アレルギー疾患の全国全年齢有症率および治療ガイドライン普及効果等疫学調査に基づく発症要因・医療体制評価に関する研究

文献情報

文献番号
201229006A
報告書区分
総括
研究課題名
アレルギー疾患の全国全年齢有症率および治療ガイドライン普及効果等疫学調査に基づく発症要因・医療体制評価に関する研究
課題番号
H22-免疫-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター からだの専門診療部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 小田嶋 博(国立病院機構福岡病院)
  • 斎藤 博久(国立成育医療研究センター研究所)
  • 足立 雄一(富山大学医学部小児科)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療研究センター内科系専門診療部アレルギー科)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究会)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院)
  • 岡田 千春(国立病院機構本部医療部)
  • 西村 正治(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
  • 谷口 正実(国立病院機構相模原病院臨床研究センター病態総合研究部)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
  • 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センター アレルギー科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
25,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー等のアレルギー疾患の全国レベルの継続的疫学データ集積は、疾患の動向を確認し医療政策を考える上での根拠となる重要なデータであり、さらに治療状況、コントロール状況を合わせて調査することで治療ガイドラインの実施状況、その評価を行うことができる。本研究班では、こうした疫学調査を実施できる体制とデータの集積・解析を目的とした。
研究方法
成人喘息・鼻炎調査、小児喘息・鼻炎調査、アトピー性皮膚炎調査、食物アレルギー調査グループを設置した。従来の疫学調査方法からインターネット(web)調査への移行をおこなうためいくつかの調査用紙の検討と検証調査を行い、成人喘息・鼻炎調査では、2010年1月と2012年1月に全国でのECRHS調査用紙でweb調査を実施した。小児喘息・鼻炎調査では、東京と富山で検証調査を実施し、2012年5月にwebでの全国調査を実施した。アトピー性皮膚炎調査では、調査用紙の妥当性をwebで検証するため、大学新入生での健診時に調査を行った。小児アトピー性皮膚炎調査では、千葉市での3歳児健診と周辺地域でのweb調査を実施した。
結果と考察
1 成人喘息・アレルギー性鼻炎
① BMI30以上の肥満とアスピリン喘息は、女性においてのみ有意な難治化因子(ORがそれぞれ1.92 、2.56)であり、さらに非アトピー型に限るとORがそれぞれ4.5、26.2と有意かつ強い難治化因子と判明した。
② 2012年1月調査における成人喘息有症率の中間値は13.7%、有病率の中間値は8.7%で、それぞれにおいて地域差は約1.8倍あった。また2010年(2年前)調査との相関は、両者とも良好であった。また2年前との比較では、両者とも1%程度の増加を示していた。
③ インターネットを用いたアレルギー疫学調査の外的妥当性の評価では、喘息症状では中等度の相関、鼻結膜炎ではより高い相関が得られた。
④ 喘息有症率は、20歳以上で2006年男性9.3%、女性9.8%、全体9.5%、2011年は8.7%、7.1%、全体7.9%、20~44歳では、2006年8.9%、9.3%、9.1%、2011年12.5%、10.6%、11.4%で20歳以上の全年齢では減少していたが、20~44歳では増加していた。
喫煙歴のある対象者のcurrent smoker は、2006年60.9%、2011年47.7%と減少した。

2 小児喘息・アレルギー性鼻炎
① 北陸での調査
 期間有症率をすこやか健診とweb調査で比較すると、喘鳴では10.6% vs. 12.4% (p=0.12)、アレルギー性鼻結膜炎では19.6% vs. 15.0% (p=0.009)、湿疹では16.4% vs. 13.6% (p=0.02)であった。
② 全国調査
回収率は91.9% (32163/35000)となり、小児として49096名の回答がえられた。ISAACの定義による喘鳴期間有症率は8.1%、アレルギー性鼻結膜炎期間有症率19.4%、アトピー性皮膚炎期間有症率は11.2%となった。ARIAの定義によるアレルギー性鼻炎は33.8%であった。
二次調査では、C-ACTでコントロール不良14.6%、コントロール良好85.4%であった。
3 アトピー性皮膚炎
① 成人のアトピー性皮膚炎有症率調査
皮膚科医の直接診察によるADの有症率は、9.3%、診察直前に行ったUK working party の質問票は9.4%、皮膚科医の診察による有症率は8.5%、web調査では、UK working party の質問票で15.3%、皮膚科医による診察による有症率は8.8%であった。
② 3歳児のアトピー性皮膚炎有症率調査
千葉市での3歳時健診時のUK working party の質問票では19.3%であった。
Web調査では、UK working party の質問票で千葉+東京で28.0%、九州+山口25.3%であった。

