我が国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究

文献情報

文献番号
201229028A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究
課題番号
H23-免疫-指定-016
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮坂 信之(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 山中 寿(東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター)
  • 伊藤 宣(京都大学大学院医学研究科リウマチ性疾患制御学講座)
  • 遠藤 平仁(東邦大学医療センター大森病院リウマチ膠原病センター)
  • 金子 祐子(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
  • 鎌谷 直之(東京女子医科大学)
  • 川人 豊(京都府立医科大学大学院医学研究科免疫内科学講座)
  • 岸本 暢将(聖路加国際病院アレルギー膠原病科)
  • 小嶋 俊久(名古屋大学医学部附属病院整形外科)
  • 瀬戸 洋平(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科健康情報学・疫学)
  • 西田 圭一郎(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科機能制御学講座人体構成学分野)
  • 平田 信太郎(産業医科大学第一内科)
  • 松下 功(富山大学医学部整形外科)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学分野)
  • 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松井 利浩(国立病院機構相模原病院リウマチ科)
  • 小池 隆夫(北海道大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
27,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の関節リウマチ診療の標準化を目指して、1)エビデンスに基づいた診療ガイドラインの作成、2)リウマチ診療の地域格差、施設間格差などに関する実態調査のための疫学データベースの構築、3)医療の標準化・及び拠点病院の構築、などの研究活動を多角的に行う。
研究方法
本研究の目的は、我が国におけるRA診療の標準化であり、その目標達成のために3つの分科会形式で研究チームを構成している点が特徴的である。
1)RA診療ガイドライン作成分科会:Systemic Literature Review (SLR)の手法を駆使して、エビデンスに基づいたリウマチ診療ガイドラインを作成することを目指し、リウマチ専門医、臨床疫学者、医学統計学者、患者代表などからなるメンバーで診療ガイドラインガイドライン案を作成する。なお、本ガイドライン作成のステップとしては、1年目に関連論文のSLRと評価、2年目にガイドラインの策定、3年目にパブリックコメントとエキスパートオピニオンによる最終策定を行う。2)RA臨床疫学データベース構築分科会:RA診療の国際標準に基づいて、我が国におけるRA診療の現状と問題点を臨床疫学的手法により明らかにし、RA診療拠点病院を中心とする新診療GLに基づく標準的診療を普及させるための基礎的なデータを提供する。具体的には、a. 活動性早期RA患者におけるMTXをアンカードラッグとする計画的強化治療の有効性と安全性に関するランダム化並行群間比較試験(活動性早期RA強化治療試験)b. 中・高疾患活動性RA患者における「目標達成に向けた治療」に関する臨床疫学的研究(T2T疫学試験)、c. 関節リウマチにおける合併症に関する研究(COMORA; comorbidity of RA試験)などを3年計画で行う。3)RA診療拠点病院ネットワーク構築分科会:関節リウマチ診療拠点病院形成のための一つのツールとして関節超音波検査を選び、関節超音波検査の標準化・普及活動を通じてRA診療拠点病院ネットワークの構築を行う。
結果と考察
1)RA診療ガイドラインは、GRADE recommendationに基づいて作成している。まずクリニカルクエスチョンを作成し、これらについてシステマティックレビューを行い、ステートメントの作成を行っている。これらの作業に基づいた診療ガイドラインは、2014年春に発表される予定である。
2)①活動性早期RA強化治療試験では、各施設より計20 例 RA 患者が登録され、強化治療群10 例、通常治療群10 例に割り付けられている。患者登録用Webと電子症例報告書システムを用いて登録とフォローを行っている。②T2T疫学試験では、249 症例が登録され、うち166 例について登録時のデータが得られた。主要評価項目は、中・高疾患活動性を有するRA患者を「目標達成に向けた治療(T2T)」に基づいた治療を行って72週間観察した場合の機能的予後および画像的予後規定因子である。③COMORA試験においては、国内施設より計207例のRA患者を登録した。
3)①数字関節超音波検査の定量・半定量法の標準化案の作成を検討した。②日本リウマチ学会関節リウマチ超音波標準化委員会委員による「定量・半定量法の標準化案」の妥当性の検討を進めた。③関節超音波検査による滑膜血流の観察を行い、局所の炎症状態をよく反映することが明らかとなった。④RAの早期分類(診断)における関節超音波の有用性を検討する目的で、DMARDsナイーブ早期関節炎患者77症例を対象とし、全例に両側手指関節超音波検査と非造影MRI検査を施行した。その結果、リウマチ専門医が3ヶ月以内にDMARDs を導入した症例をゴールドスタンダードRA と判断すると、超音波ではパワードップラー(PD)グレード2 以上の関節滑膜炎(1 部位以上)、MRI では骨炎(1 部位以上)が最もRAに特異的な所見であり、p 値はPD グレード2 以上の関節滑膜炎が優れていた。個々の関節部位で評価すると、超音波PD グレードの上昇とMRI 骨炎有無には強い正の相関を認めた。最初に2010 RA分類基準を適応、これを満たさない場合に関節滑膜炎PD グレード2 以上を適応するRA 分類基準は、2010 RA分類基準よりも優れていた(新Nagasaki criteria)。⑤関節超音波講習会実施のための指針とモデルの作成ならびに講習会への患者参加の仕組みを作製した。
結論
本研究の成果は、我が国の関節リウマチ診療の標準化及び適正化、関節リウマチ患者の疫学データベースの構築と発展、診療の地域格差の縮小・改善に大きく貢献するものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229028Z