文献情報
文献番号
201231078A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性角化不全症の効果的診断方法の確立と治療ガイドラインの作成に関する研究
課題番号
H23-難治-一般-099
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小島 勢二(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 義行(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
- 伊藤 悦朗(弘前大学大学院医学研究科 小児科学)
- 小原 明(東邦大学医療センター大森病院 輸血部)
- 伊藤 雅文(名古屋第一赤十字病院 病理部)
- 山口 博樹(日本医科大学 血液内科)
- 長谷川 好規(名古屋大学大学院医学系研究科 呼吸器内科学)
- 秋山 真志(名古屋大学大学院医学系研究科 皮膚病態学)
- 中尾 眞二(金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学)
- 谷ヶ崎 ヒロシ(日本大学医学部 小児科学)
- 大賀 正一(九州大学大学院医学研究院 周産期・小児医療学)
- 矢部 普正(東海大学医学部基盤診療学系 再生医療科学)
- 金兼 弘和(富山大学附属病院 小児血液・免疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
先天性角化不全症(DKC)は、皮膚の網状色素沈着、爪の委縮、口腔内の粘膜白斑症をともなう骨髄不全症で、10歳前後までに80%以上の患者にこれらの 身体所見を付随した再生不良性貧血(再不貧)を発症する。これまでに、DKCに特徴的な身体所見がみられず、特発性再不貧と考えられていた症例から、DKC の原因遺伝子変異が検出されている。DKCの確定診断には責任遺伝子の同定が必要であるが、不全型DKCを確定診断するのに、すべての再不貧患者に遺伝子検索をおこなうのは現実的でない。今回、小児再不貧患者を対象に末梢血リンパ球のテロメア長の測定がDKCのスクリーニングに有用であるかを検討した。また、DKCの原因遺伝子として、現在7種類の遺伝子が知られているが、実際、DKCが疑われた症例で,遺伝子変異が検出されるのは40%にすぎない。次世代シークエンサーを用いて、新規原因遺伝子の同定を試みる。
研究方法
2011年3月1日から2013年1月31日までに、中央診断で骨髄不全症と診断された192例の末梢血リンパ球のテロメア長をFlow-FISH法で測定した。また。これまでに、DKCと臨床的に診断された21例について7腫のDKC関連遺伝子(DKC1,TERC,TERT,NHP2,NOP10,TINF2,TCAB1)の変異の有無を検討したところ11例については、既知の遺伝子変異が同定された。既知の原因遺伝子に変異を認めず、テロメア長の短縮が確認された16例について、全エクソンシークエンスをおこなった。
結果と考察
テロメア長を測定した192例のうち、18例(9.4%)において-3SDを超える著明な短縮を認めた。これらの症例は、いずれもDKCに特徴的な臨床徴候はみられなかった。16例において、7種類の遺伝子検査を行ったが、既知のテロメア関連遺伝子の異常はみられなかった。抗胸腺リンパ球グロブリン(ATG)とシクロスポリンによる免疫抑制療法をうけ、臨床経過が把握されている64例について、テロメア長と免疫抑制療法に対する治療効果との関連について多変量解析を用いて検討したところ、テロメア長が-1SD未満の症例は、-1SD以上にテロメア長が短縮している症例と比較して、統計学的にも有意に治療への反応性が優れていた。(hazard ratio 22.0,95%confidential interval.4.19-115;P<0.001)次世代シークエンサーによる全エクソン解析をおこなった16例のうち、5例では、サンガー法によっては,原因遺伝子が同定されなかったが、DKC1(2例)、TINF2(2例)、TERT(1例)の変異が検出された。RECQL4,ATM、BLMなどの早老症や遺伝子修復に関連する既知の常染色体劣性遺伝性疾患に関連する遺伝子のヘテロ変異が高率に認められており、DKCの病態への関与が考えられた。
結論
従来のサンガー法では検出できなかった遺伝子変異が、次世代シークエンス法では検出されており、DKCのように原因遺伝子の種類が多い疾患においては、次世代シークエンス法による診断が今後は臨床現場で用いられるようになるであろう。
公開日・更新日
公開日
2013-06-10
更新日
-