因子、予測因子について、厚労省難治性膵疾患研究班と連携して検討し、新しい治療法開発に向けての礎とする。
4. IgG4関連疾患と発癌についての関連性について大規模な調査を行う。
結果と考察
(1) 各専門家による分科会を設立し、すでに完成している、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、ミクリッツ病に加えて、腎臓疾患、眼科疾患の診断基準策定が行われた。また厚生労働省の医療費助成の拡大にむけて、その参考とすべく、包括重傷度分類策定の検討を開始した。
(2) ミクリッツ病、自己免疫性膵炎を中心に検体を収集し、遺伝子解析を開始した。その結果、PITX2, TRPS1, LOC72872遺伝子多型が有意の関連性を示していた。今後、ミクリッツ病と自己免疫性膵炎に共通した遺伝子、逆に一方のみに相関する遺伝子多型について、検討を行う。さらに、ステロイド治療の反応性を規定する遺伝子の同定を行う。
(3) 自己免疫性膵炎のステロイド治療の標準化に向けて、前向き治療研究を行っている。この際、先のGWAS遺伝子研究とあわせることによって、再発にかかわる遺伝子多型を同定して、再発の予知、予後予測が可能な遺伝子の同定を開始した。これらの結果によって推奨治療プロトコール確立をめざす。ステロイド治療については、治療を中断した場合、約半数が再発する。したがって中断することによって、どの程度再発がみられるのか、さらにそれを規定する因子は何か、についてデータが得られるものと期待される。
(4) IgG4関連疾患では、癌の合併が多いことが指摘されている。そこでIgG4関連疾患患者について、IgG4関連疾患診断時、その後に癌の合併がみられたかどうか、さらに癌の種類、癌治療後のIgG4関連疾患の経過、がん組織のIgG4陽性細胞の浸潤程度、などについて調査を開始した。個別研究においては、IgG4関連疾患がparaneoplastic syndromeである可能性が指摘され、その際、膵癌よりもむしろ胃癌、肺癌の合併が多いことが明らかとなった。以上の事実は、本疾患患者をフォロウする際には、癌の合併を常に考慮する必要性があることを強く示唆している
(5) オールジャパン体制で「各臓器の診断基準策定」「IgG4関連疾患の病名統一」さらに「IgG4関連疾患包括診断基準」を世界に先駆けて公表した。この成果は国際的にも反映され、本研究班が提唱した「IgG4関連疾患(IgG4-related disease)」が正式に採用されるとともに、本邦で確立された疾患概念が国際的に広く受け入れられた。
結論
1. IgG4関連眼科疾患、呼吸器疾患について臓器別診断基準を提案した。
2. IgG4関連疾患のGWAS解析を開始し、中間解析で、いくつかの遺伝子と有意の相関性が観察された。
3. ステロイド標準投与法の確立、中断による再発率、その危険因子同定の検討を行った。
4. IgG4関連疾患では癌の発症率が高く、特に肺癌、胃癌の合併が多いことが示された。

公開日・更新日

公開日
2013-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231144Z