国際的なバイオリスク管理の基準に基づく病原体取扱いと管理のモデル総合システムの構築と検証に関する研究

文献情報

文献番号
201225031A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的なバイオリスク管理の基準に基づく病原体取扱いと管理のモデル総合システムの構築と検証に関する研究
課題番号
H23-新興-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 和良(国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室)
研究分担者(所属機関)
  • 佐多 徹太郎(富山衛生研究所)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所 抗酸菌レファレンス部)
  • 清水 博之(国立感染症研究所 ウイルス2部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所 ウイルス1部)
  • 重松 美加(国立感染症研究所 感染症情報センター)
  • 藤本 秀士(九州大学医学研究院 保健学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
24,015,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究はWHOが参考としたCWA15793バイオリスク管理基準、改訂された欧米の指針の比較調査と分析を実施し、バイオリスク委員会の役割の設定、試料管理を含むバイオリスク管理(BM)の管理運用の仕組みの構築、系統的バイオリスク評価の導入、教育研修プログラム導入の総合モデルを設計し、BM導入前後での研究活動における実効性を検証し、管理基準の効果を具体的な導入前後の変化でしめすことから、病原体等取扱い施設のバイオリスク管理体制の確立に有用な指標を提供する。感染症法に期待されている病原体等の適正な取扱いについての具体像の、研究者および関係施設への浸透に貢献することを目的としている。
研究方法
 CWA15793のBM基準と改訂された欧米の指針を分析して、BM総合モデルを設計する。機器配置等のデザイン、研究者の動線、マニュアルやフロー図などの準備、教育研修プログラム、危機対応手順、good microbial practiceの励行、健康監視などの、BM基準導入の前後の研究活動における影響を検討できる様にデザインする。効率的な管理基準の国内普及と定着に向けた提言、国内の用途目的に合わせた実験室設計の提案、病原体取扱い施設や指導者の認証の仕組みについての国際的な仕組み設計への協力を研究成果に基づき行う。教育成果の分析、プログラムへ組み入れる実証データのための実験なども分担する。
結果と考察
 初年度は実験室、実験棟単位でBMの効果実験の計画を作成した。BMの国際基準、WHOチェックリスト、ISO9001検査項目等を参考に、前後の評価基準の検討を行った。二年次には、1)大学院学生教育を行う実験室の現状を把握し、問題点を明らかにし、既存施設から可能な配置の変更、運用上の変更などの改良、2)CWA15793の国際基準に基づく専門家の認定の指針と、同基準導入のためのガイダンスの作成に国際的に協力、3)演習用3Dプラットフォーム改良後、演習用実験室事故対応プログラムを作成し動作性確認試験を実施、4)厚生労働省による地方衛生研究所でのドライアイス爆発事故後の梱包と発送の安全性強化の研修及び危険物輸送同乗者講習への協力、5)大学及び地方衛生研究所における研修成果の定着に関する検討、6)地方衛生研究所でのヒヤリハット事例の情報共有の検討、7)地方衛生研究所の病原体の取り扱い現状に関する経過調査と分析、8)ポリオ研修のための提供資料づくり、9)病原体輸送容器の消毒滅菌に対する耐性実験、10)同内圧への耐性実験、11)効果的な高圧蒸気滅菌方法、12)病原体管理のプログラムの作成と実用についての検討を実施した。
結論
 病原体等を取扱う際のBMの強化は「感染事故」及びテロ目的の盗難等の「事件」を防止する為に重要であるが、世界的にも国際基準の順守による効果の検証報告例は未だ無い。国内では、感染症法に記載のある設備と機器の要件以外のBMの基準を導入している施設、系統的リスク評価の実施、バイオリスク管理の実効性の検討等のいずれも報告がない。平成17年度以降バイオセーフティ強化に必要な管理体制の提案、安全な病原体輸送のための知識とバイオセキュリティ概念の普及、基盤強化に必要な人材育成のための教材作成、バイオリスク評価支援ツールの作成、教育訓練の研修プログラムの提案を行った。今年度は研修手法の変更が記憶の持続へ有効である事を示し、物品管理の強化対策を検討した。科学的データの無かったBM遵守事項を検証し、危機管理の為の情報共有の仕組みとしてヒヤリハット事例の収集と活用を検討した。施設のルールや国内の指針の改定無しにはBMの「やり方」は変更されにくく、管理方法は人的又は経済的初期投資無しでは変更ができないため現実への移行がむずかしい。施設管理者が安全の提供と研究や業務の効率について再考する資料を粘り強く提供して行く。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201225031Z