B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究

文献情報

文献番号
201227029A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の核酸アナログ薬治療におけるdrug freeを目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究
課題番号
H24-肝炎-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田中 榮司(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 靖人(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 平松 直樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 鈴木 義之(虎の門病院 肝臓センター)
  • 八橋 弘(長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 西口 修平(兵庫医科大学 内科学肝・胆・膵科)
  • 柘植 雅貴(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
  • 神田 達郎(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 姜 貞憲(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 核酸アナログ薬(NA薬)はB型慢性肝炎の治療に広く用いられているが、同薬を安易に中止すると肝炎が再燃することが問題点の一つとして残されている。一方、インターフェロン(IFN)治療ではdrug freeとなることが期待されるが、著効例が少ないことが問題点の一つである。我々はこれまでNA薬を単純に中止することのリスクを検討し、中止後の肝炎再燃のリスク群を設定した。本研究班ではNA薬の中止に際しIFNを併用することの有用性、およびその効果予測因子を前向きおよび後向きに検討する。さらに、より効率的な治療効果判定法を開発することも目的とする。
研究方法
 前向き共同研究である「B型慢性肝炎の治療における、NA薬中止時のPEG-IFNα2a投与に関する有効性の検討」はプロトコールを作成しUMIN登録を行った。対象は基本的にNA薬を2年以上投与し、NA薬中止時にHBe抗原陰性かつHBV DNA陰性の症例とした。プロトコールは大きくA群とB群に分かれる。A群ではNA薬中止後直ぐにPEG-IFNを投与し、B群では中止後肝炎が再燃した時点でPEG-IFNの投与かNA薬の再投与を行う。IFNは全例でPEG-IFNの180μg/日を使用し、48週間投与とした。治療効果予測因子としては、HBV関連マーカーの他にゲノムワイド関連解析を行い、遺伝的背景との関連を明らかにする。
後向き共同研究では共通フォーマットによる臨床データの集積を行い解析した。IFNは、基本的に通常型を6ヶ月間シークエンシャルに投与されている。後向き研究での治療効果判定はNA薬中止後12ヶ月の時点で評価した(12M著効)。著効の条件としては、HBe抗原陰性、ALT < 30 IU/L、HBV DNA < 4.0 log copies/mlの全てをみたすこととした。著効予測因子の候補としてHBe抗原・抗体、HBV DNA量、HBs抗原量、HBcr抗原量などを測定した。
結果と考察
 前向き検討は順調に登録が進み、2013年3月4日の時点で13施設から85例が登録された。内訳は男性が多く、年齢の中央値は46歳と比較的高かった。遺伝子型は日本に多いC型が大多数を占めた。HBs抗原量とHBcr抗原量から推定する肝炎再燃リスク群に関しては、高リスク群が60%と多かったが、低、中リスク群も40%と比較的多く含まれた。実際のNA薬の中止のスケジュールはA群が76%と多くを占め、ほぼ予想通りであった。
  後向き研究では67例が登録された。NA薬開始時にHBe抗原陽性は47例、陰性は20例であった。HBe抗原陽性の47例中17例はNA薬投与中に陰性化し、HBe抗原陰性の20例は観察期間中陰性で推移した。NA薬中止時にHBe抗原陰性であった37例では62%が12M著効になったのに対し、HBe抗原陽性の30例では17%のみであった。このことから、著効を得るにはNA薬中止時にHBe抗原が陰性化していることが重要と考えられた。NA薬中止時HBe抗原陰性の37例について、12M著効と関連する因子を多変量解析にて検討すると、NA薬中止時のHBcr抗原量が有意の因子として算出された。この結果から、HBcr抗原量がIFN治療効果を予測する新しいマーカーになる可能性が示唆された。NA薬中止時HBe抗原陽性の30例では有意の因子はなかった。
 NA薬中止後のALT値およびHBV DNA量について平均値と最大値の相関を検討すると、両者とも強い正の相関がみられた。この結果は、著効と非著効の判定をALT値とHBV DNA量の最大値から行うことが可能であることを示しており、新しい治療効果判定基準となる可能性が示唆された。この方法を用いるとNA薬中止後24ヶ月までは再燃する症例が少なからずみられることから、1時点で著効を判断する場合はNA薬中止後少なくとも2年経過してから判定する必要があることが示唆された。
結論
1. 前向き共同研究である「B型慢性肝炎の治療における、核酸アナログ中止時のPEG-IFNα2a投与に関する有効性の検討」はプロトコールを作成し、順調に症例の登録が進んでいる。
2. NA薬中止時にHBe抗原陰性であることはIFNを併用してNA薬を中止する療法の必要条件と考えられた。
3. NA薬中止時にHBe抗原陰性の症例では、HBcr抗原低値の症例で高い著効率が期待された。
4. NA薬中止後のALT値とHBV DNA量を平均値と最大値で評価することは治療効果判定の新しい方法の開発に繋がる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201227029Z