文献情報
文献番号
201227028A
報告書区分
総括
研究課題名
経口感染によるウイルス性肝炎(A型及びE型)の感染防止、病態解明、遺伝的多様性及び治療に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-肝炎-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岡本 宏明(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター)
- 中山 伸朗(埼玉医科大学)
- 新井 雅裕(東芝病院)
- 横須賀 收(千葉大学)
- 石井 孝司(国立感染症研究所)
- 鈴木 一幸(岩手医科大学)
- 日野 学(日本赤十字社)
- 姜 貞憲(手稲渓仁会病院)
- 李 天成(国立感染症研究所)
- 大河内 信弘(筑波大学医学医療系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
46,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
経口感染によるウイルス性肝炎(A型及びE型)の発生実態の把握と臨床病態の解明、起因ウイルスの遺伝的多様性に関する理解の深化、感染源・感染経路の解明、診断法の改良及び治療法・予防法の確立を目標とする。
研究方法
発生動向と重症化リスク因子の調査、感染実態と臨床病態の調査、HAV並びにHEVのウイルス株塩基配列の蒐集と解析、HEV宿主動物調査、食品媒介感染の可能性の調査、診断法の改良、抗ウイルス剤、ワクチン開発のための予備的検討などによる。
結果と考察
A型肝炎については、1)HAVに対する感受性者が着実に増え、かつ高齢化し、大流行への進展・拡大が危惧される状況にはあるが、幸い流行はなく、患者数は低値横ばいであった、しかし2)ⅢA型の頻度が上昇し、国内への定着傾向がみられること、3)HAV感染のリスクファクターとして外食頻度と海外旅行が指摘されること、また4)血清中のHAV粒子が脂質に覆われ、中和抗体が結合できない状態にあること、5)IL-29(IFNλ1)がHAV増殖及びIRES活性の抑制に有効であること、などが明らかになった。E型肝炎については、1)E型肝炎診断薬が保険収載されたこともあり、届け出件数が例年の2倍になり、ほぼ全国から届け出があったが、人口10万人当たりの患者数は北海道(0.70)と三重県(0.65)が突出していた。北海道では4型新札幌株による小流行が再発生し、重症化が目立った。一方、三重県ではヨーロッパ型(3e型)の同一HEV株による感染例が多く認められたが、重症化例はなかったこと、2)野外飼育サルで3型HEVの感染があり、1頭のサルで約3年間の持続感染が観察されたこと、3)ウサギHEVもヒト培養細胞(PLC/PRF/5、A549)で効率よく増殖し、ヒトへの感染リスクが示唆されること、4)感染細胞から放出されたHEV粒子の表面に細胞内の核周囲に存在する抗原が含まれること、5)HEVが細胞質内のエンドソーム膜に出芽し、エクソソーム分泌経路を利用して細胞外に放出されること、6)HEVの感染培養系に於いて、IFN、リバビリン、アマンタジンなどが単独でHEVの増殖を抑制しうることなどを明らかにすることができた。これらの研究成果は今後の肝炎医療の水準の向上を目指した厚生労働行政施策の推進に資するものと考えられる。
結論
肝炎発生の動向把握に加え、病態解明、感染予防対策の構築や治療法確立に資する多くの成果を班員及び班友の協力によって得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
-