希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究

文献情報

文献番号
201231107A
報告書区分
総括
研究課題名
希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 山海 嘉之(筑波大学大学院 システム情報工学研究科)
  • 林 知広(CYBERDYNE株式会社 研究開発本部)
  • 新宮正弘(CYBERDYNE株式会社 研究開発本部)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 青木正志(東北大学 医学系研究科)
  • 中野今治(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
  • 中川正法(京都府立医科大学 神経内科)
  • 中川義信(国立病院機構香川小児病院 脳神経外科)
  • 駒井清暢(国立病院機構医王病院 神経内科)
  • 齊藤利雄(国立病院機構刀根山病院 神経内科)
  • 石川悠加(国立病院機構八雲病院 臨床研究部)
  • 小林庸子(国立精神・神経医療研究センター病院 リハビリテーション科)
  • 前島伸一郎(埼玉医科大学 医学部)
  • 伊藤道哉(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 松田純(静岡大学 人文社会科学部)
  • 美馬達哉(京都大学 医学研究科附属脳機能総合研究センター)
  • 中山優季(公益財団法人東京都医学総合研究所 難病ケア看護研究室)
  • 澤口信(滋賀医科大学 医学部)
  • 井手口直子(帝京平成大学 薬学部)
  • 川口有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
258,510,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少性難病である脊髄性筋萎縮症,球脊髄性筋萎縮症,シャルコー・マリー・トゥース病,筋萎縮性側索硬化症,遠位型ミオパチーなど筋萎縮を来す疾患群は進行性・難治性であり根本的治療法は成功しておらず,多専門職種ケアによるQOLの向上が試みられているのみである.いかなる治療によっても,上記疾患等による骨格筋の筋力低下・萎縮の悪化を抑制することができず,至急に解決すべき課題である.HAL(Hybrid assistive limb)は研究分担者の山海により開発された生体電位駆動型の装着型ロボットで,人の皮膚表面の筋電位などの生体電位に加速度,関節角度,床反力センサなどの情報を組み合わせ,リアルタイムに骨格筋の随意運動を増強するために開発された.この技術を基に,上記疾患において作動可能なHAL-神経・筋難病型下肢モデル(HAL-HN01)が開発された.これは他のHALとは異なり,病的筋の微小な電位をも検出し罹患筋をアシストできる.本研究の目的は上記などの治療法が無い希少性神経・筋難病患者がこのHAL-HN01を定期的,間欠的に装着し,適切なアシストにより筋収縮を助けられることで,疾患の経過でおきる筋萎縮と筋力低下の進行を抑制する事ができるという背景仮説の下で,短期使用の歩行不安定症の改善効果により新医療機器としての承認を目指す医師主導治験方法を研究し実施することである.疾患専門家と臨床評価研究者により対照群と群間評価する短期試験の実施方法を研究し,安全性と被験者保護のために,倫理・哲学者,患者団体を加え研究し,薬事法に基づく治験を実施し薬事承認に必要な結果を得る.
研究方法
多施設共同で症例リクルートが必要で,そのための治験必要文書の作成,各種標準業務手順書の作成,視覚的歩行中央評価方法に関する研究と主観的歩行評価(PRO)の開発研究を行った. 薬事法・GCP省令およびICH-GCPに関する研究と安全性情報の共有のめにEU(ドイツなど)での医療機器治験の情報収集分析を,①公開されている文書による検討,②PMDAなど専門家からの助言,③研究分担者の現地でのフィールドワーク,④専門医師やCRO(臨床開発業務委託機関)の見解などを基に行った.実際の治験実施体制作りを行うための研究も同様の方法で行った.
結果と考察
本研究の今年度の基本的研究成果として「希少性神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器,生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験-短期効果としての歩行改善効果に対する無作為化比較対照クロスオーバー試験(NCY3001試験)」の治験届を提出し(H25年1月4日受理),照会事項に対して回答を行い,治験を開始(H25年3月6日)した.多施設共同の治験必要文書,各種標準業務手順書を完成させ,実際の治験実施体制を構築した.治験対象患者の選択基準として「歩行不安定症」の概念を確立し,無作為化クロスオーバー法による治験方法を確立した.既存の2分間歩行テスト(歩行距離)と10m歩行テスト(歩行速度)に加えて,視覚的歩行中央評価方法に関する研究とFDAの要求する主観的歩行評価(PRO)の開発を行った.主観的歩行評価におけるレスポンスシフト現象に関する研究を行った.希少性難病疾患では客観的な歩行改善効果と共に,患者自身の主観的な歩行改善効果が得られるかどうかが被験機器としての評価として重要であるからである.HAL-HN01を使った歩行訓練と安全性についてはホイストを使用することで解決した.安全性の定義(有害事象と不具合)を行い,有害事象の発現状況,HAL-HN01の不具合等の発現状況,HAL-HN01の動作モニタリングデータ(エラー履歴)などの収集分析法について研究した. 視覚的歩行中央評価方法に関して時系列で動画像を一度に評価することにより,評価者の評価基準が揺らぐことを排除した.ビデオ画像の真正性証明として,アメリカ政府標準のハッシュ関数に採用されているSHA-1アルゴリズムによってビデオファイルのハッシュ値を計測し,データ改竄や劣化の検出に用いる研究を行った.治験で初めてハッシュ関数を,ビデオデータの真正性評価を行うために採用した.この方法を用いれば,客観的歩行評価と主観的評価の相関や一致などが科学的に解析できる.
結論
今年度の研究で治験を開始することができた.今後治験完了を目指し進めHAL-HN01の有用性データにより希少性疾患用医療機器として薬事承認を得る.この成果により,生体電位駆動型の装着型医療ロボットであるHAL-HN01の治験方法を確立すると同時に,希少性神経・筋難病疾患における歩行不安定症に対する治療法を確立する.

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231107Z