文献情報
文献番号
201227023A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性C型肝炎患者由来HCV株感受性正常肝細胞による病原性発現機構の解明および薬剤評価系の構築
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-肝炎-若手-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 昌彦(浜松医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)感染により、慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌へと移行し、肝癌での年間死亡者は我が国で3万人を超える。HCVに関する研究は、これまで限られたヒト肝癌細胞株とHCV株の組み合わせにより行われてきた。しかしながら、病原性発現の分子機構を解析するためには、本来の肝細胞機能を有する正常肝細胞株に多様な患者HCV株が感染増殖することのできるモデルが必要である。本研究は、慢性C型肝炎感染患者由来のHCV株を高効率に分離培養できる、正常肝細胞株の樹立を目指す。これにより、病原性発現機構の解明、さらには薬剤効果や新規治療薬開発のための実験モデル系を構築する。
研究方法
(1)Hdo細胞のHCV感受性の解析
前年度、ヒト肝癌細胞株HuH-7をiPS因子によりオーバル様細胞株を樹立した。HCVccにより感染性を調べた。また、Glucを発現するHCVサブゲノムレプリコンRNAによりHCV複製能を検討した。
(2)iHdo細胞の樹立
Hdo細胞を成熟肝細胞への分化誘導を試みた。得られた細胞の肝分化マーカーの発現を調べた。誘導細胞のHCV感染性・複製能を調べた。
(3)HCV感染・複製に関与する新規因子の探索
樹立細胞株の遺伝子発現をマイクロアレイにより解析にした。Hdo細胞で顕著に発現低下する遺伝子のHCV複製能への関与を調べた。HCV感染受容体の発現を調べた。
(4)Hdo細胞の胆管上皮細胞への分化
Hdo細胞が肝実質および胆管上皮細胞への両方向性の分化能を有しているかを明らかにするために、胆管上皮細胞への誘導を試みた。得られた細胞の肝分化マーカーの発現、胆管構造にみられる極性を調べた。
(5)Hdo細胞の腫瘍原性の解析
Hdo細胞の癌関連遺伝子の発現を調べた。また、免疫不全マウスに移植し、腫瘍径の経時的変化と腫瘍マーカーの発現を調べた。
(6)完全長HCV RNA濃縮法の開発
患者血清から全長HCV RNAを簡便に分離するための方法を検討した。HCVゲノム3’NTRの保存された領域に相補的なビオチン化プライマーを設計し、HCV RNAをアニーリングさせてアビジンビーズによる精製を行った。
前年度、ヒト肝癌細胞株HuH-7をiPS因子によりオーバル様細胞株を樹立した。HCVccにより感染性を調べた。また、Glucを発現するHCVサブゲノムレプリコンRNAによりHCV複製能を検討した。
(2)iHdo細胞の樹立
Hdo細胞を成熟肝細胞への分化誘導を試みた。得られた細胞の肝分化マーカーの発現を調べた。誘導細胞のHCV感染性・複製能を調べた。
(3)HCV感染・複製に関与する新規因子の探索
樹立細胞株の遺伝子発現をマイクロアレイにより解析にした。Hdo細胞で顕著に発現低下する遺伝子のHCV複製能への関与を調べた。HCV感染受容体の発現を調べた。
(4)Hdo細胞の胆管上皮細胞への分化
Hdo細胞が肝実質および胆管上皮細胞への両方向性の分化能を有しているかを明らかにするために、胆管上皮細胞への誘導を試みた。得られた細胞の肝分化マーカーの発現、胆管構造にみられる極性を調べた。
(5)Hdo細胞の腫瘍原性の解析
Hdo細胞の癌関連遺伝子の発現を調べた。また、免疫不全マウスに移植し、腫瘍径の経時的変化と腫瘍マーカーの発現を調べた。
(6)完全長HCV RNA濃縮法の開発
患者血清から全長HCV RNAを簡便に分離するための方法を検討した。HCVゲノム3’NTRの保存された領域に相補的なビオチン化プライマーを設計し、HCV RNAをアニーリングさせてアビジンビーズによる精製を行った。
結果と考察
(1)Hdo細胞のHCV感受性の解析
