適切なスキンケア、薬物治療方法の確立とアトピー性皮膚炎の発症・増悪予防、自己管理に関する研究

文献情報

文献番号
201229002A
報告書区分
総括
研究課題名
適切なスキンケア、薬物治療方法の確立とアトピー性皮膚炎の発症・増悪予防、自己管理に関する研究
課題番号
H22-免疫-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博久(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 健治(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
  • 大矢 幸弘(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 新関 寛徳(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 坂本 なほ子(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
  • 左合 治彦(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学研究科)
  • 木戸 博(徳島大学疾患酵素学研究センター)
  • 竹森 利忠(理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター)
  • 菅井 基行(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
25,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アトピー性皮膚炎(AD)は掻痒や慢性・反復性経過を特徴とし、掻痒による生活の質の低下が著しいが、有効な発症予防法はない。AD患者の皮膚局所においては抗原感作が経皮的にも行われる可能性が高く、湿疹の悪化がアレルギー疾患の引き金になりうることが示唆されている。そこで本研究において、アトピー性皮膚炎の既往のある母胎から出産する新生児を対象として、皮膚バリア機能補助剤を用いたスキンケアのアトピー性皮膚炎発症(6ヶ月時)やアレルゲン特異的IgE抗体獲得(2歳時)に対する予防効果を検討することとした。
研究方法
無作為ランダム化介入試験により、スキンケアを毎日実施する群(Proactive群)と皮膚症状出現時のみに実施する群(Reactive群)を比較する。アレルゲン特異的IgE抗体の測定は、徳島大学で開発したタンパクチップによる測定法を用いる。さらに、アトピー性皮膚炎発症の交絡因子であるフィラグリン遺伝子診断や動物実験による経皮感作モデルの確立と皮膚バリア機能補助剤の効果を検討する。本研究の主要評価項目、副次評価項目を含めた計画はUMIN臨床試験登録システムに前登録した。
結果と考察
平成24年度中に79例のリクルートができ予定参加者数である70例を達成した。中間解析53例の結果において、予想したようにproactive群のほうがreactive群よりも発症が少なかったが、70例では検出力が不足することが明らかとなった。その理由として、倫理的配慮から対照群を無治療観察群ではなく必要時塗布を許可したreactive群としたため当初の予測よりも対照群の発症率が低くなったこと、reactive群のドロップアウト率がやや高いこと、試験プロトコール違反(参加者が自主的にproactive療法を開始する)などが挙げられる。今後、中間解析の結果に基づき、本研究の仮説の検証に必要な症例数を継続してリクルートし、プロトコール遵守率を高めて、本研究を完了し我が国初のエビデンスを発信する必要がある。
分担課題において多くの成果が得られたが、微量資料による抗原特異的IgE, IgA, IgG, IgG4抗体価の高感度測定方法の開発が特筆される。この方法を用い、臍帯血の抗原特異的IgE, IgA, IgG, IgG4のアレルゲンプロファイリングと抗体価を母子間で比較した結果、臍帯血の抗原特異的IgEは胎児由来であることが明確に示され、新生児は抗原特異的IgEを持つてアレルギー発症の準備状態にあることが判明した。
結論
一生の免疫体質が決定されるこの時期のスキンケアが、将来のアレルギー疾患発症予防に寄与しうることが社会に認知された場合、本研究が社会に与えるインパクトは計り知れない。本研究成果はアレルギー疾患の発症予防という点で広く社会に還元でき、また医療費の削減にも繋がる可能性の高い臨床研究である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201229002B
報告書区分
総合
研究課題名
適切なスキンケア、薬物治療方法の確立とアトピー性皮膚炎の発症・増悪予防、自己管理に関する研究
課題番号
H22-免疫-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 博久(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 松本健治(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
  • 大矢 幸弘(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 新関 寛徳(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 坂本 なほ子(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所)
  • 左合 治彦(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院医学研究科)
