成人期以降の発達障害者の相談支援・居住空間・余暇に関する現状把握と生活適応に関する支援についての研究

文献情報

文献番号
201224091A
報告書区分
総括
研究課題名
成人期以降の発達障害者の相談支援・居住空間・余暇に関する現状把握と生活適応に関する支援についての研究
課題番号
H24-精神-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 肥後 祥治(鹿児島大学 教育学部)
  • 岸川 朋子(特定非営利法人PDDサポートセンターグリーンフォーレストウイングネクスト)
  • 鈴木 勝昭(浜松医科大学 精神医学講座)
  • 萩原 拓(北海道教育大学旭川校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人期の発達障害者、特に、成人期になってから診断を受けた発達障害者の地域生活支援は十分ではない。発達障害者と向き合う福祉現場にあっては、高度な支援技術や専門的知識を有した人員体制の確保が必要となるのだが、その受け皿整備がほとんど進んでいないのが現状である。自閉症スペクトラム障害 (以下、ASD) の成人は、社会性の障害から他者との共同生活は難しいことが少なくない。感覚過敏性の問題や興味やこだわりなどから、自分自身の居住空間を求める人が多い。しかし、社会性障害による一般常識の不足に加えて、こだわりや不安、不器用などで、独り暮らしにおける困難は大きい。余暇支援は、地域の中で誰とつながって暮らしていくのかを考える上で重要な視点だが、十分な実態把握も行われていない。どこで、どういうサポートを受け、誰とつながりながら地域生活をしていくのかという点に関して、十分に当事者たちのニーズを把握し、そうした実態把握に基づいて、実際の支援のあり方を提案し、障害者福祉サービス体系で(精神疾患合併などへの)予防的な支援のありようを明確にしていくことが本研究の目的である。
研究方法
成人期以降の発達障害者の日常生活における支援ニーズおよび精神的健康状態に関する実態調査研究では、成人期(18歳以降)の発達障害者を対象として、どのような日常生活を送っているのかの実態把握(余暇を含む)、どのような生活を送りたいと考えているかについての希望やニーズの把握、抑うつや不安などの精神的健康状態に関する実態把握を目的とした調査を実施した。
成人期の発達障害者に対する地域生活支援の実践における成果と課題に関する研究では、滋賀県と横浜市で実施している成人期の発達障害者に対する地域生活支援の取り組みを通して、その実践内容と成果および課題を分析した。
名古屋市での一人暮らしに対する支援ニーズ把握のための取組みに関する研究では、特定非営利活動法人アスペ・エルデの会における地域生活支援の取り組み(ライププランニングのプログラム、一人暮らし支援)を通して、その実践内容と成果および課題を分析した。
結果と考察
成人期以降の発達障害者の日常生活における支援ニーズおよび精神的健康状態に関する実態調査研究の結果、一人暮らしを希望する発達障害者への支援ニーズや精神医学的なサポートを受けられる制度の必要性が示唆された。成人期の発達障害者のための、一人暮らし支援を含む地域生活支援を充実させるために必要な支援ニーズや現状が明らかとなり、今後の支援施策への示唆が得られた。
成人期の発達障害者に対する地域生活支援の実践における成果と課題に関する研究の結果からは、支援者が取り組みやすい支援(記録の活用、スキル提供、スケジュール呈示)と定着しにくい支援(マニュアル化しにくい支援、本人に困り感があまりないものの支援)があることがあきらかとなり、さらに支援者に求められるものをまとめていく作業の必要性が示唆された。
名古屋市での一人暮らしに対する支援ニーズ把握のための取組みに関する研究の結果、発達障害のある成人は、生活に必要な一つひとつのスキルは身に付いていても、計画を立てて見通しを持って行動することの困難さがあること、一人暮らしの際に相談できる人を確保することの重要性などが示された。
結論
成人期の発達障害者の地域生活支援は十分ではない。本研究では、すでに成人期以降の発達障害者の生活支援や就労支援の取り組みを模索している横浜市と滋賀県、それに名古屋のNPO法人アスペ・エルデの会の3カ所での実際の取り組みの評価をしつつ、成人期の発達障害者の地域生活支援における支援ニーズや医療的ニーズを調査した。平成24年度の取り組みから、一人暮らし支援を行う上で、どのような点で支援が必要なのか、どのような部分はサポートの仕方次第で自ら適応することができるようになり、どのような部分が継続したサポート体制が必要なのかということへの示唆が得られた。これらの成果に基づき、制度としてどのようなことへどのような形でサポートを提供していくのかということをまとめ、現状ある福祉サービスのメニューに、新しい具体的かつ効果的なメニューを構築していくことの必要性が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224091Z