腎性低尿酸血症の全国的実態把握

文献情報

文献番号
201231056A
報告書区分
総括
研究課題名
腎性低尿酸血症の全国的実態把握
課題番号
H23-難治-一般-076
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
四ノ宮 成祥(防衛医科大学校 分子生体制御学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 洋孝(防衛医科大学校 分子生体制御学講座 )
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 内科学)
  • 高田 龍平(東京大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 市田 公美(東京薬科大学 病態生理学講座)
  • 檀上 稲穂(理化学研究所 バイオリソースセンター)
  • 中村 好宏(防衛医科大学校 数学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎性低尿酸血症について全国からの症例収集と複数の大規模健康診断データの活用により、本疾患に関する情報を集積し、診断基準を確立することを目的とする。
研究方法
運動後急性腎不全などの合併症を持つ腎性低尿酸血症の収集については、国内外の症例の臨床データとゲノムサンプルの収集に努めた。さらに、日本痛風・核酸代謝学会会員のうち主に医療機関に勤務する全国の医師を対象に、アンケート調査回答票を送付した。これらのサンプルを用いた解析から、全国的な本疾患の情報を集積するとともに、診断基準の確立に向けた調査研究を行った。腎性低尿酸血症の遺伝子変異解析をさらに進めて、腎性低尿酸血症1型あるいは2型以外の症例、すなわち分類不能型(3型)の希少な症例を相当数収集する体制を整備するとともに、アレイCGH解析や次世代シークエンサー等を活用した解析を進めた。
結果と考察
アンケート調査結果から、腎性低尿酸血症は179例のうち運動後急性腎不全と尿路結石の合併症はともに6.1%(11例)であった。腎性低尿酸血症の診断基準については、尿酸値により重度、軽度に分類することを基本として検討している。さらに、合併症の既往歴の有無や遺伝子解析の結果を参考に組み入れる基準を検討している。次世代シークエンサーを用いた解析でも、原因遺伝子同定のための研究基盤を構築し、現在、複数の候補遺伝子を同定することに成功している。
結論
本研究により、重篤な合併症の存在が問題となる腎性低尿酸血症の全国的実態把握のための研究基盤ができた。また、現行の薬物負荷試験に代わるサブタイプ鑑別法の開発が期待される。全国的実態調査を伴う本疾患の分子機構の解明や診断方法の確立は、医療従事者および患者への適切な啓発につながり、重篤な合併症に対する効果的な予防対策にもつながることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201231056B
報告書区分
総合
研究課題名
腎性低尿酸血症の全国的実態把握
課題番号
H23-難治-一般-076
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
四ノ宮 成祥(防衛医科大学校 分子生体制御学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 洋孝(防衛医科大学校 分子生体制御学講座 )
  • 池脇 克則(防衛医科大学校 内科学)
  • 高田 龍平(東京大学医学部附属病院 薬剤部)
  • 市田 公美(東京薬科大学 病態生理学講座)
  • 檀上 稲穂(理化学研究所 バイオリソースセンター)
  • 中村 好宏(防衛医科大学校 数学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎性低尿酸血症について全国からの症例収集と複数の大規模健康診断データの活用により、本疾患に関する情報を集積し、診断基準を確立することを目的とする。その上で、低尿酸血症の実態を把握し、病名の認知度を上げ、合併症の効果的な対応策や予防法等を開発することを目指した。
研究方法
低尿酸血症症例の収集と頻度解析のために、静岡県の健診サンプル5,019例を含めて多数例の健診データの解析とゲノム解析を実施した。また、運動後急性腎不全などの合併症を持つ腎性低尿酸血症の収集については、国内外の症例の臨床データとゲノムサンプルの収集に努めた。さらに、日本痛風・核酸代謝学会会員のうち主に医療機関に勤務する全国の医師を対象に、アンケート調査回答票を送付した。これらのサンプルを用いた解析から、全国的な本疾患の情報を集積するとともに、診断基準の確立に向けた調査研究を行った。腎性低尿酸血症の遺伝子変異解析をさらに進めて、腎性低尿酸血症1型あるいは2型以外の症例、すなわち分類不能型(3型)の希少な症例を相当数収集する体制を整備するとともに、アレイCGH解析や次世代シークエンサー等を活用した解析を進めた。
結果と考察
アンケート調査結果から、腎性低尿酸血症は179例のうち運動後急性腎不全と尿路結石の合併症はともに6.1%(11例)であった。健診サンプル5,019例についての低尿酸血症の頻度解析の結果、尿酸値 1.0 mg/dl以下、2.0 mg/dl以下、3.0 mg/dl以下の症例はそれぞれ0.12%、0.18%、2.51%に認められた。腎性低尿酸血症の診断基準については、尿酸値により重度、軽度に分類することを基本として検討している。さらに、合併症の既往歴の有無や遺伝子解析の結果を参考に組み入れる基準を検討している。次世代シークエンサーを用いた解析でも、原因遺伝子同定のための研究基盤を構築し、現在、複数の候補遺伝子を同定することに成功している。
結論
本研究により、重篤な合併症の存在が問題となる腎性低尿酸血症の全国的実態把握のための研究基盤ができた。また、現行の薬物負荷試験に代わるサブタイプ鑑別法の開発が期待される。全国的実態調査を伴う本疾患の分子機構の解明や診断方法の確立は、医療従事者および患者への適切な啓発につながり、重篤な合併症に対する効果的な予防対策にもつながることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201231056C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでの我々の研究により2つの尿酸輸送体遺伝子が腎性低尿酸血症の病因遺伝子として同定され、それぞれ腎性低尿酸血症1型及び2型と分類されるようになった。また、いずれの型にも属さない3型の存在が明らかとなった。そのため、腎性低尿酸血症の遺伝子変異解析をさらに進めて、腎性低尿酸血症3型が疑われる希少な症例を相当数収集する体制を整備するとともに、次世代シークエンサー等を活用した解析を進めた。これにより、それらの遺伝子同定のための研究基盤を構築できた。
臨床的観点からの成果
腎性低尿酸血症は、尿路結石のほか重篤な運動後急性腎不全を引き起こすにも関わらず、現状では病名の認知度が低い。本研究によりその分子病態をより明らかにするとともに、普及・啓発活動を促進することにより、本疾患に関する医学的知識の普及が期待できる。病型分類の方法についても、これまでは患者に負担となる薬剤負荷試験のみが提唱されてきたが、本研究による遺伝子解析の結果を反映させることで、患者負担の少ない診断法の確立が期待できる。
ガイドライン等の開発
平成24年度までの本研究期間終了後、本研究の一部は平成26年度~28年度厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」(代表:神戸大学 飯島一誠教授)に受け継がれ、日本痛風・核酸代謝学会と共同編集という形で、平成26年度から平成28年度の3か年計画としてMinds準拠の『腎性低尿酸血症診療ガイドライン』を策定した。
その他行政的観点からの成果
本研究で得られた知見等を基にしたガイドラインの策定により疾患概念が明確化されると、本邦に特に多いとされる腎性低尿酸血症の患者数などの把握が容易になることが予想される。このため、行政として対策を講じる必要性や重要性を検討するために必要な資料となる成果が期待できる。
その他のインパクト
シンポジウムや講演会発表を通して、腎性低尿酸血症について医療従事者を含めて普及・啓発活動に努めた。関連の学会発表は医学系総合雑誌に紹介された。ガイドラインの策定については、医学専門紙”Japan Medicine Monthly”(2015年4月号)や“Medical Tribune”(2016年3月17日号)、“m3.com”(2017年2月20日掲載)、“Medical Tribune”(同・5月4日号) にて大きく報じられた。また、“日経メディカル”(同・6月配信予定)にも掲載予定である。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
49件
その他論文(和文)
53件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
103件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
『腎性低尿酸血症診療ガイドライン』を策定した。
その他成果(普及・啓発活動)
5件
シンポジウムや講演会での発表を通して、普及・啓発活動に努めた。関連の学会発表については、医学関連の新聞・情報サイトに紹介された。

