文献情報
文献番号
201227008A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスによる肝疾患発症の宿主要因と発症予防に関する研究
課題番号
H22-肝炎-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
下遠野 邦忠(千葉工業大学 附属総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高久 洋(千葉工業大学 工学部)
- 堀田 博(神戸大学大学院 医学研究科)
- 加藤 宣之(岡山大学医歯薬学総合研究科)
- 小原 恭子(鹿児島大学 農学部)
- 杉山 和夫(慶応義塾大学医学部)
- 村上 善基(大阪市立大学 医学部)
- 丸澤 宏之(京都大学大学院医学研究科)
- 大島 隆幸(徳島文理大学香川薬学部)
- 有海 康雄(熊本大学エイズ学研究センター)
- 押海 裕之(北海道大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
41,454,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、HCV複製を阻止する方策を見出すとともにウイルス感染予防、肝疾患進展の予防法の確立を目指して以下の研究をおこなう。1. HCV排除を目的として複製、増殖を制御する宿主因子を探索しその機能を解明する。2. HCV感染により変化が知られている宿主機能を制御する要因の解析をおこなう。3. HCV感染が宿主要因を変化させる分子基盤を解明する。4.ウイルスタンパク質による細胞の機能変化及び感染による宿主の機能変化を調べる。5. HCV2型以外の複製系を開発して抗ウイルス剤開発に役立てる。
研究方法
HCV感染あるいは複製が宿主に及ぼす効果の解析には、HCVゲノムを導入したレプリコン細胞あるいは、HCVが感染増殖する系を用いた。ウイルス蛋白質の機能解析には、各ウイルス蛋白質を導入した細胞の増殖変化、代謝変化などを生化学的手法により解析した。蛋白質、mRNA等の解析はウエスタンブロット、塩基配列決定、定量PCR等常法に従った。蛋白質の会合に免疫沈降反応を行い、さらにゲル電気泳動とウエスタンブロットを行った。蛋白質の細胞内局在の解析には間接蛍光抗体法を用いた。酵母Two-hybrid法による蛋白質会合の解析も行った。DNAメチル化解析はIlluminaのメチル化プローブを用いた。HCVレプリコン細胞を、3年間培養しmRNAの量的変化をマイクロアレイにて解析した。肝炎あるいは肝がん患者生検組織からRNAを抽出してその中のHCV RNAを次世代塩基配列解析機で解析した。HCV感染あるいはHCV RNA等で刺激した細胞あるいはマウス個体の自然免疫変化をコントロールと対比して解析した。
結果と考察
本年度の成果は以下の内容に要約できる。
1.HCV感染増殖を制御する宿主因子の探索とその機能解析:HCV RNAの翻訳にはHsp90/eIF3c/HCV IRES複合体の形成が生じることが必須であることを明らかにした。2.HCV感染による宿主側の変化:HCVがFoxO1のリン酸化を抑制する結果、糖新生の律速酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)及びグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)の発現を促進させることを明らかにした。また、HCVの持続発現に伴い発現誘導されたDHCR24がHCVの増殖、p53活性を抑制する事を明らかにした。Coreタンパク質がEwing肉腫の原因因子であるEWSと会合する事を見いだた。3.HCV感染が宿主に及ぼす遺伝的な変化:HCVゲノムが持続的に複製している細胞では発現亢進する遺伝子に加え、減少する遺伝子が存在した。これらの変化の原因としてDNAメチル化が考えられた。発現が亢進した遺伝子の中には肝線維化や肥満に関するものが存在した。C型慢性肝炎でヒト遺伝子編集酵素が誘導されることを見出した。HCVゲノム配列に編集酵素が塩基変化を誘導した。HCV感染細胞においてメチル化が亢進する遺伝子と減少する遺伝子が多数検出され、エピジェネティック変化を介した宿主の情報伝達変化が存在することを強く示唆した。4.HCVと自然免疫:III型インターフェロンは、生体内ではIPS-1分子を介して産生されること、またこのときCD8陽性の樹状細胞が重要であることを見いだした。また、HCVのNS3-4AプロテーアーゼがIPS-1分子の上流で働くRiplet分子を分解し、自然免疫から逃避する可能性を示した。HCV増殖複製系の開発:HCV1b型の感染複製系を樹立するための開発研究を行った。
3年計画の最終年度にあたり、これまでの研究成果をさらに進展させると同時に、HCV感染によるエピジェネティック変化などの解析も行った。ウイルスの感染阻止の研究から疾患発症の機構解明とそれをもとにした疾患予防に至るまで研究の範囲は多岐に亘った。
1.HCV感染増殖を制御する宿主因子の探索とその機能解析:HCV RNAの翻訳にはHsp90/eIF3c/HCV IRES複合体の形成が生じることが必須であることを明らかにした。2.HCV感染による宿主側の変化:HCVがFoxO1のリン酸化を抑制する結果、糖新生の律速酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)及びグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)の発現を促進させることを明らかにした。また、HCVの持続発現に伴い発現誘導されたDHCR24がHCVの増殖、p53活性を抑制する事を明らかにした。Coreタンパク質がEwing肉腫の原因因子であるEWSと会合する事を見いだた。3.HCV感染が宿主に及ぼす遺伝的な変化:HCVゲノムが持続的に複製している細胞では発現亢進する遺伝子に加え、減少する遺伝子が存在した。これらの変化の原因としてDNAメチル化が考えられた。発現が亢進した遺伝子の中には肝線維化や肥満に関するものが存在した。C型慢性肝炎でヒト遺伝子編集酵素が誘導されることを見出した。HCVゲノム配列に編集酵素が塩基変化を誘導した。HCV感染細胞においてメチル化が亢進する遺伝子と減少する遺伝子が多数検出され、エピジェネティック変化を介した宿主の情報伝達変化が存在することを強く示唆した。4.HCVと自然免疫:III型インターフェロンは、生体内ではIPS-1分子を介して産生されること、またこのときCD8陽性の樹状細胞が重要であることを見いだした。また、HCVのNS3-4AプロテーアーゼがIPS-1分子の上流で働くRiplet分子を分解し、自然免疫から逃避する可能性を示した。HCV増殖複製系の開発:HCV1b型の感染複製系を樹立するための開発研究を行った。
3年計画の最終年度にあたり、これまでの研究成果をさらに進展させると同時に、HCV感染によるエピジェネティック変化などの解析も行った。ウイルスの感染阻止の研究から疾患発症の機構解明とそれをもとにした疾患予防に至るまで研究の範囲は多岐に亘った。
結論
3年目の最終年度である事からこれまでの研究をさらに押し進めること、および新たな視点からの研究を展開した。得られた成果は上に記載の通りであるが、その中でも新たな成果としてHCV感染によるDNAメチル化の変化が注目される。感染によるエピジェネティック変化をコントロールできれば、疾患発症の予防に役立つ可能性がある。また、本年度得られた成果の中から、治療あるいは予防法に役立つものがあるので、その成果をさらに深めていくこと事が重要である。培養細胞と臨床材料を用いた解析に加えて、疾患の発症解析には動物モデル系が重要である。今後モデル系の開発にも取り組み個体レベルでの疾患解析にも取り組む必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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