血液免疫系細胞分化障害による疾患の診断と治療に関する調査研究

文献情報

文献番号
201231125A
報告書区分
総括
研究課題名
血液免疫系細胞分化障害による疾患の診断と治療に関する調査研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-024
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
野々山 恵章(防衛医科大学校 小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 川口 裕之(防衛医科大学校 小児科学講座)
  • 今井 耕輔(東京医科歯科大学 小児・周産期地域医療学講座)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所 臨床応用研究部門・疾患再現研究分野)
  • 小原 收(財団法人かずざDNA研究所ヒトゲノム研究部)
  • 小島 勢二(名古屋大学 小児科)
  • 山口 博樹(日本医科大学 血液内科)
  • 小林 正夫(広島大学 小児科)
  • 原 寿郎(九州大学 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
65,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 血液免疫系細胞分化障害による疾患の遺伝子同定、迅速な遺伝子診断法の確立、診断基準・治療ガイドライン作成、スクリーニングなどにより早期診断、病態解明、早期治療により疾患予後を改善することを目的とした。
研究方法
1)迅速な遺伝子診断法の確立
2)原因遺伝子同定
3)患者会疾患ホームページの整備、患者勉強会、医療相談会の開催
結果と考察
a)原因遺伝子同定
原因不明の免疫不全症患者について、次世代シークエンサーによるExome解析、RNA シークエンス、iPS細胞などの新規技術により、GATA2, IKAROS、DNAMTB3、ZBTB24、FANCE、ITGB3などの遺伝子が血液系と免疫系に障害を持つ疾患の原因遺伝子であることを解明した。

b)アンプリコンPCRによる迅速遺伝子診断法の開発
アンプリコンPCRにより候補遺伝子を増幅抽出し、次世代シークエンサーによる解析と組み合わせる新規技術を確立し、重症複合型免疫不全症を起こす25遺伝子を迅速に遺伝子解析する方法を確立した。 

c) RNA シークエンスの検証
網羅的エクソンシーケンシングを補完する目的のためのRNAシーケンシングの補完性を検証し、全血の白血球分画のRNAシーケンシングによって既知の免疫不全症原因遺伝子の78%(227遺伝子中の177遺伝子)が検出されることを見出した。

d) 細網異形成症由来iPS細胞の樹立と分化実験
細網異形成症患者由来の繊維芽細胞からiPS細胞を作成し、これを血液前駆細胞に分化させ、コロニーアッセイ、骨髄系細胞やリンパ球への分化アッセイ、アポトーシス解析などのin vitro 解析を行った。

e) 重症先天性好中球減少症由来iPS細胞樹立と分化実験
HAX1遺伝子変異による重症先天性好中球減少症患者から、iPS細胞を樹立し、in Vitroの分化実験で本疾患の病態再現に成功した。

f) 骨髄不全症の遺伝子解析
既知の原因遺伝子に変異を認めず、テロメア長の短縮が確認された骨髄不全16症例を集積した。4症例において、次世代シークエンサーによって既知の原因遺伝子として、RECQL4、ATM、BLMの変異を同定することが出来た。

g) MYH9 異常症スクリーニング法開発
血小板減少を呈するMYH9 異常症のスクリーニングのために、既知の変異の好発部位を網羅する直接シークエンス法の系を構築した。またMYH9分子がT細胞機能と関連していることを示した。

h) 女性のWiskott-Aldrich症候群発症機序の解析
Wiskott-Aldrich症候群(WAS)は、X染色体上にcodeされたWASP遺伝子の変異によって通常男児に発症する。X染色体不活化のほぼ完全なskewingにより発症したWAS女児例を明らかにした。

i) 10カラーFACS法による血液免疫系細胞分化の解析
血液免疫系細胞分化障害を示す疾患のスクリーニングを行うために、3レーザー10カラーFACS診断法の開発を行い、従来13〜18チューブが必要であった末梢血リンパ球分画解析が、7チューブで済むようになり、より少量の血液での解析が可能になった。

 原因遺伝子が既知の疾患については、アンプリコンPCRと次世代シークエンサーによる遺伝子診断法の確立により、迅速に確定診断ができるようになる。次世代シークエンサーで診断が可能になるため、従来のDNA sequenceに対し費用対効果が高く有用である。
遺伝子が未知の疾患(家族性樹状細胞欠損症)については、原因遺伝子同定により遺伝子診断が可能になり、病態解明、新規治療法開発に貢献出来る。次世代シークエンサーによるExome解析で新規遺伝子を同定する方法は、従来法に比べ費用対効果が高く有用である。iPS細胞からの血液免疫系細胞の分化系と、RNA sequenceによる分化段階で発現が更新する遺伝子を同定することで、新規分化因子が同定出来ると考えられる。
 患者由来iPS細胞により病態解明、新規治療の開発に用いることを可能にした。

結論
 血液免疫系分化障害による疾患群の診断、病態解明、治療について大きな成果を上げることが出来た。診断ガイドラインの作成、新規治療の開発を行い、本疾患群の予後の改善を目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231125Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
65,000,000円
(2)補助金確定額
65,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 55,866,995円
人件費・謝金 3,052,557円
旅費 1,543,682円
その他 4,536,949円
間接経費 0円
合計 65,000,183円

備考

備考
研究に必要な物品の購入金額が183円超過したことによる差異である。
超過分の183円は研究者が自己負担し、購入した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-