精神科救急医療における適切な治療法とその有効性等の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201224076A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科救急医療における適切な治療法とその有効性等の評価に関する研究
課題番号
H23-精神-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 弘人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 八田耕太郎(順天堂大学医学部附属練馬病院)
  • 杉山直也(公益財団法人復康会 沼津中央病院)
  • 奥村泰之(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会精神保健研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,545,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、わが国の精神科救急医療における最適な治療のあり方に関する研究を実施し、精神科救急医療における薬物療法と行動制限に関する診療ガイドライン等に反映させることを目的とする。薬物療法(八田研究分担者)では、高用量オランザピン(OLZ)と等価リスペリドン(RIS)の多施設共同評価者盲検ランダム化比較試験を実施し、①高用量の有効性の検証、②抗精神病薬の切替えと併用の有効性の検証を実施した。行動制限(杉山研究分担者)では、行動制限施行量に最も影響するといわれる人的資源の投入量との関連を調査した「人的資源投入量に関する研究」、海外で成果を上げている行動制限最小化手法であるコア戦略をわが国の臨床現場において検証する「行動制限最小化に関する研究」を実施した。さらに介入方法の原案であるコア戦略について具体的詳細を把握するため、全米州精神保健局長協議会(NASMHPD)が行う研修に参加した。強制治療(奥村研究分担者)では、統合失調症の初回入院患者における意思決定共有モデルの治療満足度への有効性を検討するため、文献展望と研究計画の立案を実施した。
研究方法
八田研究分担者は、①14病院に入院した統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害の患者を8週間観察した。ランダム割付は、薬剤の上限がRIS12mgまたはOLZ40mgの2群で、エンドポイントは治療中止やPANSS 50%改善率などである。なお入院時、RISまたはOLZを投与開始し、2週後の反応良好例(CGI<3)に関しては観察を継続した。②OLZ とRISに関する切替えと上乗せの有効性について、平成24年5月から症例登録を開始した。反応不良例(CGI>4)に関しては切替えあるいは併用のランダム割付けを実施し、さらに10週間観察した。杉山研究分担者は、「行動制限最小化に関する研究」において、日本精神科看護技術協会の協力を得て、米国で成果を上げている行動制限最小化手法をわが国の臨床環境にて実施可能な介入手法として提示し、各病棟(以下、介入病棟)で実践したうえ、介入中および介入前後の行動制限施行量、スタッフおよび退棟患者の認識調査を行い、各介入方法の有効性を検証した。「隔離室入室期間の人的資源投入量に関する調査」では、11精神科病院の急性期病棟医療チーム(医師・看護師・PSW)を対象とし、インタビュー形式でケアの内容や時間の聞き取りを実施した。米国における行動制限最小化研修および病院見学では、米国マサチューセッツ州において開催されたコア戦略の概念を踏まえた研修に参加し、病院見学を通し米国における行動制限最小化の取り組みを学んだ。奥村研究分担者は、文献展望と研究計画の立案を行い、25年度は精神科救急入院料病棟に入院した患者の中から、初回入院症例に対して中央登録方式により介入群と通常診療群に割り付けを実施する。
結果と考察
(八田研究分担者)高用量可としても、OLZ(n=22)とRIS(n=20)との間に治療中止に至る時間の差は認められなかった。ただし、症例数が統計学的検出力未満であったため結論的でない。平成24年10月末時点で登録症例は80例であり、必要症例数の半数のペースであったことから、継続的に症例登録を実施している。(杉山研究分担者)「行動制限最小化に関する研究」では、コア戦略に基づく14の介入手法を提案し、日本精神科看護技術協会行動制限最小化認定看護師を対象とした説明会を行い、全国25施設、40病棟からの協力医療機関としての登録があった。平成24年8月に介入前調査を行い、当該結果を中間報告会にて報告した。なお、本介入前調査では病棟機能ごとの特性が、行動制限施行量の特徴に反映される結果が得られた。「人的資源投入量に関する研究」では全国11病院で調査を実施し、非都市部の5病院において、人的資源投入量と隔離日数に逆相関がみられ、ケア密度が行動制限最小化に影響することが示唆された。米国研修では、2012年10月の2日間で研修が開催され、さらに病院見学が実施された。(奥村研究分担者)文献展望と研究計画を立案した。意思決定共有モデルは、治療満足度の向上に寄与し、治療アドヒアランスの向上や再入院率の低下に寄与することが期待できる。
結論
薬物療法や行動制限の最適化に必要な診療報酬等の施策等の提示が可能となる。とりわけ、精神科救急医療ガイドライン改定版(2014年版)を作成するためのエビデンスおよび現実的かつ良質で合理的な治療について実際の臨床現場へ反映できる他、学術団体が行う普及等により、全国的な医療の質の向上に資することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2013-04-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224076Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,500,000円
(2)補助金確定額
8,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,468,588円
人件費・謝金 2,917,991円
旅費 1,149,139円
その他 1,009,282円
間接経費 1,955,000円
合計 8,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-28
更新日
-