難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業の成果を基にした原因遺伝子変異データベースの構築

文献情報

文献番号
201231112A
報告書区分
総括
研究課題名
難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業の成果を基にした原因遺伝子変異データベースの構築
課題番号
H24-難治等(難)-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松田 文彦(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 省次(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 松原 洋一(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター 再生医療センター)
  • 松本 直通(横浜市立大学 医学研究科)
  • 山田 亮(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
  • 寺尾 知可史(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
  • 日笠 幸一郎(京都大学 大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
111,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒト疾患の解析に全ゲノムシークエンスが利用可能となったことで、稀少難治性疾患の原因遺伝子変異の情報が加速度的に蓄積されると考えられるが、効率的な研究の実施、医科学的価値の高い成果の創出、患者の適切な診断治療においては、疾患遺伝子情報を共有するシステムの構築が不可欠である。本課題は、稀少難治性疾患研究拠点が連携し、疾患と関連する遺伝子変異情報を集約・共有するためのデータベースを構築することを目標とする。
研究方法
 厚労省「難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業(難病関連研究分野)」の各研究班に検体が集積された疾患を対象に、拠点と一般研究班の緊密な連携のもと、遺伝子リファレンスライブラリーの構築をおこなう。そのために、運営委員会を設立し事業計画の策定や制度設計等を行う。データベースに登録する情報の種類やフォーマットは運営委員会で策定し、公開用システムの構築を進める。データベースには、日本人遺伝子リファレンス情報(4,000~5,000人の健常者のSNP頻度情報、約1,200検体のエクソーム解析情報)、稀少難治性疾患の遺伝子変異情報を蓄積し、次年度後半に公開する。
結果と考察
 研究拠点の代表者による運営委員会を設立し、事業計画策定と制度設計を実施した。提供されるデータフォーマットの標準化、データ提供方法・時期、公開範囲、公開の時期等について検討した。また、一般研究班との連携を構築し、各研究班の実務担当者による協議を進行、運営委員会で策定された計画に沿って事業を推進した。
 次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析パイプライン構築は順調に進んでおり、格納データに関連するゲノム変異の判定方法、データのQC等の標準化プロトコールも作成を終了した。また、遺伝子データベースの設計と構築を実施し、プロトタイプ作成と公開用インターフェイスの開発をほぼ完了した。これらの実施項目は当初の計画通り進行している。今後は班員への限定的公開とフィードバック情報の集約を進め、一般公開に向けてバージョンアップや改訂、新規機能の付加を当初の予定通り進める。
 データエントリーに関しては、約3,600人の健常者のSNP頻度情報、100検体のエクソーム解析情報に基づくゲノム変異の頻度情報をデータベースへ蓄積した。最終目標である4,000~5,000人の健常者のSNP頻度情報、及び、研究分担者より提供されるエクソーム解析情報を合わせて約1,200検体のエクソーム解析による各種ゲノム変異の頻度情報の蓄積に向けて順調に進んでいる。これらの情報に加えて、新規に同定された遺伝子変異の機能的役割を解釈する上で付加価値の高い、遺伝子変異と遺伝子発現量の関連解析(eQTL)情報を加えることができた。これにより本研究事業で構築されるデータベースがさらに利用価値の高いものとなる可能性が高く、目標以上にデータベースの内容を充実させることができたと考えている。
 本事業のウェブページ(http://www.genome.med.kyoto-u.ac.jp/IntractableDiseases)を立ち上げ、プロジェクトの概要・データソースとしての各研究班の情報の発信準備を整えた。
 ナショナルバイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)と連携し、遺伝子データの公開・共有にともなうガイドライン、データフォーマットの規格化、定義するオントロジーやスキーマとの整合性についての検討を行い、標準的な規格の策定を進めた。
 本研究事業が提供する日本人固有のゲノム変異情報は、希少難治性疾患の研究に携わる研究者のみならず、多くのヒト疾患研究者にとって極めて価値の高いものであるが、事業は昨年度開始されたばかりであり、その本格的利活用はデータベースの完成を待たなければならない。しかしながら、多種の稀少難治性疾患の関連遺伝子を集積した本データベースが難病研究の中核として機能することは疑いなく、疾患遺伝子情報を手がかりとして当該疾患領域の医療・研究が加速され難病研究領域の全体的なレベルアップに繋がるとともに、希少難治性疾患の患者の遺伝子診断における標準化が進むなど、臨床に直結する基盤情報が提供される。
結論
 事業計画策定と制度設計については運営委員会で策定された計画に沿って計画通り順調に進んでいる。データベース構築に関しても、プロトタイプ作成と公開用インターフェイスの開発を計画通り遂行した。データエントリーについては、日本人集団のゲノム変異情報の集積は当初の目標通り進行しており、研究終了時の最終目標の達成がほぼ確実となった。更に、当初の計画には含まれていないが極めて付加価値の高いeQTL情報を加えることができ、本データベースがさらに利用価値の高いものとなることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231112Z