文献情報
文献番号
201228016A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト/チンパンジー・マウスハイブリッド技術を利用したB型肝炎ウイルス感染モデルマウスの開発
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山村 研一(熊本大学 生命資源研究・支援センター)
研究分担者(所属機関)
- 荒木喜美(熊本大学 生命資源研究・支援センター)
- 江良択実(熊本大学 発生医学研究所)
- 佐々木裕(熊本大学 生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 B型肝炎創薬実用化等研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
90,910,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HBVキャリアは本邦でも150万人存在し、治療抵抗性であるとともに10-20%に肝癌が発症することから、慢性B型肝炎発症機構の解析とそれに基づく新たな治療法の確立は急務である。そこで、HBV感染可能で免疫応答が正常な感染モデルマウスを作製し、病態解析と治療法確立の画期的なツールを開発することを目的としている。
研究方法
HBVが感染可能で正常の免疫応答を持つマウスを作製することを目的とし、1)チンパンジー肝臓キメラマウスの作製、2)ヒト肝臓置換マウスの作製、3)HBV肝炎モデルの確立を行う。平成24年度は以下の研究を行う。
1)チンパンジー由来iPS(ciPS)細胞の樹立:チンパンジーの血液細胞よりセンダイウイルスベクターを用いてiPS細胞を樹立する。テラトーマ形成実験等を行いiPS細胞として多分化能を有しているかどうかを確認する。
2)Tg(HLA-A2.1-hβ2m);H2-D<B-/->;B2m<-/->の入手と確認:パスツール研所有であるため、MTAを交わし使用許可を得る。入手後、ES細胞作製のために必要な胚盤胞を採取するため、マウスを多数得る。
3)マウス肝細胞死滅用のベクター構築:タモキシフェン投与時にのみマウス肝細胞を死滅させることを計画し、SAP-Cre-ERT2(SC)遺伝子およびCAG-loxP-EGFP-loxP-DT-A(CD)遺伝子のベクターを作製する。
4)HBV感染と肝炎発症実験のための予備調査と実験:作製されたキメラマウスに肝炎ウイルスを感染させるために必要な条件を検討し、HBV-cccDNAの制御メカニズムに関与すると思われる関連因子についてin silicoにて解析する。
1)チンパンジー由来iPS(ciPS)細胞の樹立:チンパンジーの血液細胞よりセンダイウイルスベクターを用いてiPS細胞を樹立する。テラトーマ形成実験等を行いiPS細胞として多分化能を有しているかどうかを確認する。
2)Tg(HLA-A2.1-hβ2m);H2-D<B-/->;B2m<-/->の入手と確認:パスツール研所有であるため、MTAを交わし使用許可を得る。入手後、ES細胞作製のために必要な胚盤胞を採取するため、マウスを多数得る。
3)マウス肝細胞死滅用のベクター構築:タモキシフェン投与時にのみマウス肝細胞を死滅させることを計画し、SAP-Cre-ERT2(SC)遺伝子およびCAG-loxP-EGFP-loxP-DT-A(CD)遺伝子のベクターを作製する。
4)HBV感染と肝炎発症実験のための予備調査と実験:作製されたキメラマウスに肝炎ウイルスを感染させるために必要な条件を検討し、HBV-cccDNAの制御メカニズムに関与すると思われる関連因子についてin silicoにて解析する。
結果と考察
<結果>1)チンパンジーの血液を採取し、分離した単核球を用いて初期化因子(Oct3/4,Klf4,Sox2,cMyc)を持つ非組込型センダイウイルスベクターを用いてiPS細胞を作製した。免疫染色、RT-PCRにより、センダイウイルス除去と未分化マーカーの発現を確認した。PCR等によりチンパンジーTリンパ球由来のiPS細胞であることを確認した。2)Hhdマウスを入手し繁殖を行い、体外受精のために必要な雌を用意できる体制が整った。Hhd遺伝子及び薬剤耐性遺伝子を含むプラスミドを入手した。3)SAP-Cre-ER<T2>およびCAG-loxP-EGFP-loxP-DT-A及び薬剤選択のためのPGK-Puroを構築した。4)HBV-DNAのゲノム配列を用いてin silico解析を行った結果、エピジェネティックな調節機構のkey分子の一つであるCTCFの結合が予想される配列が存在することを見いだした。
<考察>チンパンジーの単核球からTリンパ球への刺激条件はやや異なるものの、iPS誘導に必要な4因子についてはほぼヒトと同じ条件で誘導、樹立が可能と考えられる。ヒトとチンパンジーで一部の遺伝子の長さに違いがあるため、PCRで細胞由来が識別可能であった。Hhd遺伝子とハイグロマイシン耐性遺伝子をもつプラスミドは、プラスミドベクター部分を切り離すことが出来ないため、その部分も同時に挿入され、発現の低下がやや危惧される。マウス肝細胞を誘導的に死滅させるための3種類のカセットを混合してもマウスES細胞に効率よく導入できることが分った。この場合、プラスミドベクターは切り出しによりあらかじめ除くので、その影響を気にする必要はなくなる。
キメラマウス完成後、感染実験を行うための滴定は必要であるが、目安となる数値は得られた。一方、HBVゲノム内にCTCF結合配列が存在することから、エピジェネティックな調節機構が、HBVcccDNAの発現制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
<考察>チンパンジーの単核球からTリンパ球への刺激条件はやや異なるものの、iPS誘導に必要な4因子についてはほぼヒトと同じ条件で誘導、樹立が可能と考えられる。ヒトとチンパンジーで一部の遺伝子の長さに違いがあるため、PCRで細胞由来が識別可能であった。Hhd遺伝子とハイグロマイシン耐性遺伝子をもつプラスミドは、プラスミドベクター部分を切り離すことが出来ないため、その部分も同時に挿入され、発現の低下がやや危惧される。マウス肝細胞を誘導的に死滅させるための3種類のカセットを混合してもマウスES細胞に効率よく導入できることが分った。この場合、プラスミドベクターは切り出しによりあらかじめ除くので、その影響を気にする必要はなくなる。
キメラマウス完成後、感染実験を行うための滴定は必要であるが、目安となる数値は得られた。一方、HBVゲノム内にCTCF結合配列が存在することから、エピジェネティックな調節機構が、HBVcccDNAの発現制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
結論
チンパンジーの末梢Tリンパ球から樹立したiPS細胞は、形態的にも未分化マーカーの発現でもiPS細胞であると考えられた。Tリンパ球受容体遺伝子サザンブロット解析からこのiPS細胞はTリンパ球由来であり、染色体検査、遺伝子解析によりチンパンジー細胞由来であることが確認された。したがって、チンパンジー由来のiPS細胞の樹立に成功した。
HhdマウスとHhd遺伝子のコンストラクトの入手と増殖は計画通りに達成した。また、肝細胞を欠失させるためのコンストラクト、SAP-CreER<T2>、CAG-loxP-EGFP-loxP-DT-A、PGK-Puroも構築、マウスES細胞に導入できた。
キメラマウスにB型肝炎ウイルスを感染させるために必要な条件を明らかにし、エピジェネティクス関連因子がde novo肝炎発生に関与している可能性が示唆された。
HhdマウスとHhd遺伝子のコンストラクトの入手と増殖は計画通りに達成した。また、肝細胞を欠失させるためのコンストラクト、SAP-CreER<T2>、CAG-loxP-EGFP-loxP-DT-A、PGK-Puroも構築、マウスES細胞に導入できた。
キメラマウスにB型肝炎ウイルスを感染させるために必要な条件を明らかにし、エピジェネティクス関連因子がde novo肝炎発生に関与している可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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