  • 木戸 博(徳島大学疾患酵素学研究センター)
  • 竹森 利忠(理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センター)
  • 菅井 基行(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アトピー性皮膚炎(AD)は掻痒や慢性・反復性経過を特徴とし、掻痒による生活の質の低下が著しいが、有効な発症予防法はない。AD患者の皮膚局所においては抗原感作が経皮的にも行われる可能性が高く、湿疹の悪化がアレルギー疾患の引き金になりうることが示唆されている。そこで本研究において、アトピー性皮膚炎の既往のある母胎から出産する新生児を対象として、皮膚バリア機能補助剤を用いたスキンケアのアトピー性皮膚炎発症(6ヶ月時)やアレルゲン特異的IgE抗体獲得(2歳時)に対する予防効果を検討することとした。
研究方法
無作為ランダム化介入試験により、スキンケアを毎日実施する群(Proactive群)と皮膚症状出現時のみに実施する群(Reactive群)を比較した。アレルゲン特異的IgE抗体の測定は、徳島大学で開発したタンパクチップによる測定法を用いた。さらに、アトピー性皮膚炎発症の交絡因子であるフィラグリン遺伝子診断や動物実験による経皮感作モデルの確立と皮膚バリア機能補助剤の効果を検討した。本研究の主要評価項目、副次評価項目を含めた計画はUMIN臨床試験登録システムに前登録した。
結果と考察
平成23年の東日本大震災の影響で東京周辺から離れる家族が多かったことなど各種要因により、一時参加者のキャンセルが続き、研究の継続が危ぶまれたが、最終年度である平成24年度中に79例のリクルートができ予定参加者数である70例を達成した。中間解析53例の結果において、予想したようにproactive群のほうがreactive群よりも発症が少なかったが、70例では検出力が不足することが明らかとなった。その理由として、倫理的配慮から対照群を無治療観察群ではなく必要時塗布を許可したreactive群としたため当初の予測よりも対照群の発症率が低くなったこと、reactive群のドロップアウト率がやや高いこと、試験プロトコール違反(参加者が自主的にproactive療法を開始する)などが挙げられる。今後、中間解析の結果に基づき、本研究の仮説の検証に必要な症例数を継続してリクルートし、プロトコール遵守率を高めて、本研究を完了し我が国初のエビデンスを発信する必要がある。
分担課題において多くの成果が得られたが、微量資料による抗原特異的IgE, IgA, IgG, IgG4抗体価の高感度測定方法の開発が特筆される。この方法を用い、臍帯血の抗原特異的IgE, IgA, IgG, IgG4のアレルゲンプロファイリングと抗体価を母子間で比較した結果、臍帯血の抗原特異的IgEは胎児由来であることが明確に示され、新生児は抗原特異的IgEを持つてアレルギー発症の準備状態にあることが判明した。
結論
一生の免疫体質が決定されるこの時期のスキンケアが、将来のアレルギー疾患発症予防に寄与しうることが社会に認知された場合、本研究が社会に与えるインパクトは計り知れない。本研究成果はアレルギー疾患の発症予防という点で広く社会に還元でき、また医療費の削減にも繋がる可能性の高い臨床研究である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201229002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
湿疹がまだ出現していない生後1週未満の新生児期からスキンケアを予防的(proactive)に行う群と必要時(reactive)に行う群において、AD予防として有効かどうかを検討した。平成24年度中に79例のリクルートができ予定参加者数である70例を達成した。倫理的配慮等の事情により、中間解析53例の結果において、予想したようにproactive群のほうがreactive群よりも発症が少なかったが、70例では検出力が不足することが明らかとなった。
臨床的観点からの成果
倫理的な配慮により、当初よりも結果が遅れているが、傾向としては仮説通りの成果が得られている。もし、この仮説が証明され新生児期からのスキンケアが有効であることが証明された場合、次世代の国民のアレルギー疾患を激減できることが期待される。今後も継続すべき研究であると思われる。
ガイドライン等の開発
2014年10月に米国アレルギー学会雑誌(インパクトファクター12)にて本研究成果を発表した。ランダム化比較試験で主要評価項目を達成した(レベル1のエビデンス)ため、Cochrane Libraryからも詳細な研究内容の照会があった。近い将来、ガイドラインに生かされることになる。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
2014年10月1日、本研究の成果を米国アレルギー学会雑誌に発表した。NHK他各民放、朝日、読売、毎日、日経、The Japan Times等各紙で取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
40件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
イヤモンドチップへの蛋白質/ペプチドの固定化方法
詳細情報
分類:
特許番号: 4660756
発明者名: 木戸博他8名
権利者名: 国立徳島大学
出願年月日: 20050325
取得年月日: 20110114
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Futamura M, Ohya Y, Akashi M, et al.
