改正法後の脳死下臓器提供におけるコーディネートに関する研究

文献情報

文献番号
201229027A
報告書区分
総括
研究課題名
改正法後の脳死下臓器提供におけるコーディネートに関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小中 節子(社団法人日本臓器移植ネットワーク)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 裕行(日本医科大学大学院救急医学)
  • 岡田 眞人(聖隷三方原病院救命救急センター小児科)
  • 朝居 朋子(社団法人日本臓器移植ネットワーク中日本支部)
  • 芦刈 淳太郎(社団法人日本臓器移植ネットワーク医療本部)
  • 岩田 誠司(財団法人福岡県メディカルセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,129,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、①臓器提供病院におけるドナー家族対応関連調査と②臓器斡旋時のコーディネートを担うコーディネーター関連調査を通して救急医療における終末期ケアの現状と臓器植コーディネーター(以下Co)のドナー家族支援を含む業務状況を調査する。この国内外調査結果から、今後の①救急医療における家族支援、②グリーフケアのシステム構築アプローチ、③Coの家族支援を含むコーディネート業務について検討し、臓器移植医療におけるコーディネートの質の向上を図る。又、④並行して効率的なコーディネート体制の構築、及び有効な教育体制についても検討する。
研究方法
1)臓器提供病院関連:小児終末期医療を経験した家族に、死別から退院後の現在に至るまでの家族心情の調査。4脳死ドナー家族の臓器提供から死別後の生活に至るまでの心情調査。医師・看護師・社会福祉士等による、グリーフィングに必要な事項の検討。
2)コーディネート業務関連:改正法後の本人意思不明の場合の家族承諾91例の脳死ドナー家族担当したCo調査。改正法前の臓器提供施設に派遣したCo人数の調査実施。
3)Coの教育・体制関連調査と有効な教育方法の検討:4WGにおいてCoの専門的業務の検討。Co(ネットワークCo・都道府県Co)の精神的負担感・不安感のアンケート調査。2通りの体験型研修会開催、提供病院チームとの良連携と知識修得視点のカリキュラムと、提供病院内研修用に調整用冊子等のツール開発。
結果と考察
救急医療における小児を含む家族関連調査は、2施設(NICUとPICU)において死亡退院した36家族と、脳死下臓器提供ドナー4家族に、半構造化面接による心情把握調査を行った。家族は快く面談に応じられ、小児終末期を経験した家族医は、自ら話し始め、面接後話す機会に感謝の意を示した。家族には様々な思いが蓄積していると思われ、子供を看取らなくてはならなかった家族を支えていくチーム医療体制の構築が必要であると考える。今後、分析を行い、今後の家族支援のあり方を検討する。
 改正臓器移植法の施行後は、脳死臓器提供数の増加(1ヶ月平均0.55→4.03)、本人意思が不明で家族承諾による臓器提供比率の増加など、Co業務は質的・量的な変化が生じている。改正法施行前の家族承諾には本人の書面による意思表示が大きな根拠になっていると対応したCoは類推しており、改正法後の本人意思表示不明の場合の家族承諾時の家族支援するCoにはより慎重で熟練した対応が必要になる。Coが抱える精神的負担や不安感のアンケート(回収55/86名)を行った。Coは臓器あっせん全般に気を使う、CoのGHQの高リスク群割合が61.8%と一般成人群よりも高い、常時対応可能な勤務体制やCo業務にやりがいを感じない者などバーンアウトのリスクが高い等がわかった。 GHQの高得点と関係するのは就労未経験者と一般会社員、年齢20歳代、JOTCo、勤務体制や職場に関する項目であるとのことであった。経験に応じた教育プログラムや職場での配慮や精神的ケアなどが必要と考えられた。また、「教育プログラムの充実」と「公的資格の設定」について55%を越えるCoが業務を継続していく上で必要なものとしており、正当な評価と承認のシステムが必要と考えられる。わが国のコーディネートの質向上にはキャリアの異なるCoをあっせん業務の専門家として、効率的に育成することが重要であり、教育育成システムの構築が必要である。
習熟Coの4WGにおいて、Coの役割(責任)、業務範囲・項目とその習熟について検討した。定期的なケーススタディの開催や「Coの為のドナー管理マニュアル」を作成した。都道府県Coを対象に、実際の臓器提供病院において“仮想ドナー発生情報”を基に実践さながらの研修を2回行った。通常研修で習得し難い業務が明確になり、座学と組み合わせたカリキュラム、受講Coは実地経験を有する、等に効果がみられた。
結論
小児終末期にある患者家族のニーズに沿った家族ケアの早期確立、臓器提供における選択肢の提示を受ける家族の心情、ケアを行う医療スタッフの知識・対応方法を明確にする等、臓器提供病院における臓器提供病院におけるグリーフケア体制の構築が重要である。
改正法後の臓器提供時のコーディネーションを担うには、新規採用Coのキャリアに応じた育成プログラム、わが国の確立されたCo業務を習得したスペッシャリストの比率を高めることが重要である。また、国家資格などの地位向上でCo職を自覚と誇りが維持できるような職種にすること、また、休暇、休養の的確な制度化など待遇改善が必要と考える。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229027Z