多施設共同研究を通じた新規治療戦略作成に関する研究

文献情報

文献番号
201226001A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設共同研究を通じた新規治療戦略作成に関する研究
課題番号
H22-エイズ-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 田沼 順子((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
11,193,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ET Study、EACH cohort、SPARE試験の3つの医師主導による多施設共同臨床研究からなる。これらの臨床研究を通じて、HIV感染症に対する新しい治療法を日本から世界に向け発信することを目的としている。
研究方法
ET Studyは、日本人を対象とし、アタザナビルを固定、エプジコムとツルバタの有効性、安全性を無作為割付けで比較する多施設共同臨床試験である。EACH cohortは、急性期の病状進行を国内8施設で解析する多施設共同のコホート研究である。SPARE試験LPV/r+TVDで治療している患者を組み入れ、くじ引きにて、同じ治療継続群とDRV/r+RALのNRTI spare郡に割付け、腎機能の経過を観察することを主目的とした多施設共同臨床試験である。
結果と考察
ET studyでは、H23年度報告でも記したように、予定症例数の240例に到達できず、2群間の非劣性を証明することはできなかったが、最終的に109例(EPZ群54例、TVD群55例)の組み入れを行い、96週におけるデータの固定を行った。Kaplan-Meier解析による96 週までの治療失敗までの期間は両郡で有意差はなかった (HR, 2.09; 95% CI, 0.72-6.13; p=0.178)。96週におけるintent-to-treat (ITT)解析によるウイルス学的効果の比較において72.2% (EPZ群) と78.2% (TVD群) の有効率を示した。G3もしくは4の重篤な有害事象発現まで、および治療変更までの期間に関する比較においても両郡に差はなかった (有害事象: HR 0.66; 95% CI, 0.25-1.75, p=0.407) (治療変更: HR 1.03; 95% CI, 0.33-3.19, p=0.964)。これらの結果より、日本人においてはATVをkey drugとした場合EPZもTVDも初回治療として有効と考えられた。この結果は、論文としてまとめられた。
EACH コホート研究では、国内4施設(国立国際医療研究センター、九州医療センター、北海道大学病院、順天堂大学)に韓国ヨンセイ大学(ソウル)を加えた5施設において早期HIV感染者コホートを立ち上げた。2012年9月に国内4施設の第1回のデータ収集を終え、計253名の登録を得た。ACHコホート研究などコホート研究では、長期観察期間が必要であり重要である。今後もコホートの拡大に努めるとともに、データ利用規程や運営組織を盤石にしてゆく必要がある。
SPARE試験は、各施設において倫理委員会の承認を得たのちH23年2月に組み入れ開始、組み入れた59例(治療継続群30例、NRTI SPARE群29例)全例に関しH24年12月末で48週までの経過観察を行った。最終データ固定はまだであるが、現在までのデータでは、48週まで到達できたのは継続群29例(97%)、SPARE群24例(86%)であった。主要評価項目である48週時点における10%以上腎機能が改善した患者比率に関しては、事前の予想に反し、eGFRにて継続群10%、SPARE群17%(P=0.688)、CrClでみても継続群10%、SPARE群25%(P=0.271)と両郡に有意差を認めなかった。副次評価項目であるウイルス学的効果に関しては、per protocol解析にてともに100%とSPARE群にても治療効果が維持されることが明らかとなった。尿細管マーカーなどの解析では、SPARE群で微量アルブミン尿とβ-2ミクログロブリン尿の有意な改善をみたが、リン再吸収率とNAGに関しては、有意差はなかった。米国におけるシングルアームのパイロット試験において、初回治療ではDRV+RALは、予想を下回る治療効果であったが、我々のSPARE試験は安定期の患者に対するスイッチ試験であり、新しい治療戦略を提示しているといえる。
結論
3つの多施設共同研究は、予定通り実施できた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201226001B
報告書区分
総合
研究課題名