Age-related Prevalence of Allergic Diseases in Tokyo Schoolchildren.
Allergol Int , 60 (4) , 509-515  (2011)
原著論文2
Noguchi E, Sakamoto H, Hirota T, et al.
Genome-wide association study identifies HLA-DP as a susceptibility gene for pediatric asthma in Asian populations.
PLoS Genet , 7 (7) , 1-2  (2011)
e1002170. doi: 10.1371/journal.pgen.1002171.
原著論文3
Kitaba S, Murota H, Terao M, Azukizawa et al.
Blockade of interleukin-6 receptor alleviates disease in mouse model of scleroderma.
Am J Pathol , 180 , 165-176  (2011)
原著論文4
Terao M, Murota H, Kimura A, et al.
11β-hydroxysteroid dehydrogenase-1 is a novel regulator of skin homeostasis and a candidate target for promoting tissue repair.
PLoS One , 6 (9) , 25039-25039  (2011)
原著論文5
Terao M, Nishida K, Murota H, et al.
Clinical effect of tocoretinate on lichen and macular amyloidosis.
J Dermatol , 38 (2) , 179-184  (2011)
原著論文6
Nakagawa Y, Takamatsu H, Okuno T, et al.
Identification of semaphorin 4B as a negative regulator of basophil-mediated immune responses.
J Immunol , 186 (5) , 2881-2888  (2011)
原著論文7
Azukizawa H, Döhler A, Kanazawa N, et al.
Steady state migratory RelB+ langerin +dermal dendritic cells mediate peripheral induction of antigen-specific CD4+ D25+ Foxp3 +regulatory T cells.
Eur J Immunol , 41 (5) , 1420-1434  (2011)
原著論文8
Kamemura N, Tada H, Shimojo N, et al.
Intrauterine sensitization of allergen-specific IgE analyzed by a highly-sensitive new allergen microarray.
J Allergy Clin Immunol , 30 (1) , 113-121  (2012)
原著論文9
Suzukawa M, Morita H, Nambu A, et al.
Epithelial cell-derived IL-25, but not Th17 cell-derived IL-17 or IL-17F, is crucial for murine asthma
J Immunol , 189 (7) , 3641-3652  (2012)
原著論文10
Morita H, Nomura I, Orihara K, et al.
Antigen-specific T-cell responses in patients with non-IgE-mediated gastrointestinal food allergy are predominantly skewed to T(H)2
J Allergy Clin Immunol , 131 (2) , 590-592  (2013)
原著論文11
Matsuda A, Morita H, Unno H, et al.
Anti-inflammatory effects of high-dose IgG on TNF-alpha-activated human coronary artery endothelial cells
Eur J Immunol , 42 (8) , 2121-2131  (2012)
原著論文12
Kashiwakura JC, Ando T, Matsumoto K, et al.
Histamine-releasing factor has a proinflammatory role in mouse models of asthma and allergy
J Clin Invest , 122 (1) , 218-228  (2012)
原著論文13
Fujishima H, Okada N, Dogru M, et al.
The role of Staphylococcal enterotoxin in atopic keratoconjunctivitis and corneal ulceration
Allergy , 67 (6) , 799-803  (2012)
原著論文14
Murota H, Izumi M, Abd El-Latif MI, et al.
Artemin causes hypersensitivity to warm sensation, mimicking warmth-provoked pruritus in atopic dermatitis.
J Allergy Clin Immunol , 130 (3) , 671-682  (2012)
原著論文15
Horimukai K, Morita K, Narita M, et al.
Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis.
J Allergy Clin Immunol , 134 (4) , 824-830  (2014)
10.1016/j.jaci.2014.07.060

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201229002Z