遺伝性不整脈疾患の遺伝子基盤に基づいた病態解明と診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201231134A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性不整脈疾患の遺伝子基盤に基づいた病態解明と診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-033
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清水 渉(独立行政法人国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 稔(国立大学法人 滋賀医科大学 呼吸循環器内科)
  • 青沼 和隆(国立大学法人 筑波大学医学医療系 循環器内科)
  • 蒔田 直昌(国立大学法人 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科内臓機能生理学)
  • 萩原 誠久(東京女子医科大学 循環器内科)
  • 吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
  • 堀米 仁志(国立大学法人 筑波大学 小児科学)
  • 住友 直方(日本大学医学部 小児科学系及び日本大学医学部附属板橋病院)
  • 田中 敏博(独立行政法人理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
  • 森田 宏(国立大学法人 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環器内科)
  • 牧山 武(国立大学法人 京都大学大学院 医学研究科循環器内科学)
  • 渡部 裕(国立大学法人 新潟大学医歯学総合病院、循環器内科)
  • 林 研至(国立大学法人 金沢大学大学院 医薬保健研究域医学系)
  • 鎌倉 史郎(独立行政法人 国立循環器病研究センター 臨床検査部)
  • 白石 公(独立行政法人 国立循環病研究センター 小児循環器部)
  • 宮本 恵宏(独立行政法人 国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 相庭 武司(独立行政法人 国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 福田 恵一(慶應義塾大学 循環器内科)
  • 関根 章博(独立行政法人 国立循環器病研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の第一の目的は、H18年以来蓄積している先天性QT延長症候群(LQTS)などの遺伝性不整脈患者の遺伝情報と臨床情報を含むデータベースをオールジャパン体制で共有し、さらに新規患者登録と遺伝子診断を施行し、遺伝子型、遺伝子変異、多型などの遺伝情報と臨床情報との関連を詳細に検討し、遺伝子基盤に基づいた患者管理と治療法を開発することである。
第二の目的は、同定された変異の機能解析を行い、これを臨床にフィードバックしリスク層別化と個別化治療に応用することである。近年、iPS細胞を活用した難治性疾患研究が世界的に急速な勢いで進んでおり、各遺伝性不整脈疾患患者の皮膚線維芽細胞や血液細胞よりiPS細胞を樹立し、これを心筋細胞に分化誘導し、直接この心筋細胞の機能解析を行うことにより、患者ごとのテーラーメイド治療や病態解明を目指す。
第三の目的は、次世代シーケンサを用いた網羅的全エクソン(Exome)解析などにより、新たな原因遺伝子の同定や各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子を同定することである。
研究方法
臨床的に診断の確定した、(1) 先天性LQTS、(2) Brugada症候群(特発性心室細動)、(3) 進行性心臓伝導障害(PCCD)、(4) カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)、(5) QT短縮症候群(SQTS)、(6) 早期再分極症候群(ERS)患者を対象として遺伝子診断を施行し、遺伝子変異、多型の同定を行った。また、遺伝性不整脈患者のiPS細胞由来心筋細胞を用いて電気生理学的機能解析を施行し、致死性不整脈の発生機序解明を行った。さらに、家族集積性を認めるが変異が同定されていない各疾患の家系について、Exome解析により塩基配列を同定し、未知の原因遺伝子、ならびに各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子を探求した。
本研究は、ヘルシンキ宣言(世界医師会)・ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成16年文部科学省・厚生労働省・経済通産省告示第1号)に準拠して実施した。
結果と考察
1.遺伝子変異、多型の同定と遺伝的基盤に基づいた病態解明や診断・治療法の開発
H24年度には、先天性LQTS患者150例の登録を追加し1000例を超える先天性LQTSとしては世界的にも最大規模のデータベースとなった(清水)。他の遺伝性不整脈疾患でも、Brugada症候群500例(清水)、PCCD 65家系(蒔田)、CPVT患者72例(住友)、ERS患者100例(鎌倉、渡部)、小児科領域の先天性LQTS患者197例(吉永、堀米、白石)のデータベースとなった。また、国内外の多施設共同研究により遺伝情報と臨床情報との関連を詳細に検討し成果を報告した。これらの研究成果により、清水と堀江は、米国、欧州、アジアの3大陸の不整脈学会で合同作成する遺伝性不整脈の診断基準・治療のガイドライン・ステートメント作成メンバーに選出され、2013年に3大陸の不整脈学会誌(Heart Rhythm、Europace、J of Arrhythmia)に公開掲載予定である。さらに、日本循環器学会の「QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン2013年度改訂版」を作成し、2013年に公開予定である。
2.iPS細胞由来心筋細胞を用いた致死性不整脈の病態解明と新しい治療法の開発
先天性LQTS、Brugada症候群など遺伝性不整脈疾患患者108例からiPS細胞由来心筋細胞を作製し(福田)、一部その成果を報告した。また本研究班は、文部科学省の再生医療実現化プロジェクト「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」の共同研究拠点課題の一つである『iPS細胞を用いた遺伝性心筋疾患の病態解明および治療法開発』(代表研究者・小室一成) の協力研究機関にH24年度指定された。
3.新たな原因遺伝子と遺伝的修飾因子の同定
家族集積性を認めるが変異が同定されていない先天性LQTS、Brugada症候群、PCCD、ERS患者でExome解析を開始し(清水、田中、関根、蒔田)、一部の疾患では新規の原因遺伝子候補が同定され、現在、変異として妥当性を検討中である。
結論
各種遺伝性不整脈疾患の遺伝子診断を施行し、遺伝情報と臨床情報を含むデータベースを蓄積した。先天性LQTS患者では1000例を超える世界的にも最大規模のデータベースとなった。その他の遺伝性不整脈疾患でも症例登録を追加した。
先天性LQTS、Brugada症候群など遺伝性不整脈疾患患者からiPS細胞由来心筋細胞を作製し、一部その成果を報告した。
家族集積性を認めるが変異が同定されていない先天性LQTS、Brugada症候群、PCCD、ERS患者を対象としてExome解析を開始し、一部の疾患では新規の原因遺伝子候補が同定された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231134Z