移植細胞源を異にする非血縁造血細胞移植の組織適合性に基づく成績向上と移植選択アルゴリズムの確立に関する研究

文献情報

文献番号
201229022A
報告書区分
総括
研究課題名
移植細胞源を異にする非血縁造血細胞移植の組織適合性に基づく成績向上と移植選択アルゴリズムの確立に関する研究
課題番号
H23-免疫-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
森島 泰雄(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 誠(名古屋大学 医学部)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 屋部 登志雄(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 鬼塚 真仁(東海大学 医学部)
  • 笹月 健彦(九州大学高等研究院)
  • 高見 昭良(金沢大学病院 輸血部)
  • 森島 聡子(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 熱田 由子(名古屋大学 医学部)
  • 田中 淳司(北海道大学 医学部)
  • 南谷 泰仁(東京大学 医学部)
  • 一戸 辰夫(佐賀大学 医学部)
  • 松本 加代子(日本赤十字社近畿ブロック血液センター)
  • 高梨 美乃子(日本赤十字社関東甲信越ブロック血液センター)
  • 宮村 耕一(名古屋第1赤十字病院 血液内科)
  • 飯田 美奈子(愛知医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,644,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第1の課題は、ドナー・移植細胞源選択に有用なHLAと非HLA遺伝子の同定とその移植選択アルゴリズムへの導入である。第2は、組織適合性に基づく骨髄移植、末梢血幹細胞移植ならびに臍帯血移植成績の解析による最適移植法の選択である。第3は、非血縁者間移植の人種別比較成績に基づく国際間移植ドナーの効率的運用である。白人やアジアにおける人種間の違いを共通データベースにより解析することにより、海外バンクからの移植の位置付けと国際間移植の促進に資する。 
研究方法
非血縁移植の検体を用いて、より精緻な細胞遺伝学的な手法(HLAとその分子解析、HLAハプロタイプ解析、HLA遺伝子以外の多型解析(Whole genome SNPs 、マイクロサテライト、サイトカイン受容体、NK細胞受容体)により移植免疫反応に影響を与えるHLAとHLA以外の組織適合性抗原とその多型を同定するとともに、これらの多型の中でどれが臨床成績に影響があるかの重み付け解析(統合解析)を共通の基盤で実施する。非血縁骨髄移植をコントロールとして、さい帯血移植の臨床成績を共通のHLAデータに基づき比較検討し、どのようなHLA適合度のどの移植法を選択することが患者にとり最適かを示す選択アルゴリズムを確立することである。このために、さい帯血移植のHLAが同定されたデータベースを作成する。
結果と考察
1.非血縁者間骨髄移植におけるHLA-DPB1適合度の急性GVHD, 慢性GVHDと移植後白血病再発に対する影響:JMDP症例でHLA-A, B, C, DRB1, DQB1遺伝型が完全適合の白血病症例1681症例の解析により、HLA-DPB1不適合により急性GVHDの発症率が高くなり、HLA-DPB1の不適合で白血病の再発は低くなる移植片対白血病効果(GVL effect)が確認できた。さらに、HLA-DPB1 不適合は慢性 GVHDのリスクファクタではないこと、およびHLA-DPB1不適合は強いGVL効果を生じ、慢性GVHDを発症したことによるGVL効果は限定的(進行型に限る)であることが明らかになった。
2.Multi-SNPsによるHLAハプロタイプ適合度とそのリスク解析:HLA領域のmulti-SNPの解析により、HLA-A~DQB1のハプロタイプ(HP)520種類を同定し、そのSNPsコンセンサスシークエンス(CS)を決定することができた。このCSを用いて患者と非血縁ドナー間でHLAハプロタイプが適合しているかどうかを、HLA完全適合非血縁移植800症例を対象にして解析した結果、日本人間の移植ではハプロタイプ適合の可能性が高いことが推測され、さらにHLAアリル適合症例ではハプロタイプ不適合症例の急性GVHDのリスクは適合症例と有意差が認められず、日本人間移植ではGVHDが白人間移植に比べ低率である一因と考えられた。
3.非血縁骨髄移植の移植免疫反応に関与する非HLA遺伝子の解析:1)40歳までのALL, AML症例を対象にマイクロサテライト多型を用いた解析においてGVHD関連遺伝子を2つのcohortで確認される遺伝子を同定することができた。2)サイトカイン受容体多型、innate immunityに関与する多型、グランザイムB多型cytotoxic molecule、薬剤感受性遺伝子多型(CYP3A5, ACE)、ドナーNLRP3遺伝子型、CD53 intron rs6679497につきが得られた。 
4.さい帯血移植におけるHLA・組織適合性抗原の関与:小児患者においては、HLA一致度を上げることにより重度のGVHDの発症および移植関連死亡を減らし生存成績を向上させることが示されたが、成人患者においてはHLA一致度と生存成績との関連を認めなかった。また、HLA-C遺伝子型の判明している症例でかつ完全寛解期に移植されたALL(219例), AML(297例)を対象とした解析により、KIRリガンドとしてHLA-CのGVHD方向、HVG方向ミスの有無とOS, DFS, Relapse, NRM, aGVHD, 生着には有意な相関は認められなかった。
5.海外ドナーからの造血幹細胞移植と国内非血縁幹細胞ソースを用いた移植とのmatched-pair解析の結果、移植後5年生存率、累積再発率、累積治療関連死亡率のいずれも、海外非血縁ドナー群の成績は国内BM群・国内CB群に劣らず、海外ドナーは国内に適切なドナーを得ることができない症例に対する貴重な幹細胞源であると考えられた。
結論
非血縁者間造血細胞移植症例とさい帯血移植症例の良く整備されたデータと試料を蓄積し、精緻な遺伝学的な手法を用いHLAと非HLA遺伝子を解析することにより、組織適合性にもとづく移植法選択のアルゴリズムを構築することが可能になってきた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201229022Z