東日本大震災における精神疾患の実態についての疫学的調査と効果的な介入方法の開発についての研究

文献情報

文献番号
201224097A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災における精神疾患の実態についての疫学的調査と効果的な介入方法の開発についての研究
課題番号
H24-精神-一般(復興)-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 洋夫(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 金 吉晴(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター)
  • 富田博秋(東北大学 災害科学国際研究所)
  • 酒井明夫(岩手医科大学 医学部)
  • 丹羽真一(福島県立医科大学 会津医療センター準備室)
  • 大野 裕(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター)
  • 松本和紀(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 柿崎真沙子(東北大学大学院 医学系研究科)
  • 加藤 寛(ひょうご震災記念21世紀研究機構 兵庫県こころのケアセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大規模災害後は精神疾患が長期に増加することはよく知られている。平成23年3月11日に発生した東日本大震災後、うつ病、不安障害、アルコール関連障害、心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder, PTSD)の増加が懸念されており、本研究の第一の目的は、精神保健医療領域での支援を行ってきた研究者によって、精神疾患の発生や支援の実態を疫学的に検証することである。また、災害後の精神保健医療の体制構築は、地域や災害の特性を考慮した人材確保・養成、ネットワーク作り、精神疾患の予防と早期発見に向けたハイリスク者ケアから集団アプローチまで包括的に対応する必要があるが、未だ明確な方法論はない。そこで、本研究の第二の目的として、災害時に役立つ支援方法について包括的に研究することである。
研究方法
精神疾患の発生と支援の実態について疫学調査を行い、災害後の精神疾患の発症状況やこれに関わる環境/心理的因子を明らかにする。岩手と宮城では震災後の精神疾患の予防と早期介入の視点で、急性期対応の問題点と中長期的なこころのケアの地域体制作りの方法論を検討し、時系列的に必要な事業、人材、ネットワーク等を明示する。福島では放射能汚染への不安やストレスと精神疾患発症との関連や受診動向を調べる。さらに、被災地で役立つ認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)的支援の普及を図り、災害後増加する亜症候性の抑うつに対してのCBTに基づく心理支援を実施し効果を検討する。
結果と考察
平成24年度の成果のうち第一は、精神保健医療領域における被災3県での影響と急性期対応の実態を調査し問題点・改善点を抽出し、さらにその後の中長期支援体制の構築過程のまとめを行った。また、自治体や保健所と連携し被災地住民の疫学調査および被災地の行政や医療機関など職域における支援者の精神的健康調査を行政機関等との協力を得て開始した。第二の成果である災害関連精神疾患への介入方法の開発に関しては、うつ病を中心とした症状形成における環境要因や心理要因について前述の住民調査や支援者の調査から、データが順調に蓄積されてきており、今後詳細な分析が開始される。また、精神疾患の予防と早期介入を目的に、うつ病のみならず様々な精神疾患の初期徴候となる亜症候性の抑うつ症状をもつ被災者向けの自己学習冊子を作成した。さらに、被災地においてCBTを用いた支援についての研究会などを開催し、簡易型CBTの普及に向けた人材育成に着手した。被災地向けのCBTに基づいた支援方法の開発やマニュアル作成の準備を行い実施者に対する研修等を行ってきており、被災地で予備的施行も開始された。
結論
以上の本研究の成果は、第一に今回の被災地での精神保健医療領域におけるシステム構築と、それに基づく支援の提供に役立てることができ、さらには今後の地域保健医療福祉事業における災害対策の計画立案、準備に大きく寄与する。第二に、うつ病の発症におけるトラウマや悲嘆の影響を含めた環境因子を明らかにすることで、うつ病という広いカテゴリーをより臨床に即して対応するための方法論の開発に寄与できる。また、うつ病の予防に向けた簡易型CBTが普及することで、早期段階のうつ病に有効な心理的治療が確立するとともに、うつ病予防の方法論が明確になりさらには自殺予防の施策にも寄与することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224097Z