適応拡大に向けた臍帯血移植の先進化による成績向上と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201229042A
報告書区分
総括
研究課題名
適応拡大に向けた臍帯血移植の先進化による成績向上と普及に関する研究
課題番号
H24-難治等(免)-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 聡(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾友宏(東京医科歯科大学・医歯(薬)学総合研究科)
  • 服部浩一(東京大学医科学研究所)
  • 安藤 潔(東海大学医学部)
  • 宮田敏男(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 大津 真(東京大学医科学研究所)
  • 谷口修一(国家公務員共済組合 虎の門病院)
  • 山口拓洋(東北大学大学院医学系研究科)
  • 岩間厚志(千葉大学 大学院医学研学院)
  • 宮村耕一(名古屋第一赤十字病院造血細胞移植センター)
  • 高梨美乃子(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センタ-)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,838,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、臍帯血移植の先進化による安全性と成績の向上であり、最も深刻な移植後合併症である生着不全、ウイルス感染症、GVHDに対する新規治療開発を進め、基盤研究を継続しつつ臨床研究に発展させることを目指している。さらに、臨床研究遂行・支援、および臍帯血バンク運営の将来構想に関する議論進めると共に情報収集を進めることを目標とした。
研究方法
 生着不全対策としては、新規線溶系制御剤による移植後造血再構築促進効果、移植前処置に用いる放射線照射によって産生され、かつアポトーシス誘導因子であるTNF-αシグナル遮断による造血幹細胞の保護、および新規低分子化合物による造血幹細胞増幅、の各研究課題に関して、それぞれ動物モデルを用いた前臨床試験を中心に研究を進めた。
 ウイルス感染症対策については、臨床応用に向けて無血清培養系を用いたCMV、EBV、ADVに対する抗原特異的CTLの調製法についての検討を進めた。
 また、GVHDに対する新規治療開発としては臨床検体を用いてGVHD病態における凝固・線溶系の機能解析を行い、併せて新規プラスミン阻害剤YO-2の有効性を動物モデルで探った。
 臍帯血バンク整備の支援については、現況の問題点の整理と解決に向けての情報収集をおこなった。さらには、成人難治性血液悪性腫瘍に対する非血縁者間臍帯血移植の有効性の検討や骨髄内移植法など現在行われている多施設共同前向き第II相試験への支援を継続するとともに、予め臨床研究を開始する際の障害を可能な限り少なくするために、新規の開発研究を臨床応用する際に生じうる規制対応上の問題点を整理し、現行の臍帯血移植の問題となっている生着前免疫反応と血球貪食症候群の発症関連因子の同定を試みた。さらに、移植成績の統計解析における問題点を探り、競合イベントに関する詳細な検討をおこなった。

結果と考察
 生着不全対策について、PAI-1阻害剤(TM5275)のマウス生体への投与は造血回復期間の短縮および骨髄再構築の促進により長期造血構築能の維持を達成する事、放射線照射を用いた前処置後に誘導されるTNF-αが造血抑制をもたらすこと、新規低分子化合物(MISK303)がin vitroの培養系と免疫不全マウスへの移植の系において造血幹細胞増幅に関する有効性を確認した。ウイルス感染症に対する細胞療法の開発については、EBウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルスの3種類のウイルス特異的CTLの作成が短期間(10日間)で可能となった。GVHDに対する新規治療法開発では、急性GVHD患者で血液凝固・線溶系の亢進が認められ、これに伴ってMMPの活性化と各種炎症性サイトカインの血中濃度の上昇が誘導されること、さらにマウスGVHDモデルにおいて、プラスミンの活性阻害剤(YO-2)投与によりGVHDによる組織障害、症状・重症度が、有意に改善することを示した。
 一方、将来にわたって安定的な臍帯血の供給を実現するために、現在の臍帯血バンクの課題の整理を行った臨床研究としては、多施設共同前向き第II相試験として成人難治性血液悪性腫瘍に対する非血縁者間臍帯血移植の有効性の検討を進めるとともに、骨髄内移植法を用いた細胞投与ルートの改変についての臨床研究の支援を行った。さらに、生着不全および遅延に関与する移植後の血球貪食症候群(HPS)および、重症型の生着前免疫反応(PIR)およびGVH方向HLA抗原不一致がHPS発症のリスク因子として同定され、重症の同種免疫応答がHPS発症の主病態である事が示唆された。統計解析所問題となる競合イベントに対する回帰モデルの比較検討を行った。
 骨髄移植に比べて臍帯血移植の移植関連死亡率は依然として高く、臍帯血移植に高頻度な合併症に対する有効な治療法の新規開発および増加する高齢患者への適応拡大は緊急の課題である。上記の各分担研究者による研究を統合的に進めることによって、臍帯血移植に特徴的な副作用(生着不全、感染症、組織障害)に対する有効な対策の確立を目指すことは、これまで移植成績が不良であったにもかかわらず全体からみると多数を占める高齢患者に対する安全性の向上につながり、臍帯血移植のニーズが求められている患者層への適応拡大が期待できる。

結論
 本研究の目的である臍帯血移植の先進化による安全性と成績の向上を目指して、臍帯血移植の最も深刻な合併症である生着不全、ウイルス感染症、GVHDについて、臨床研究を目指した基盤研究を継続した。同時に臨床研究遂行・支援を行うと共に、臍帯血バンク運営の将来構想に関する議論に向けて更なる情報収集を進めた。これらの研究を通じて、造血幹細胞移植の推進法の理念に基づき、臍帯血バンク事業がさらに発展し、より多くの国民の健康回復に寄与することを目指した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,789,000円
(2)補助金確定額
12,789,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,674,307円
人件費・謝金 2,423,642円
旅費 200,560円
その他 539,491円
間接経費 2,951,000円
合計 12,789,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-05-27
更新日
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