稀少難治性てんかんに関する調査研究

文献情報

文献番号
201231130A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少難治性てんかんに関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 須貝 研司(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経診療部)
  • 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科)
  • 井上 有史(静岡てんかん・神経医療センター)
  • 廣瀬 伸一(福岡大学 医学部 小児科学)
  • 柿田 明美(新潟大学 脳研究所)
  • 白石 秀明(北海道大学病院 小児・周産・女性科)
  • 中里 信和(東北大学大学院 てんかん科)
  • 山本 仁(聖マリアンナ医科大学 小児科学)
  • 亀山 茂樹(国立病院機構西新潟中央病院)
  • 高橋幸利(静岡てんかん・神経医療センター 小児科)
  • 永井利三郎(大阪大学大学院 小児神経学)
  • 小林 勝弘(岡山大学付属病院 小児神経学)
  • 馬場 啓至(国立病院機構長崎医療Cセンター 脳外科)
  • 池田 昭夫(京都大学大学院 医学研究科)
  • 渡辺英寿(自治医科大学 脳神経外科)
  • 馬場好 一(静岡てんかん・神経医療センター 脳外科)
  • 兼子 直(湊病院 北東北てんかんセンター)
  • 開道 貴信(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科診療部 )
  • 佐々木 征行(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経診療部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
29,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 希少難治性てんかんの多くは、乳幼児・小児期にてんかん性脳症を来たし重篤な脳機能障害と発達の停止・退行など破局的な発達予後に至るため、破局てんかん(catastrophic epilepsy)とも呼ばれるが、一方適切な診断と早期のてんかん外科治療等により良好な予後が得られる場合もある。成因の多くは遺伝学的背景に基づく脳形成異常・神経機能異常と考えられるが、病因不明で既存の症候群分類にあてはまらない症例も少なくない。多くの症例が長期的には重度の発達障害など不良な予後をたどるため生涯にわたる社会経済学的負担は大きく、最新の画像診断と遺伝子診断を組み入れた診療体制の確立、外科適応例の早期発見、及び遺伝子解析に基づく疾患分類の見直しと新規治療法の開発が喫緊の課題と考えられる。
 本研究班は、H21~23年度に行われた「乳幼児破局てんかんの実態と診療指針に関する研究」班の成果を引き継ぎ、東アジア国際共同研究(FACE study)を継続するとともに、FACE studyで構築されたweb症例登録システムを基に全国規模の「稀少難治性てんかんレジストリ(仮称)」を発足させることを目的とする。
研究方法
 初年度において1)最新の画像診断と遺伝子診断を踏まえた診療マニュアルを作成し、二年度には2)全国規模の遺伝子診断と病理診断がリンクした症例レジストリシステムの構築を行うことで、今後の基礎的・臨床的研究の推進を図る。
結果と考察
1)「稀少難治てんかん診療の手引き」の作成:今年度、稀少難治てんかん27疾患の疾患概念と診断基準及び診療マニュアルを記載した「稀少難治てんかん診療の手引き」を、分担研究者に加え16名の共同研究者の協力を得て作成した。今後稀少難治性てんかんレジストリの登録に際し、活用されることが期待される。掲載された疾患は、1.新生児期に発病するてんかん、2.大田原症候群(EIEE)、3.早期ミオクロニー脳症、4.West症候群、5.Doose症候群(MAE)、6.Dravet症候群(SMEI)、7.女児に限局する発達障害を伴うてんかん(EFME)、8.遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん、9.Lennox-Gastaut症候群、10.睡眠時てんかん放電重積状態をもつてんかん脳症、11.Landau-Kleffner症候群、12.Tassinari症候群、13.進行性ミオクローヌスてんかん(PME)、14.片側けいれん・片麻痺・てんかん症候群(HHE)、15. Aicardi症候群、16.Rasmussen症候群、17.Sturge-Weber症候群、18.傍シルビウス症候群、19.片側巨脳症、20.限局性皮質異形成、21.視床下部過誤腫、22.異形成性腫瘍、23.海馬硬化症、24.結節性硬化症、25.環状20番染色体てんかん症候群、26.GLUT1欠損症、27. Rett症候群である。
2)FACE studyの3年後調査:約300症例の調査開始3年目の発作予後と発達予後の結果が集積され、来年度において解析を行う予定である。
3)対象疾患の患者予備調査:北海道、中部など各地域で行なわれた予備調査では、10万人あたり4人程度の患者数と推定された。従って今後構築されるレジストリは数千人規模と予想された。
4)稀少難治性てんかんレジストリの設計、遺伝子解析キーステーションの連携システムの構築、病理診断キーステーションとの連携及び手術標本レポジトリの構築:本年度に引き続き来年度も取り組まれる予定であるが、達成までに課題は多いと予想される。
 本レジストリの発足により、希少難治性てんかんの病因解明と新規治療法の開発に関する基礎的・臨床的研究が促進され、将来の我が国発のエビデンスの構築が期待される。また患者会とも連携して研究成果の情報公開を推進することで、稀少難治性てんかん患者に対する医療支援体制の充実と、重篤な障害に至る患者が減少することによる社会経済学的効果が期待される。
結論
 今年度、稀少難治てんかん27疾患の疾患概念と診断基準及び診療マニュアルを記載した「稀少難治てんかん診療の手引き」を作成した。今後稀少難治性てんかんレジストリの登録に際し、活用されることが期待される。
 本研究班は、全国規模の「稀少難治てんかんレジストリ」を発足させることを目標としており、本レジストリの運用により、希少難治性てんかんの病因解明と新規治療法の開発に関する基礎的・臨床的研究が促進され、将来の我が国発のエビデンスの構築が期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231130Z