アトピー性皮膚炎の難治性皮膚病変の病態解析と病態に基づいたピンポイントな新規治療の開発

文献情報

文献番号
201229041A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の難治性皮膚病変の病態解析と病態に基づいたピンポイントな新規治療の開発
課題番号
H24-難治等(免)-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学・大学院 医歯学総合研究科・皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校皮膚科)
  • 片山 一朗(大阪大学皮膚科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学皮膚科)
  • 烏山 一(東京医科歯科大学免疫アレルギー分野)
  • 安東 嗣修(富山大学大学院応用薬理学)
  • 宮地 良樹(京都大学医学研究科皮膚科)
  • 室田 浩之(大阪大学大学院皮膚科)
  • 金田 安史(大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は重症型アトピー性皮膚炎(AD)における難治性皮膚病変(痒疹、紅皮症、顔面紅斑)などの発症頻度及びアトピー性皮膚病変の難治性皮膚病変の診療ガイドラインを作成して適切な標準的治療法の確立を目指している。今年度はADを内因性と外因性に分類して各病型における痒疹結節、難治顔面紅斑、紅皮症の発症頻度を明らかにするためのアンケート用紙を作成し検討する。さらに、各種のADの皮膚病変のモデルマウスを用いてADの発症機序を解析した。
研究方法
1)外因性・内因性アトピー性皮膚炎(AD)における臨床症状、かゆみ関連因子の比較検討
浜松医大皮膚科通院中のAD患者および産業医大皮膚科にて戸倉が診察したAD患者において以下の項目について調査・検討した。(1)臨床症状重症度(2)特徴的臨床症状(3)合併症(4)不安度(5)一般血液検査(6)フィラグリン遺伝子変異、 血中CCK8(7)金属パッチテスト:Ni, Co, Crなど
2)痒疹モデルの作成
TNP特異的IgE産生マウス(TNP-IgEマウス)の耳介皮内、あるいは背部皮内にTNP-OVAを反復して3回投与し、IgE-CAIを持続。
3)IgE-CAIにおける好塩基球の機能解析
IgE-CAI皮膚病変部に浸潤・集積している細胞の種類をFlow cytometryで解析した。それぞれの細胞に発現しているケモカイン受容体を解析。
4)ADでみられる痒み過敏選択的な治療戦略の確立
近年、神経栄養因子アーテミンがが熱痛覚過敏に与える影響をマウスによって確認する。
5)ADマウスモデルの自発的痒み関連動作への皮膚好塩基球の関与
ADマウスモデルである雄性NC系マウスを用いて掻き動作回数を数えた。皮膚内の好塩基球数は,パラフィン切片と好塩基球特異的抗体(TUG8)を用いた免疫染色により解析。
6)フィラグリン遺伝子に変異を有するflaky tailマウスの解析
近年用いられているフィラグリン遺伝子に変異を有するflaky tailマウス(Moniaga CS et al. Am J Pathol.2010)をC57BL/6マウスでバッククロスし、本マウスの詳細な解析。
7)生体皮膚への機能性高分子導入法の開発に関する研究
アレルギー性-鼻炎マウスや健常マウスの鼻腔内にHVJ-Eのみを滴下して脾臓細胞からのサイトカイン産生をELISA法で評価した。
結果と考察
今回の調査で内因性ADは女性に多く、その特徴的皮疹として痒疹があることが示唆された。内因性ADではCoパッチテストの陽性率が有意に高かった。またフィラグリン遺伝子変異は外因性であっても20%を越えるものではなかった。今回作成した痒疹モデルマウスの皮膚病変は、組織学的にも局所サイトカインプロファイルもヒト痒疹と類似していた。ヒト痒疹では好塩基球の病変部への浸潤が明らかであり、今回のマウスモデルも好塩基球依存性である。マウスモデルにおいて好塩基球を除去すると反応が減弱することから、ヒト痒疹において好塩基球は治療のターゲットとなりうる可能性があると考えられた。好塩基球由来のIL-4の作用によって炎症性単球がM2マクロファージに分化するという新事実が明らかとなった。M2マクロファージが、過剰なアレルギー反応を抑制する働きがあることが判明した。また、アトピー性皮膚炎では皮膚局所におけるアーテミンの蓄積がなんらかの形で中枢神経を増感させることによって痒みが誘導されるのではないかと考えられた。また、AD誘発NCマウスでは、健常NCマウスと比べると掻くことのできる皮膚炎発症部位において、好塩基球の増加が認められた。また、好塩基球が痒みに関与していることが示唆される。フィラグリン遺伝子異常を有するflaky tailマウスをC57BL/6マウスへバッククロスすることにより各種遺伝子変異マウスの解析を行うことを可能とした。HVJ-Eは樹状細胞からIFN-β産生を促し、これにより脾臓細胞からのIFN-γを産生させていると考えられる。鼻炎マウスでは、炎症部位の鼻粘膜における樹状細胞の集積があるために、鼻炎マウスでのみHVJ-Eの鼻腔内滴下で脾臓細胞からのIFN-γ産生を促したのではないか。またHVJ-Eによる樹状細胞からのIFN-β産生はToll-like receptor非依存性でRIG-I依存性であることが分かった。
結論
難治性皮膚病変の痒疹と内因性AD、金属アレルギーの関連が明らかとなった。マウスにIgE-CAIを反復して惹起させることにより、ヒトの痒疹と類似するマウスモデルを作成した。これを痒疹モデルマウスとして解析することで、病態の解析や新たな治療法の開発などが可能になると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201229041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,500,000円
(2)補助金確定額
1,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,493,561円
人件費・謝金 1,642,765円
旅費 1,900,253円
その他 502,754円
間接経費 3,461,000円
合計 15,000,333円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
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