病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究

文献情報

文献番号
201225063A
報告書区分
総括
研究課題名
病原体及び毒素の管理システムおよび評価に関する総括的な研究
課題番号
H24-新興-一般-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 和良(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 宮崎 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
  • 向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
  • 林昌 宏(国立感染症研究所 ウイルス第一部 第三室)
  • 福士 秀悦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 前田 秋彦(京都産業大学 総合生命科学部 動物生命医科学科)
  • 西村 秀一(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 臨床研究部 ウイルスセンター)
  • 加藤 康幸(国立国際医療研究センター 国際疾病センター)
  • 奥谷 晶子(国立感染症研究所 獣医科学部)
  • 篠原 克明(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
  • 高田 礼人(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 佐多 徹太郎(富山県衛生研究所)
  • 安田 二朗(長崎大学熱帯医学研究所 新興感染症学分野()
  • 駒野 淳(大阪府立公衆衛生研究所感染症部ウイルス課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
42,546,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究班では,わが国における科学的エビデンスに基づき,効率的な病原体管理システムを構築するための基盤を整備し,また種々の病原体の性質をバイオリスクの観点に立脚して評価し,バイオセーフティ及びセキュリティの向上に貢献することを目的とした.
研究方法
病原体の安全保管とトレーサビリティ管理及び大量サンプル処理などを効率的に行うことを目的とした,病原体の登録,保管,輸送,廃棄における一括管理システム(ICBSシステム)を構築してきた(H21-23年度同研究補助金「病原体等の登録・保管・輸送・廃棄に関する一括管理システクの開発と検証(研究代表者篠原克明)」.本年度は,システムをさらに改良(改良型ICBSシステム)し,新たに物理的ロックシステムとの連携を行い,より汎用性の高い総合システムを構築,再配備した.また,ウイルス,細菌,真菌,寄生虫,節足媒介感染症,人獣共通感染症,新興感染症,感染症患者の治療,新興感染症等においてリスク分類されていない病原を調査し,その性質を解析・リスク分類した.また,特定の病原体のリスク評価に必要な基礎研究を実施し,リスク評価を行うためのシステムを整備するための活動を開始した.また,バイオセーフティ・バイオセキュリティ,デュアルユースリサーチに関する議論に関する国際的動向について調査・解析した.
結果と考察
 アクセスコントロールの強化と効率化を両立させる目的で,これまでに確立できた個別サンプルへのアクセス権限管理と履歴取得の他に,実際の保管庫の開閉記録などを一元的に本システムに集約し,総合的に管理する事を試み,また,即応化とコスト軽減のため,市販の機器(入退室用のカードリーダ,鍵管理ボックス,保管庫開閉感知装置など)を応用し,本システムへアクセスログを転送,データベース上に集約させるモデルを構築した.さらに,それらのログを時系列で解析する事により,アクセスが正常に行われたか否かを,検知するシステム構想を検討した.今後,試験運用を行い,有用性を検証する必要がある.
 新興感染症の原因となる病原体,ヒトに病原性のある新規寄生虫であるKudoa septempunctata,新興真菌症の原因であるPenicillium marneffeiとCryptococcus gattii,非結核性抗酸菌,新興再興人獣共通感染症病原体,等を性状解析し,バイオリスクの側面からその性質を評価した.ブルーリ潰瘍の原因菌Mycobacterium. ulceransの近縁菌M. shinshuenseが日本においても難治性潰瘍の原因として同定され,日本のみならず,オーストラリア等にも発見され,皮膚科感染症として認識されることが明らかにされた.神経ウイルス感染症関連病原体,ウイルス性出血熱の原因となる新興ウイルス,アルボウイルス感染症109種類,ウイルス性出血熱に分類されるウイルス,これらのバイオセーフティに関するリスクも評価した.近年ザンビアで発生したウイルス性出血熱ウイルス(ルジョウイルス)および中国で同定された重症熱性血小板減少症候群ウイルス,最近発見され新型コロナウイルスのバイオセーフティ上のリスクを解析した.世界的にバイオセーフティとバイオセキュリティを統合してバイオリスク管理を実施していくという考えが普及してきていた.欧州標準化委員会のバイオリスク管理の標準化と,その実践に重要な働きを担うバイオセーフティ専門家に求められる適格性の標準化も行われている.バイオセーフティ専門家の認定について,いくつかの機関で既に実施または検討中であった.先進国のみならず開発途上国においても,バイオセーフティ及びバイオセキュリティに関する法律,ガイドラインなどが急速に整備され,施設・設備も充実されてきていることが再確認された.デュアルユースリサーチに関して調査した.微生物関連研究には一般社会の利益だけではなく,テロリストにその情報が利用される危険性も含まれる危険性があるとされ,社会的に大きな負の影響を及ぼすのではないかと指摘された.研究で作製された組換え病原体のバイオセーフティレベルはどうあるべきなのか,どのバイオセーフティレベルの実験室で研究がなされるべきなのか,議論を要すると考えられた.
結論
本改良型ICBSシステムの試験運用の本格的な実用レベルに到達したことを確認した. バイオセーフティレベルが設定されておらず,かつ,ヒトに病原性のある病原体に関するリスク評価を実施した.また,バイオセーフティ・バイオセキュリティ・デュアルユースリサーチに関するバイオセーフティ・バイオセキュリティの観点に立脚した議論の必要性が認められた.

公開日・更新日

公開日
2013-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225063Z