文献情報
文献番号
201226016A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV母子感染の疫学調査と予防対策および女性・小児感染者支援に関する研究
課題番号
H24-エイズ-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
塚原 優己(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期センター産科)
研究分担者(所属機関)
- 喜多 恒和(奈良県立奈良病院 周産期母子医療センター)
- 外川 正生(大阪市立総合医療センター 小児総合診療科・小児救急科)
- 吉野 直人(岩手医科大学 微生物学講座)
- 明城 光三(国立病院機構仙台医療センター 情報管理・産婦人科)
- 大島 教子(獨協医科大学 産科婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
25,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国のHIV感染妊娠症例の掌握、予防対策の充実とその周知徹底による母子感染の完全阻止、HIV感染妊婦・出生児の支援体制の整備と、HIV感染女性及び出生児のQOL向上、国民の健康福祉の増進への貢献。
研究方法
吉野班;①産婦人科病院の妊婦HIV検査実施率とHIV感染妊婦の診療経験等。②小児科病院の感染妊婦より出生した児の診療経験。③産婦人科診療所の妊婦HIV検査実施率とHIV感染妊婦の診療経験。
喜多班:①統合データベースに新規報告症例を追加 (外川班と共同)。②HIV感染妊婦の診療経験ありの施設からHIV感染妊婦の臨床情報集積。③HIV感染判明後の妊娠転帰について解析。
外川班:①喜多班①に同じ。②HIV感染妊婦より出生した児の診療経験ありの施設から母児の臨床情報集積。③妊婦・新生児に投与された抗ウイルス薬の影響に関する長期予後調査。④告知支援パンフレットについてのアンケート。⑤女性HIV陽性者に必要な情報・支援策の検討。
塚原班:①「HIV母子感染予防対策マニュアル」改訂に向け母子感染に関わるHIV診療の情報収集。②解説冊子類の改訂。③妊婦HIVスクリーニング検査偽陽性調査 (大島班と共同)。
明城班:①分娩取扱い拠点病院と総合・地域周産期母子医療センターの感染妊婦受け入れ実績と医療連携実態を調査。
大島班:①「妊婦HIV検査栃木方式」の実施状況と問題点調査。HIVスクリーニング疑陽性とHBVキャリア妊婦、出生児フォロー調査。②伝搬性遅発性疾患の母子感染予防対策の有効性検証。③塚原班③に同じ。
喜多班:①統合データベースに新規報告症例を追加 (外川班と共同)。②HIV感染妊婦の診療経験ありの施設からHIV感染妊婦の臨床情報集積。③HIV感染判明後の妊娠転帰について解析。
外川班:①喜多班①に同じ。②HIV感染妊婦より出生した児の診療経験ありの施設から母児の臨床情報集積。③妊婦・新生児に投与された抗ウイルス薬の影響に関する長期予後調査。④告知支援パンフレットについてのアンケート。⑤女性HIV陽性者に必要な情報・支援策の検討。
塚原班:①「HIV母子感染予防対策マニュアル」改訂に向け母子感染に関わるHIV診療の情報収集。②解説冊子類の改訂。③妊婦HIVスクリーニング検査偽陽性調査 (大島班と共同)。
明城班:①分娩取扱い拠点病院と総合・地域周産期母子医療センターの感染妊婦受け入れ実績と医療連携実態を調査。
大島班:①「妊婦HIV検査栃木方式」の実施状況と問題点調査。HIVスクリーニング疑陽性とHBVキャリア妊婦、出生児フォロー調査。②伝搬性遅発性疾患の母子感染予防対策の有効性検証。③塚原班③に同じ。
結果と考察
吉野班:①産婦人科病院; HIV感染妊娠はのべ43症例(前年度比1例減)。妊婦HIV検査実施率は全国平均99.9%(前年比0.6%増)。②小児科病院; HIV感染妊婦より出生した症例数はのべ26症例(前年度比1例増)。③産婦人科診療所;平成21年8月~3年間のHIV感染妊娠のべ10症例、平成21年7月以前の未報告例のべ22例。妊婦HIV検査実施率全国平均は99.5%(平成21年度比1.9%増)。
喜多班:①産婦人科小児科統合データベース;平成23年12月までの妊娠転帰判明HIV感染妊娠は777例、出生児数は518児。特徴は、A.年間約30例以上で変動なし。B.東京,千葉,愛知,神奈川,大阪など大都市圏に多い。C.母子感染は21世紀以降散発的。D.HAART+経腟分娩症例は新規症例なし。E,約半数が日本国籍。最近5年間の特徴は、産科適応の緊急帝切増加、ほぼ全例拠点病院で管理。②産婦人科二次調査報告数は67例(平成23年以前の妊娠転帰7例,平成24年妊娠転帰32例,妊娠中6例,既報告18例,転帰不明4例)。③この5年間で分娩例の比率は、妊娠後HIV感染判明例88.7%、感染判明妊娠の次の妊娠73.4%、その次以降の妊娠52.4%。
