文献情報
文献番号
201227033A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルスe抗体陽性無症候性キャリアの長期予後に関する検討
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-肝炎-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横須賀 收(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 白澤 浩(千葉大学大学院医学研究院)
- 髭 修平(JA北海道厚生連札幌厚生病院)
- 上野 義之(山形大学 医学部)
- 岡本 宏明(自治医科大 医学部)
- 田中 榮司(信州大学医学部)
- 田中 靖人(名古屋市立大学大学院医学系研究科)
- 高橋 祥一(広島大学病院)
- 吉岡 健太郎(藤田保健衛生大学)
- 八橋 弘(長崎医療センター、臨床研究センター)
- 坪内 博仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
- 恩地 森一(愛媛大学大学院医学系研究科)
- 佐田 通夫(久留米大学医学部)
- 中本 安成(福井大学医学部)
- 西口 修平(兵庫医科大学)
- 泉 並木(武蔵野赤十字病院)
- 今関 文夫(千葉大学総合安全衛生管理機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HBeAb陽性の無症候性キャリアは、予後良好な病態と考えられていた。一方、欧米からの報告では、いわゆる無症候性キャリアからの肝炎の発症が当初推定されていたよりも多いことが示された。欧米と本邦では様々な背景因子が異なることから、本邦で同様のことがいえるかについては不明である。現在HBVキャリアに対して、B型肝炎ウイルス感染者の救済のための特別措置法に基づき、HBVの病態に応じて、異なる金額の給付金が支給されている。無症候性キャリアは、慢性肝炎症例の半分以下の金額となっているが、この設定が正しいかについては、無症候性キャリアの長期予後を正確に把握して初めて判断ができるものである。これまで無症候性キャリアの全国的な大規模な検討はなされたことはなく、わずかに少数例の短報があるのみであり、その解明には本邦における大規模な検討が必要である。
研究方法
本研究の目的達成のために、臨床研究と基礎研究を行う。臨床研究は、HBeAb陽性のHBVキャリアの詳細な検討を行うために、(1)後向き検討と(2)前向き検討のエントリーを行った。代表者および分担研究者の施設より、無症候性キャリアの症例のエントリーを依頼し、前向き、後向き研究対象を合わせて、848例の臨床経過情報を得て解析した。分担研究者には、無症候性キャリアの成立と予後に関する研究を依頼した。
基礎研究は、白澤、岡本分担研究者に、無症候性キャリア成立に関するウイルス側因子の基礎的検討を依頼した。本研究は、千葉大学大学院医学研究院生命倫理委員会で研究内容の審査を受け、研究の施行について、承認を受けている。臨床研究の登録を行った(UMIN000009185)。
基礎研究は、白澤、岡本分担研究者に、無症候性キャリア成立に関するウイルス側因子の基礎的検討を依頼した。本研究は、千葉大学大学院医学研究院生命倫理委員会で研究内容の審査を受け、研究の施行について、承認を受けている。臨床研究の登録を行った(UMIN000009185)。
結果と考察
全国の施設より集積された848症例の無症候性キャリアの調査を行った。これら施設はHBVキャリア症例を専門的に診療を行う地域の専門病院であり、このように各施設においても、10年以上のフォローアップ症例は、20%以下であり、適切なフォローアップが十分なされていないことが本研究の調査で明らかになった。また、血小板数が15万未満の症例も、14%みられた。これは、進行した肝線維化を反映している可能性が高い。一方、HBVDNA量が4.0logcopies/ml以上の症例は、28%認めた。Genotypeについては、東北地方でGenotype Bが多くみられる地域ではGenotype Bが、一方、中国四国地方のGenotype Dが多くみられる地域では、Genotype Dが多くみられた。しかし、いずれもその地域でのHBVキャリア全体に対するGenotypeCが占める既報の割合と比較すると、GenotypeCの症例は少ない印象であった。それ以外の地域では、同様にGenotypeCの症例が少なかった。
結論
HBeAb陽性かつALTが30 IU/L以下のHBVキャリアの中には、肝線維化が進行した例や、HBVDNA量が多く、将来の肝硬変への進展や肝炎の増悪のリスクを含む症例が、一定頻度認めた。しかしながら、いずれも観察期間が短く、どのような症例に肝炎の再燃、肝硬変への進展のリスクがあるかについては、今後の前向き研究が必要と思われる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-