Hdo細胞のHCV感染性を調べた結果、感染感受性が欠損していることを明らかにした。また、HCV複製能も欠損していることを明らかにした。
(2)iHdo細胞の樹立
Hdo細胞を分化誘導することにより、成熟肝細胞(iHdo)を得た。iHdo細胞では、ALBの発現亢進、AFPの発現低下がみられた。iHdo-23細胞ではHCV複製能が回復することが明らかになった。
(3)HCV感染・複製に関与する新規因子の探索
樹立した細胞株における遺伝子発現を解析した結果、既知のHCV複製に関与する遺伝子の発現に変化はみられなかった。HCV複製に関与する新規の宿主遺伝子が存在することが示唆された。Hdo細胞で発現が顕著に低下する遺伝子について、ノックダウンを試みた結果、6種類の遺伝子がHCV複製に影響した。HCV感染受容体のうちCD81の発現が顕著に低下していた。
(4)Hdo細胞の胆管上皮細胞への分化
Hdo細胞を胆管様細胞へと誘導を行った結果、胆管上皮系マーカー遺伝子EpCAM, CK19 の発現亢進、極性のある管腔様構造を形成した。Hdo細胞がオーバル細胞の特性を持つ細胞株であることが示された。
(5)Hdo細胞の腫瘍原性の解析
Hdo細胞は癌原遺伝子であるMycやKLBの発現低下、癌抑制遺伝子Rbの発現亢進がみられた。免疫不全マウスにおける腫瘍形成能、AFPなどの悪性度を示す腫瘍マーカーの発現もHuH-7と比べて低下していた。
(6)完全長HCV RNA濃縮法の開発
HCVゲノム3’NTRに存在する保存された領域に相補的なビオチン化プライマーを組み合わせることで効果的に完全長HCV RNAを単離精製できる系を樹立した。
Hdo細胞のHCV感染性を調べた結果、感染感受性が欠損していることを明らかにした。また、HCV複製能も欠損していることを明らかにした。
(2)iHdo細胞の樹立
Hdo細胞を分化誘導することにより、成熟肝細胞(iHdo)を得た。iHdo細胞では、ALBの発現亢進、AFPの発現低下がみられた。iHdo-23細胞ではHCV複製能が回復することが明らかになった。
(3)HCV感染・複製に関与する新規因子の探索
樹立した細胞株における遺伝子発現を解析した結果、既知のHCV複製に関与する遺伝子の発現に変化はみられなかった。HCV複製に関与する新規の宿主遺伝子が存在することが示唆された。Hdo細胞で発現が顕著に低下する遺伝子について、ノックダウンを試みた結果、6種類の遺伝子がHCV複製に影響した。HCV感染受容体のうちCD81の発現が顕著に低下していた。
(4)Hdo細胞の胆管上皮細胞への分化
Hdo細胞を胆管様細胞へと誘導を行った結果、胆管上皮系マーカー遺伝子EpCAM, CK19 の発現亢進、極性のある管腔様構造を形成した。Hdo細胞がオーバル細胞の特性を持つ細胞株であることが示された。
(5)Hdo細胞の腫瘍原性の解析
Hdo細胞は癌原遺伝子であるMycやKLBの発現低下、癌抑制遺伝子Rbの発現亢進がみられた。免疫不全マウスにおける腫瘍形成能、AFPなどの悪性度を示す腫瘍マーカーの発現もHuH-7と比べて低下していた。
(6)完全長HCV RNA濃縮法の開発
HCVゲノム3’NTRに存在する保存された領域に相補的なビオチン化プライマーを組み合わせることで効果的に完全長HCV RNAを単離精製できる系を樹立した。
結論
本研究において、ヒト肝細胞癌株をエピジェネティックにリプログラムすることでC型肝炎ウイルス感受性や腫瘍原性が変化することを明らかにした。このことは、慢性C型肝炎感染患者の治療において、エピジェネティックな変化を誘導するでC型肝炎ウイルスの排除や肝癌への進行を遅らせることできることを示唆する。また、成熟肝細胞への分化の過程で獲得するHCV生活環に必須な因子は新たな創薬のターゲットとなりうる。また完全長の患者HCV株を単離する手法は、今後の患者HCV株の病原性解析のための有用な方法となる。本研究によって、宿主因子をターゲットとした効果的な薬剤の開発、個々のHCVクローンに対して適切な薬剤の選択が可能となることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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