腎・泌尿器系の希少難治性疾患群に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231142A
報告書区分
総括
研究課題名
腎・泌尿器系の希少難治性疾患群に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-041
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
飯島 一誠(神戸大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森貞 直哉(神戸大学 医学研究科 )
  • 中西 浩一(和歌山県立医科大学 小児科)
  • 関根 孝司(東邦大学医学部 小児科)
  • 塚口 裕康(関西医科大学 第2内科)
  • 貝藤 裕史(神戸大学 医学研究科 )
  • 五十嵐 隆(国立成育医療研究センター)
  • 竹村 司(近畿大学 小児科)
  • 四ノ宮 成祥(防衛医科大学校 分子生体制御学講座)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学医学部 臨床遺伝学センター)
  • 仲里 仁史(熊本大学大学院生命科学研究部 小児科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
58,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少難治性腎・泌尿器系疾患群(以下、本疾患群)は、包括的な遺伝子診断ネットワークがないために、正確な診断を受けていない患者が多数存在し、その病態は不明な点が多く、原因遺伝子不明な疾患も存在し、大半は有効な管理・治療法がない。本研究班では、本疾患群の①全国疫学調査、②新規原因遺伝子同定、③包括的な遺伝子診断ネットワークの構築、④遺伝子型―表現型関連解析の病態解析、⑤各疾患のiPS細胞作製等を行うことで、その病態を解明し治療法開発につなげることを目的とする。
研究方法
本研究の対象疾患は以下のとおりである。①先天性腎尿路奇形症候:BOR 症候群、Renal-coloboma 症候群、Townes-Brocks 症候群、②希少難治性糸球体疾患:Alport 症候群、Epstein 症候群、Galloway-Mowat 症候群、Fibronectin 腎症、③希少難治性尿細管疾患:尿細管性アシドーシス、Dent 病、Lowe 症候群、ネフロン癆、腎性低尿酸血症(尿酸トランスポーター異常症)、Batter/Gitelman症候群
結果と考察
平成24年度は、研究班のホームページ(http://www.med.kobe-u.ac.jp/sgridk/)を開設し、医療機関からの遺伝性腎疾患の遺伝子解析依頼や臨床的事項に関する相談の受付けを開始した。このホームページは日本小児腎臓病学会ホームページでも情報公開されており、同学会員への周知を行っている。実際、小児腎臓専門医のみならず腎臓内科医からも相談を受けるとともに、本研究班メンバーにより多数の遺伝子解析がなされており、本ホームページを介した遺伝性腎疾患相談及び遺伝子解析ネットワークが臨床現場で応用されている。疫学調査として、今年度は、Alport症候群、Bartter/Gitelman症候群、尿細管性アシドーシスの患者数調査等を実施した。Alport症候群については、診断精度向上を目指した新たな診断基準を作成、全国2,000か所以上に及ぶ医療機関を対象としたアンケート調査を行い本邦における患者数(医療受療者数)を確定診断例で897人(95%信頼区間 740 – 1060人)、疑い例を含めると1182人(95%信頼区間 980-1380人)と推定した。尿細管性アシドーシスの本邦における患者数(医療受療者数)も同様に189人(95%信頼区間 150 – 230人)と推定した。Bartter/Gitelman症候群については、564人(95%信頼区間 480 – 640人)と推定した。また、各研究分担者により、各疾患の遺伝子型―表現型関連に関する多くの知見が得られた。現在、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析などの最新の手法を用いて、新たな原因遺伝子同定に取り組んでいる。さらに、これまでGalloway-Mowat症候群、Alport症候群及び4p monosomy等の複数の対象疾患からiPS細胞を作成することに成功している。
結論
研究班全体として、平成24年度の研究目的は、ほぼ達成できたと考えている。特に、遺伝性腎疾患相談及び遺伝子解析ネットワークの形成やAlport症候群及びGalloway-Mowat症候群の診断基準作成は、臨床現場で直接活用される研究成果であり、研究班ホームページを介し本疾患群に対する一般医家や一般の方の認識や理解が深まることは、臨床現場や行政施策に間接的に活用される研究成果である。今後、未だに原因不明な疾患の原因遺伝子同定に重点的に取り組むとともに、遺伝子型―表現型関連解析やiPS細胞を用いた病態解析等の研究から得られた知見を新たな治療法開発につなげたい。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231142Z