特許

特許の名称
尿酸トランスポーター,並びに,尿酸輸送関連疾患素因及び炎症関連疾患素因の評価方法及び評価キット,検査体及び薬.
詳細情報
分類:
特許番号: P2011-519596
発明者名: 高田龍平、鈴木洋史、伊藤晃成、池淵祐樹、松尾洋孝、四ノ宮成祥、市田公美、中村好宏
権利者名: 国立大学法人 東京大学、他
出願年月日: 20100622
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ichida K, Matsuo H, Takada T et al.
Decreased extra-renal urate excretion is a common cause of hyperuricemia.
Nat Commun. , 3 , 764-  (2012)
原著論文2
Kawamura Y, Matsuo H, Chiba T et al.
Pathogenic GLUT9 Mutations Causing Renal Hypouricemia Type 2 (RHUC2).
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. , 30 (12) , 1105-1111  (2011)
原著論文3
Matsuo H, Takada T, Ichida KT et al.
Identification of ABCG2 dysfunction as a major factor contributing to gout.
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. , 30 (12) , 1098-1104  (2011)
原著論文4
Nakayama A, Matsuo H, Takada T et al.
ABCG2 is a high-capacity urate transporter and its genetic impairment increases serum uric acid levels in humans.
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids. , 30 (12) , 1091-1097  (2011)

公開日・更新日

公開日
2019-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201231056Z