遺伝性貧血の病態解明と診断法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201231126A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性貧血の病態解明と診断法の確立に関する研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-025
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(弘前大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 みはる(東海大学 医学部)
  • 真部 淳(聖路加国際病院)
  • 小島 勢二(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 菅野 仁(東京女子医科大学 大学院)
  • 高田 穣(京都大学 放射線生物研究センター)
  • 浜口 功(国立感染症研究所)
  • 大賀 正一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 小原 明(東邦大学 医療センター大森病院)
  • 照井 君典(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 古山 和道(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 多賀 崇(滋賀医科大学)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
55,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血不全に伴う主な遺伝性貧血には、Diamond-Blackfan貧血(DBA)、Fanconi貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血(SA)、Congenital dyserythropoietic anemia(CDA)の4疾患があるが、我が国では未だに50%以上の症例は原因遺伝子が不明である。本研究の目的は、共通点の多いこれらの4疾患の病態解明、診断・治療法の効率的開発を行うことである。
遺伝性血液疾患において、原因遺伝子が不明な症例を対象にした次世代シークエンスを用いた新規遺伝子同定プロジェクト(小島勢二班長)が進行中であるが、本研究班では各分担者がそれぞれの疾患の研究拠点となり、遺伝性貧血の診断・臨床的データ分析と既知の遺伝子解析を受け持ち、既知の遺伝子の変異が同定できない症例については、小島班で遺伝子の同定を受け持つという連携システムを構築する。さらに、同定された新規遺伝子の機能解析は各分担者が担当する。小児血液学会の中央診断事業と疾患登録事業とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。より正確な遺伝性貧血の実態の把握を行い、診断・治療ガイドラインを策定する。
研究方法
これまでに難治性疾患克服事業により、稀少小児遺伝性貧血であるDBA、SA、FAとCDAの4疾患に関する疫学調査、臨床データの収集、遺伝子解析が行われてきた。しかし、未だに50%以上の症例は原因遺伝子が不明である。本研究では、発症数が少なく共通点の多いこれらの4疾患の病態解明、診断・治療法の開発をより効率的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、4つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部)、CDA(小島))は、臨床データおよび検体の収集、既知の遺伝子解析および原因遺伝子の機能解析を担当する。既知の原因遺伝子に変異が見つからない検体については、小島班と有機的に連携し、新規遺伝子探索を行う。同定された新規原因候補遺伝子の機能解析をin vitroおよびin vivoの系を用いて各研究拠点で行い、見出された遺伝子変異が真の遺伝性貧血の原因遺伝子であるかどうかを確定する。研究代表者(伊藤)がDBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。得られた結果は、各研究班の診断システムの構築と治療ガイドラインの作成に役立てる。
結果と考察
各研究拠点は、臨床データおよび検体の収集、既知の遺伝子解析および原因遺伝子の機能解析を行った。既に、DBA 110検体、SA 14検体、FA 109検体、CDA 18検体を収集した。既知の原因遺伝子に変異が見つからない検体については、小島班と有機的に連携し、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析を進めた。これまでに家族を含めて100検体以上の全エクソンシークエンス解析を行い、新規の原因候補遺伝子が各疾患で複数見出された。DBAでは、新規リボゾーム蛋白遺伝子の変異(RPS27とRPL27)を各1例に見出した。その他に原因候補遺伝子を複数同定し、ゼフラフィッシュを用いた機能解析を進めている。また、平成24年度に二次疫学調査を行い、詳細な臨床情報を収集した。FAでは、本邦では初めての既知の原因遺伝子が見出され、さらにDNA修復に関わる新規の原因候補遺伝子の変異を同定した。また、日本人FA患者55例のサンプルを解析し、アルデヒド代謝酵素ALDH2の活性低下を伴うバリアントアレルの存在によって、骨髄不全の進行が著しく促進されることを見出した。また、SAではALAS2遺伝子変異を10例に見出した他、新規の原因遺伝子候補を同定し、遺伝子改変マウスを用いた機能解析を進めている。CDAも複数の新規原因候補遺伝子を同定した。DBA、FAとSAについては、疾患特異的iPS細胞の樹立を進めている。
遺伝子変異が同定されたDBA22症例と家族内非罹患者14名を解析し、赤血球還元グルタチオン濃度が優れたDBAの新たなバイオマーカーとなり、赤血球アデノシンデアミナーゼ活性値と網赤血球数を組み合わせることで、診断確度が格段に高まることが明らかになった。
結論
新規の原因遺伝子を同定するために、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子解析を進めた。これまでに家族を含めて100検体以上の全エクソンシークエンス解析を行い、新規の原因候補遺伝子が各疾患で複数見出され、機能解析を進めている。さらに、FAでは、アルデヒド代謝酵素ALDH2の活性低下を伴うバリアントアレルが疾患の表現型に強い影響を与えることを見出した。DBAでは、遺伝子解析と疾患特異的なバイオマーカーの検索より、より精度の高い診断が可能になった。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231126Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
69,300,000円
(2)補助金確定額
69,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 53,596,535円
人件費・謝金 286,200円
旅費 1,023,200円
その他 894,065円
間接経費 13,500,000円
合計 69,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
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