多施設共同研究を通じた新規治療戦略作成に関する研究
課題番号
H22-エイズ-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
  • 田沼 順子((独)国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ET Study、EACH cohort、SPARE試験の3つの医師主導による多施設共同臨床研究からなる。これらの臨床研究を通じて、HIV感染症に対する新しい治療法を日本から世界に向け発信することを目的としている。
研究方法
ET試験:アタザナビルを固定し、エプジコム(EPZ)とツルバダ(TVD)をランダム割り付けする多施設共同RCTである。96週までの治療効果、安全性の解析を行い論文化する。
急性期患者の病状の進行解析研究(EACH コホート研究):病状の進行が早まっているという仮説を検証するため、田沼分担研究者が、多施設および多国間で利用できるデータベースを完成させる。
新しい治療法を目指した多施設共同RCT(SPARE 試験):この試験は、LPV/r+TVDで治療している患者を組み入れ、くじ引きにて、同じ治療継続群とDRV/r+RALのNRTI spare群に割り付け、腎機能の経過を観察することを主目的とした多施設共同のRCTである。副次目的としてNRTI spareによる治療成功率や、脂質代謝異常の経過なども検討する。主目的を腎機能の改善とポイントを絞ることにより、症例数は1群27例の合計54例で有意差が出せる予定である。
結果と考察
ET studyでは、予定症例数の240例に到達できず、2群間の非劣性を証明することはできなかったが、最終的に109例(EPZ群54例、TVD群55例)の組み入れを行い、96週におけるデータの固定を行った。Kaplan-Meier解析による96 週までの治療失敗までの期間は両郡で有意差はなかった(HR, 2.09; 95% CI, 0.72-6.13; p=0.178)。96週におけるintent-to-treat(ITT)解析によるウイルス学的効果の比較において72.2% (EPZ群)と78.2% (TVD群)の有効率を示した。G3もしくは4の重篤な有害事象発現まで、および治療変更までの期間に関する比較においても両郡に差はなかった(有害事象: HR 0.66; 95% CI, 0.25-1.75, p=0.407) (治療変更: HR 1.03; 95% CI, 0.33-3.19, p=0.964)。これらの結果より、日本人においてはATVをkey drugとした場合EPZもTVDも初回治療として有効と考えられた。この結果は、論文としてまとめられた。
EACH コホート研究では、国内4施設(国立国際医療研究センター、九州医療センター、北海道大学病院、順天堂大学)に韓国ヨンセイ大学(ソウル)を加えた5施設において早期HIV感染者コホートを立ち上げた。2012年9月に国内4施設の第1回のデータ収集を終え、計253名の登録を得た。ACHコホート研究などコホート研究では、長期観察期間が必要であり重要である。今後もコホートの拡大に努めるとともに、データ利用規程や運営組織を盤石にしてゆく必要がある。
SPARE試験は、各施設において倫理委員会の承認を得たのちH23年2月に組み入れ開始、組み入れた59例(治療継続群30例、NRTI SPARE群29例)全例に関しH24年12月末で48週までの経過観察を行った。最終データ固定はまだであるが、現在までのデータでは、48週まで到達できたのは継続群29例(97%)、SPARE群24例(86%)であった。主要評価項目である48週時点における10%以上腎機能が改善した患者比率に関しては、事前の予想に反し、eGFRにて継続群10%、SPARE群17%(P=0.688)、CrClでみても継続群10%、SPARE群25%(P=0.271)と両郡に有意差を認めなかった。副次評価項目であるウイルス学的効果に関しては、per protocol解析にてともに100%とSPARE群にても治療効果が維持されることが明らかとなった。尿細管マーカーなどの解析では、SPARE群で微量アルブミン尿とβ-2ミクログロブリン尿の有意な改善をみたが、リン再吸収率とNAGに関しては、有意差はなかった。米国におけるシングルアームのパイロット試験において、初回治療ではDRV+RALは、予想を下回る治療効果であったが、我々のSPARE試験は安定期の患者に対するスイッチ試験であり、新しい治療戦略を提示しているといえる。
結論
3つの多施設共同研究は、予定通り実施できた。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201226001C

収支報告書

文献番号
201226001Z