ミトコンドリア病に合併する高乳酸血症に対するピルビン酸ナトリウム治療法の開発研究―試薬からの希少疾病治療薬開発の試み―

文献情報

文献番号
201231106A
報告書区分
総括
研究課題名
ミトコンドリア病に合併する高乳酸血症に対するピルビン酸ナトリウム治療法の開発研究―試薬からの希少疾病治療薬開発の試み―
課題番号
H24-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
古賀 靖敏(久留米大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 村山 圭(千葉県立こども病院 代謝科)
  • 森 雅人(自治医科大学 医学部 小児科)
  • 石崎 義人(九州大学 医学部 小児科)
  • 内藤 悦雄(徳島赤十字ひのみね総合療育センター 小児科)
  • 齋藤 伸治(名古屋市立大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野 小児神経学)
  • 戸川 雅美(鳥取大学医学部附属病院 小児科)
  • 大竹 明(埼玉医科大学 小児科)
  • 藤井 克則(千葉大学大学院 医学研究院 小児科学)
  • 藤井 達哉(滋賀県立小児保健医療センター 小児科)
  • 但馬 剛(広島大学(大学院医歯薬学総合研究科) 小児科)
  • 田中 雅嗣(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 生化学)
  • 佐伯 武頼(熊本大学生命資源研究・支援センター 病態生化学)
  • 山口 清次(島根大学 医学部 小児科)
  • 新田 淳美(富山大学 薬学部 薬物治療学)
  • 角間 辰之(久留米大学バイオ統計センター 生物統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
172,632,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高乳酸血症は、種々の難治性神経・代謝疾患で観察される重要な病態であるが、この治療薬は今だ世界に存在せず、その病態を踏まえた新しい治療薬の開発が熱望されている。ピルビン酸ナトリウム(PA)治療(Mitochondrion 2007;7:399–403)は、ミトコンドリア脳筋症の細胞モデルで細胞死を防ぐ効果があり、臨床研究でもジクロロ酢酸に勝る乳酸の軽減効果と臨床的有効性がある事を報告した。現在は、工業用試薬であるが、医薬品として上市するのに必要な非臨床試験、GMP原薬製造、および第1、第2/3 相試験を行い、世界初の高乳酸血症治療薬を開発する事が本研究の目的である。
研究方法
(1)当該研究計画に関して現在までに行った研究等 高乳酸血症に対するPA 治療(Mitochondrion 2007;7:399–403)は、ミトコンドリア病の細胞モデルでも細胞死を防ぐ効果がある事が最近のメタボローム解析で証明した(Mitochondrion 2012;12:644-665)。また、臨床研究では、DCA に勝る高乳酸の軽減効果と臨床的有効性を示した( BBA 2010;1800(3): 313-5、Brain & Dev 2012;34(2)87-91,BBA 2012;1820:632-636)。
(2)治験薬概要書(案)
 非臨床試験データとして有用な情報を収集するために、PA 研究に関する論文をPubMed で網羅的に検索し、科学的論理的な論文の洗い出しを行い、PA の概念実証としての根拠、および現在までのあらゆる臨床研究データを集大成し、治験薬概要書(案)として作成した。
(3)非臨床試験の実施
 「first in man」の医薬品を、試薬から開発するために、非臨床試験のデータセットの実施が必要である。このために、戦略薬事相談を行って、必須項目のデータセットについて、(株)新日本科学に委託して、非臨床試験を実施した。
(4)第1、2/3相試験計画(案)
 将来の医師主導治験での第2/3 相試験を実施する事を念頭に、第1相試験を計画した。これは、次回の戦略薬事相談に伴い詳細な指導を経て、プロトコールを確定する事になる。治験へ向けたエンドポイントの探索も同時に討議し、現在までのミトコンドリア脳筋症研究およびPA の臨床研究から治験に最も鋭敏な感度および特異度の高いバイオマーカーをエンドポイントとしても検討した。
(5)治験薬GMP 製造した製剤の確保・製造工程記録一式
 塩野フィネス社とのGMP製造委託契約を行い、PA の製剤を試験薬GMPで製造した。現在、第1 相および第2 相試験のための必須項目(原体の予備安定性試験、加速、過酷試験)に関し研究を進めている。
(6)治験実施組織の構築
 日本におけるミトコンドリア臨床研究拠点を中心に13 か所の治験協力施設(候補)を抽出し、平成24 年からの治験研究分担研究者として日本における治験システムを構築した。
結果と考察
1)医薬品医療機器総合機構(PMDA)への戦略相談
 平成24年の研究費採択を受けて、今後の医薬品開発の進め方につき、PMDAへの戦略薬事相談を行った。平成23年の班研究採択通知(平成23 年8 月1 日付)を受けて、平成23年10 月6日にPMDA の薬事戦略事前相談を行った。その後、重点研究に発展したため、再度、平成25年1月17日に薬事戦略事前相談を行った。その相談内容調整により、3月15日に対面助言相談を行った。
2)非臨床試験データパッケージ
「first in man」の医薬品を、試薬から開発するために、非臨床試験のデータセットの実施が必要である。このために、戦略薬事相談を行って、必須項目のデータセットについて、(株)新日本科学に委託して非臨床試験を実施した。
3)GMP原薬製造
 PA の製剤は、試験薬GMP により製造され、CMOへの製造技術移転が完了するまでに原薬および最終製剤の暫定規格、規格設定のための試験方法の確立並びに安定性試験を行う事とする。現在、第1 相および第2 /3相試験のためのGMP原薬製造に関する必須項目(原体の予備安定性試験、加速、過酷試験)について、塩野フィネス(株)に委託し、一工程ながら、武蔵野化学試薬特級品を原料として、充分な純度を予備実験により得られた。
4)治験実施組織の構築
日本を代表するミトコンドリア病臨床研究拠点をまとめ、平成24 年の厚生労働科学研究班として研究チームを構築した。
5)治験薬概要書
今までの知見をまとめた治験薬概要書を作成した。
結論
今回の研究成果から、PA の試薬からの医薬品開発を目指して、平成25 年度の難治疾患研究事業の重点領域研究ステップ2採択を目指し、順調に実働していると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201231106Z