4 食物アレルギー
Webによる成人の食物アレルギー有症率調査では、医師の診断に基づいて食べないようにしている食物があるものは1.9%であった。原因食物を食べて2時間以内に明らかな症状があった食物は、エビ72例が最も多く、カニ62例、キウイフルーツ56例であった。
結論
アレルギー疾患の経年的に実施できる全国調査の手法として、web調査の有用性が示されてきた。さらに検証を行い、将来的な調査手法として確立していくことが必要であり治療内容の推移、評価が行える体制を作っていく。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201229006B
報告書区分
総合
研究課題名
アレルギー疾患の全国全年齢有症率および治療ガイドライン普及効果等疫学調査に基づく発症要因・医療体制評価に関する研究
課題番号
H22-免疫-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
赤澤 晃(東京都立小児総合医療センター からだの専門診療部アレルギー科)
研究分担者(所属機関)
  • 小田嶋 博(国立病院機構福岡病院)
  • 斎藤 博久(国立成育医療研究センター研究所)
  • 足立 雄一(富山大学医学部小児科)
  • 海老澤 元宏(国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 大矢 幸広(国立成育医療研究センター内科系専門診療部アレルギー科)
  • 秀 道広(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 秋山 一男(国立病院機構相模原病院)
  • 岡田 千春(国立病院機構本部医療部)
  • 西村 正治(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
  • 谷口 正実(国立病院機構相模原病院臨床研究センター病態総合研究部)
  • 下条 直樹(千葉大学大学院医学研究院小児病態 )
  • 吉田 幸一(東京都立小児総合医療センターアレルギー科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー等のアレルギー疾患の全国レベルの継続的疫学データ集積は、疾患の動向を確認し医療政策を考える上での根拠となる重要なデータであり、さらに治療状況、コントロール状況を合わせて調査することで治療ガイドラインの実施状況、その評価を行うことができる。本研究班では、こうした疫学調査を実施できる体制とデータの集積・解析を目的とした。
研究方法
成人喘息・鼻炎調査、小児喘息・鼻炎調査、アトピー性皮膚炎調査、食物アレルギー調査グループを設置した。従来の疫学調査方法からインターネット(web)調査への移行をおこなうためいくつかの調査用紙の検討と検証調査を行った。
1.成人喘息・アレルギー性鼻炎
① 2006年赤澤班研究結果のサブ解析
② Web調査による全国調査
③ 岡山県倉敷市での調査

2.小児喘息・アレルギー性鼻炎
① Web 調査の検証
② 全国調査

3.アトピー性皮膚炎
① Webでの成人アトピー性皮膚炎有症率調査
② 大学生新入生健診での診察とweb調査の比較
③ 3歳児健診における紙調査とweb調査の比較
4.食物アレルギー
① 小児における食物アレルギー調査
② 成人における食物アレルギー調査
結果と考察
1. 成人喘息・アレルギー性鼻炎
⑤ 2006年赤澤班研究結果のサブ解析
BMI30以上の肥満とアスピリン喘息は、女性においてのみ有意な難治化因子(ORがそれぞれ1.92 、2.56)であった。
⑥ Webによる全国調査
2012年1月調査における成人喘息有症率の中間値は13.7%、有病率の中間値は8.7%で、それぞれにおいて地域差は約1.8倍あった。また2年前との比較では、両者とも1%程度の増加を示していた。
2.小児喘息・アレルギー性鼻炎
① Web調査の検証
東京でのインターネット調査では、喘鳴期間有症率は12.9%であったが、2005年に世田谷区において調査用紙を用いて実施した調査結果(14.0%)よりやや低値であった。
② 全国調査
ISAACの定義による喘鳴期間有症率は8.1%、アレルギー性鼻結膜炎期間有症率19.4%、アトピー性皮膚炎期間有症率は11.2%であった一方、ARIAの定義によるアレルギー性鼻炎は33.8%であった。喘鳴期間有症率は成長とともに低下する傾向にあった。

3. アトピー性皮膚炎
① Webでの成人アトピー性皮膚炎有症率調査
Webでは、6,627名(回収率96.9%)の回答があった。1年間のAD有症率は旭川25.2%、東京22.4%、大阪21.8%であった。
② 3歳児健診における紙調査とweb調査の比較
Web調査ではUK working partyの質問票によるAD有症率は千葉+東京で17.5%(平成23年度)、28.0%(平成24年度)、九州+山口25.7%(平成24年度)であった。これは、千葉市の健診時の紙媒体調査による有症率15.2%(平成23年度)、19.3%(平成24年度)よりも高く、平成23年度、平成24年度とも同様の傾向であった。

4.食物アレルギー
①小児での食物アレルギーのweb調査
対象児童は全員3年生であり、男児が2,761名(51.1%)、女児が2,646名(48.9%)であった。
質問「あなたのお子さんは、これまで食物を食べて具合が悪くなったことがありますか(食中毒を除きます)。」
 “はい”と回答したのは996名(18.4%)であった。
②成人での食物アレルギーのweb調査
回答者数は4678名、男性2343名、女性2,335名(男女比1.0)

