死亡率の低下とmorbidityに関する研究

文献情報

文献番号
199800114A
報告書区分
総括
研究課題名
死亡率の低下とmorbidityに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
府川 哲夫(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 統計情報高度利用総合研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
1,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の平均寿命は1980年代後半に世界一となり、その後も死亡率の低下は概ね順調に続き、深刻な人口高齢化の一因となっている。死亡率の低下にともなって国民の疾病量が低下しているのか、高年齢にシフトしているのか、あるいはある年齢まで低下しただけなのかは今後の医療費や介護ニーズの動向を考える上で重要な論点である。
本研究は患者調査を用いて1984年以降の日本における死亡率の低下と国民の疾病量との関係を分析することを目的とする。
研究方法
平成9年度から2年計画で死亡率の低下が国民の疾病量にどのような影響を与えたかについて、患者調査を用いて分析した。
平成9年度は平成5年(1993年)患者調査を用いて、1)地域の疾病量を表す指標の開発 2)入院期間と傷病に関する新しい統計量の算定、超高年齢の表章、入退院の動態率、など新たな結果表の検討3)年齢や傷病を縮約した地域ブロック別集計結果の検討、を行った。
平成10年度は1984年、87年、90年、93年、96年の患者調査を用いて国民の疾病量の動向に関する分析を行った。この結果をもとに、1984年から1996年の間の死亡率の低下と国民の疾病量の低下パターンとの関係について考察した。
結果と考察
1984年~1996年患者調査の病院及び一般診療所の患者票と退院票を用いて、入院と外来の患者数の関係、入院と退院の関係(動態)、退院患者の退院事由別平均在院日数、などを分析して次のような結果を得た。
1)入院と外来の合計患者数に占める入院患者数の割合(入院比率)は傷病によって大きく異なっていたが、受療率の高い地域で入院比率が高かった。
2)入院患者数に対する退院患者数(補正後)の割合(退院率)は3.0%(65歳未満約4%、65歳以上約2%)で、退院率は受療率の高い地域で低かった。
3)退院患者の平均在院日数は傷病のみならず退院事由によっても大きく異なっていた(治癒・軽快の平均在院日数が30日であったのに対して死亡は194日、転院は151日)。治癒・軽快の率は精神障害や筋骨格系を除いて在院期間が長くなるにつれて急速に低下した。治癒・軽快による退院に限ると、平均在院日数の地域差は大きく縮小した。
4)在院期間6か月未満のみを対象にすると、退院患者の平均在院日数はほぼ半減した。日数の短縮は全ての傷病で起き、傷病間・地域間の格差を大きく是正する方向に作用した。
高齢者の疾病量を入院受療率でみると、死亡率の低下によって85歳未満では1990年以降疾病量は減少傾向であった。しかも6か月以上の長期入院を除くと85歳以上の疾病量は大幅に減少した。ただし、ここでの長期入院の測定は過小評価である。もし、入院と外来の間に代替関係があれば、入院と外来を合わせた受療率を考慮する必要がある。高齢者の疾病量をとらえるには受療率の他にADL・IADL、施設ケアの必要な人の割合、日常生活に支障のある人の割合、活動能力指標、有病率・有訴率、といった指標を総合的にみていく必要がある。
結論
受療率の大きさを基準に県をグループ化(地域ブロック)すると、受療率の高い地域では入院比率が高く、退院率は低かったが、入院比率、退院率、治癒・軽快率などの年齢や傷病による変化は地域ブロックに依らなかった。従って、これらの地域差は年齢・傷病以外の要因(地域の受診・診療行為の違い)によるものと考えられた。超高齢における疾病量は6か月以上の入院に大きく左右された。6か月以上の長期入院を除くと入院受療率や退院患者の平均在院日数は大幅に縮小し、地域差も大半が解消した。

公開日・更新日

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更新日
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