外川班:①前掲。②小児科二次調査報告数は本年度10例と未報告6例の計16例(関東甲信越10例,東海1例,近畿4例,外国1例)。母子感染例なし。母親国籍は日本10例,東南アジア3例,アフリカ1例,不明2例。妊婦抗ウイルス薬投与状況は妊娠前から8例,妊娠中開始6例。分娩様式は予定帝切12例,緊急帝切3例,不明1例。全例母乳を禁止し新生児に抗ウイルス薬投与。観察期間内(1-12ヵ月)に精神運動発達異常やミオパチー、高乳酸血症、突然死などの報告なし。③児の長期予後調査を計画中。④告知支援パンフレットは総論的ヒントを提供。⑤陽性女性が医療従事者と協力して情報をまとめ発信することは、「つながり」を感じ必要な情報を得る良い機会。
塚原班:①「HIV母子感染予防対策マニュアル」改訂に向けた検討。②「第19回AIDS文化フォーラムin横浜」で市民公開講座開催。第26回日本エイズ学会学術集会でセミナー開催。HIV検査解説リーフレットを改訂し全国の日本産婦人科医会会員に紹介。③後掲。
明城班: 分娩取扱いエイズ拠点病院と総合周産期母子医療センターの多くは重複していたが、北海道,北陸,四国は100%、近畿40%、九州66.7%と地域差が認められた。
大島班:①多数の検査会社の「妊婦HIVスクリーニング栃木方式」一斉導入には制約がある。②栃木県内でHIVスクリーニング疑陽性の頻度、HBVキャリア妊婦の頻度、出生児のフォロー状況を調査中。③エイズ拠点病院と一般産科施設を対象に、スクリーニング偽陽性の実態とスクリーニング陽性妊婦への対応の問題点を再調査中。
喜多班:①産婦人科小児科統合データベース;平成23年12月までの妊娠転帰判明HIV感染妊娠は777例、出生児数は518児。特徴は、A.年間約30例以上で変動なし。B.東京,千葉,愛知,神奈川,大阪など大都市圏に多い。C.母子感染は21世紀以降散発的。D.HAART+経腟分娩症例は新規症例なし。E,約半数が日本国籍。最近5年間の特徴は、産科適応の緊急帝切増加、ほぼ全例拠点病院で管理。②産婦人科二次調査報告数は67例(平成23年以前の妊娠転帰7例,平成24年妊娠転帰32例,妊娠中6例,既報告18例,転帰不明4例)。③この5年間で分娩例の比率は、妊娠後HIV感染判明例88.7%、感染判明妊娠の次の妊娠73.4%、その次以降の妊娠52.4%。
外川班:①前掲。②小児科二次調査報告数は本年度10例と未報告6例の計16例(関東甲信越10例,東海1例,近畿4例,外国1例)。母子感染例なし。母親国籍は日本10例,東南アジア3例,アフリカ1例,不明2例。妊婦抗ウイルス薬投与状況は妊娠前から8例,妊娠中開始6例。分娩様式は予定帝切12例,緊急帝切3例,不明1例。全例母乳を禁止し新生児に抗ウイルス薬投与。観察期間内(1-12ヵ月)に精神運動発達異常やミオパチー、高乳酸血症、突然死などの報告なし。③児の長期予後調査を計画中。④告知支援パンフレットは総論的ヒントを提供。⑤陽性女性が医療従事者と協力して情報をまとめ発信することは、「つながり」を感じ必要な情報を得る良い機会。
塚原班:①「HIV母子感染予防対策マニュアル」改訂に向けた検討。②「第19回AIDS文化フォーラムin横浜」で市民公開講座開催。第26回日本エイズ学会学術集会でセミナー開催。HIV検査解説リーフレットを改訂し全国の日本産婦人科医会会員に紹介。③後掲。
明城班: 分娩取扱いエイズ拠点病院と総合周産期母子医療センターの多くは重複していたが、北海道,北陸,四国は100%、近畿40%、九州66.7%と地域差が認められた。
大島班:①多数の検査会社の「妊婦HIVスクリーニング栃木方式」一斉導入には制約がある。②栃木県内でHIVスクリーニング疑陽性の頻度、HBVキャリア妊婦の頻度、出生児のフォロー状況を調査中。③エイズ拠点病院と一般産科施設を対象に、スクリーニング偽陽性の実態とスクリーニング陽性妊婦への対応の問題点を再調査中。
結論
わが国の妊婦HIV検査実施率はほぼ100%。HIV感染妊娠・HIV母子感染の発生動向に大きな変化はない。抗ウイルス薬による重篤な児の異常を示唆する報告もない。国民のHIV感染に対する関心・知識の更なる高揚のため、積極的な普及啓発活動が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2014-05-26
更新日
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