質問「これらの食品を食べないようにしている理由をお選びください。」
 “自己判断”が726例(78.4%)と圧倒的に多く、次いで“医師の診断・指示”が132例(14.3%)で、この2つの理由で全体の92.7%を占めた。“医師の診断・指示”によって食べないようにしている食物があるものは88名(1.9%)であった。


結論
現在はガイドラインに沿った治療を行うことによって症状のコントロールができる時代となったので、現時点でどれだけ適切に治療がされているかを調査することは、アレルギー医療の政策の策定に大きく影響することであり啓発活動、患者教育、ガイドラインの評価を行っていく上で重要なデータとなる。
本研究班では、こうした疫学データを、適切な時期に低コストで調査していく体制を確立し、経年的に観察し発信していくことができること、あるいは可能性があることを検証することができた。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201229006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2004年から全国レベルの国際比較の出来る喘息調査、アレルギー疾患調査として継続的に行える調査体制、方法を検討した。現在はweb調査により、成人喘息、小児喘息に関しては効率的に低コストでの疫学調査が実施できることが検証された。
臨床的観点からの成果
成人喘息、小児喘息、アレルギー性鼻炎有症率の全国レベルの経年的動向を知ることができるようになった。また、症状の重症度、治療内容を調査することが出来るため、疾患に関する啓発活動、医療政策策定に有用なデータを出せるようになった。
ガイドライン等の開発
成人喘息、小児喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの有症率、重症度調査とともに、治療内容、治療状況、治療の実施状況を調査することが出来たため、ガイドラインの普及状況を知ることができた。
その他行政的観点からの成果
インターネットを利用した調査(web調査)方法を検証し、成人喘息、小児喘息では十分利用することが出来ることがわかり、他の疾患においても今後のweb調査の有用性を検証していくことができることがわかった。
その他のインパクト
疫学調査は、医学、医療政策を策定していく上での基本的なデータである。これまで国内では、アレルギーに限らず全国的経年的な疫学調査体制は不十分であった。本研究班は、2005年から継続して実施し、今後も継続できる体制を作ってきた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Satoshi Konno Masami Taniguchi Akira Akasawa et. al.
The prevalence of rhinitis and its association with smoking and obesity in a nationwide survey of Japanese adults
Allergy , 67 , 653-660  (2012)
原著論文2
Okabe Y Adachi Y Akasawa A et. al.
Association between obesity and asthma in Japanese preschool children.
Pediatr Allergy Immunol , 23 , 550-555  (2012)
原著論文3
K. Yoshida . Adachi, A. Akasawa et. al.
Cedar and cypress pollen counts are associated with the prevalence of allergic diseases in Japanese schoolchildren
Allergy , 68 , 757-763  (2013)
原著論文4
Fukutomi Y, Taniguchi M Akasawa A et. al.
Association between body mass index and asthma among Japanese adults: risk within the normal weight range.
Int Arch Allergy Immunol. , 157 (3) , 281-287  (2012)
原著論文5
Osamu Higuchi Yuichi Adachi Akira Akasawa et. al.
Relationship between rhinitis and nocturnal cough in school children
Pediatr Allergy Immunol , 23 , 562-566  (2012)
原著論文6
Fukutomi Y Taniguchi M Akiyama K et. al.
Obesity and aspirin intolerance are risk factors for difficult-to-treat asthma in Japanese non-atopic women.
Clinical & Experimental Allergy , 42 , 738-746  (2012)
原著論文7
Fukutomi Y Taniguchi M Akasawa A et. al.
Time Trend in the Prevalence of Adult Asthma in Japan: Findings from Population-Based Surveys in Fujieda City in 1985, 1999, and 2006.
Allergol Int. , 60 (4) , 443-448  (2011)
原著論文8
Okabe Y Adachi Y Akasawa A et. al.
Association of overweight with asthma symptoms in Japanese school children
Pediatr Int , 53 , 192-198  (2011)
原著論文9
Futamura M Akashi M Akasawa A et. al.
Age-related prevalence of allergic diseases in Tokyo schoolchildren.
Allergol Int , 60 , 509-515  (2011)
原著論文10
Osamu Higuchi Yuichi Adachi, Akira Akasawa et. al.
Rhinitis has an association with asthma in school children
Am J Rhinol Allergy , 27 , 22-25  (2013)
原著論文11
Yasunori Ito Yuichi Adachi Akira Akasawa et. al.
No Association between Serum Vitamin D Status and the Prevalence of Allergic Diseases in Japanese Children
Int Arch Allergy Immunol , 160 , 218-220  (2013)

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201229006Z