慢性期脳卒中患者における重度上肢機能障害に対する革新的治療法の実 用化研究:ランダム化比較試験によるブレーンマシンインターフェース(BMI)リハビリテーションの効果の検討

文献情報

文献番号
201224115A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性期脳卒中患者における重度上肢機能障害に対する革新的治療法の実 用化研究:ランダム化比較試験によるブレーンマシンインターフェース(BMI)リハビリテーションの効果の検討
課題番号
H24-神経・筋-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 俊之(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 里宇明元(慶應義塾大学 医学部)
  • 牛場潤一(慶應義塾大学 理工学部)
  • 新藤恵一郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 補永 薫(東京湾岸リハビリテーション病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中患者の総患者数は280万人であり、平成22年国民生活基礎調査の概況によると要介護者の介護が必要となった原因のトップは脳血管障害(21.5%)であり、脳卒中後遺症は医療、経済に大きな影響を与えている。特に脳卒中後の片麻痺による上肢機能障害の回復は困難であり、いわゆる回復期のリハビリにおいても実用レベルの上肢機能を獲得できるのは全体の30%程度とされており(藤原ら,リハ医学 2006)、日常生活における能力低下に上肢機能障害は重大な影響を与えている。しかしながら、上肢機能障害特に手指機能障害に対する効果的なリハビリは殆どないのが現状である(Langhorne P et al, Lancet Neurol 2009)。我々は脳科学研究戦略推進プログラムにおいて、運動イメージを非侵襲的に脳波により感知し、ロボット装具を操作する画期的なブレーンマシーンインターフェース(BMI)リハビリシステムを開発した。本システムは簡便な脳波システムにより、実験室での限られた使用ではなく、一般の訓練室での使用が可能である。すでに30例以上の脳卒中慢性期重度上肢機能障害に用い、運動機能の改善を認めている。世界的にも未だ少数例でのケース報告のみであり、BMIリハビリに関する無作為化対照比較試験(RCT)は行われていない。本研究ではBMIによるロボット装具による訓練の重度上肢機能障害への効果を明らかとするためにRCTを行い、世界に先駆けてBMIリハビリの効果を明らかにするものである。
研究方法
対象は脳卒中後片麻痺患者とし、参加基準は1)発症後6か月以上経過し、在宅復帰をして、歩行、ADLは自立、2)上肢機能障害が残存し、手は胸の高さまで挙がるが、手指伸展筋群の筋活動を認めない、認知機能障害がなくMini Mental State Examination(MMSE)24点以上とする。研究デザインはRCTとし、BMI群では、手指伸展運動イメージ時の運動野における事象関連脱同期を用いて、運動イメージを感知することにより電動ロボット装具を操作してペグの取り外しを行うBMI訓練を40分間、10日間行う。対照群では、同じロボット装具ならびに脳波記録システムを用いてペグの取り外しを行うが、事象関連脱同期をトリガーとせずに行う。クロスオーバーデザインを用い、介入、対照の順序ランダム化して割付を行う。
(倫理面への配慮)
本研究はヘルシンキ宣言ならびに臨床研究に関する倫理指針を遵守する。取り込み基準を満たした患者に対しては、リハビリ科の外来で、当研究についての説明を行い、参加の有無は患者本人が選択する。
参加を選択した場合には、説明文書に従い詳細な説明をもう一度行い、同意を得た段階で、プログラムを開始する。本研究は慶應義塾大学医学部倫理審査委員会にて承認済み(課題番号20120068)であり、UMIN臨床試験登録済み(UMIN試験ID:UMIN000008468)である。
なおBMI 訓練ならびに対照訓練のどちらも国家資格を有する作業療法士が行うこととする。
結果と考察
結果:訓練室で簡便に使用可能なBMIシステムが完成した。
今年度8例のエントリーがあり、すでに1例で試験を終了した。現在試験継続中であり、エントリー患者も募集中である。
考察:本年度研究により、BMIシステムが確立され、当該施設における倫理委員会の承認も得られ、UMIN臨床試験登録も完了し、試験が開始され、順調に参加者のエントリーが進んでいる。次年度にはさらなるエントリー患者の増加が見込まれ、研究計画通りに研究は遂行されるものと考えられる。
BMIリハビリにより上肢機能障害の改善がもたらせれば、要介護者の介護量軽減が可能となるのみならず、長期療養者ならびに要介護者のQOLの向上に結びつくものと思われる。また世界に先駆けてBMIリハビリの効果を明らかとすることはまさに「日本発の革新的医療機器の開発と実用化」につながり、この分野で世界をリードすることが可能となる。また、本治療法の効果が実証され、広く実用化が図られれば、マンパワーを必要としない画期的なリハビリ治療手法として病院のみならず、通所介護施設などセラピストが不足している現場においても有効なリハビリ手法として使用が可能となる。これにより介護保険のみでは十分なリハビリを受けることが困難であった長期療養者、在宅患者においても効果的なリハビリを導入することが可能となる見込みである。

結論
当該施設における倫理審査承認終了し、参加者エントリー開始し、現在研究試行中である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224115Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
30,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,890,631円
人件費・謝金 1,427,564円
旅費 565,770円
その他 217,625円
間接経費 6,900,000円
合計 30,001,590円

備考

備考
物品費の超過分の差額は自己資金1590円が出所となる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-