新しい精神科地域医療体制とその評価のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201224065A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい精神科地域医療体制とその評価のあり方に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
安西 信雄(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科大学大学院政策科学分野)
  • 伊藤 弘人(国立精神・神経医療研究センター)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医用センター)
  • 萱間 真美(聖路加看護大学)
  • 平川 博之(ひらかわクリニック)
  • 宮本 真巳(東京医科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 吉邨 善孝(済生会横浜市東部病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,630,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療法改正に伴う医療計画の策定が精神科地域医療体制の改善に資するよう、各方面から調査検討を行い、実際に運用可能な地域精神医療体制の具体像を作っていくこと、それらがうまく機能するための条件と適切なモニタ方法等を明らかにし、各都道府県が適切に医療計画を立案・実施できるよう支援するすることを目的として本研究を実施した。
研究方法
精神科救急、身体合併症、通院医療、訪問看護、行動制限最小化等とともに、地域連携クリティカルパスの調査、各都道府県が精神医療分野に係る事項を医療計画に記載する際の問題点の調査を実施した。
結果と考察
本年度の研究により、全国104カ所の精神科救急病棟に年間約308件の入院があり、平均48.6日で68.3%を自宅退院に結びつけていたが、地域格差が大きいことが示された。訪問看護ステーションでは52.6%で精神科訪問看護を実施していた。精神科診療所の調査では入院が必要な患者が入院するまで平均4日かかっていた。行動制限最小化と隔離の調査では、看護師の夜勤帯および日曜・祝日など看護者数が一時的に減少することと隔離開始が関連している可能性が示された。「精神科リエゾンチーム」の算定医療機関は平成24年7月には34施設に増加していた。本研究の一環として長野県東信地域で認知症に関するクリティカルパスの運用を開始した。都道府県の医療計画策定担当部署に調査票を送付し、医療計画に関する担当者の意見を求めた結果、既存の医療機能と指針で求められている医療機能との乖離が指摘され、医療圏ごとの医療機能の偏在があるとの指摘も多かった。
結論
本研究により、わが国の精神科医療を構成する救急や訪問看護、リエゾン等の機能はそれぞれ発展してきているが格差や偏在が大きいこと、地域ネットワークを志向した地域連携クリティカルパスはモデル地区で開始されているが、まだ普及には課題があることが示された。また医療計画の指針や指標についても課題が明らかにされた。こうした成果が今後の医療計画の改善に生かされることが期待される。
なお、本研究の一環として「重度かつ慢性」の基準に関するワーキングチームの検討を実施したが、その調査結果は別途報告する。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201224065B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい精神科地域医療体制とその評価のあり方に関する研究
課題番号
H22-精神-一般-018
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
安西 信雄(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 河原 和夫(東京医科大学大学院政策科学分野)
  • 伊藤 弘人(国立精神・神経医療研究センター)
  • 平田 豊明(千葉県精神科医用センター)
  • 萱間 真美(聖路加看護大学)
  • 平川 博之(東京医科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 吉邨 善孝(済生会横浜市東部病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療法改正に伴う医療計画の策定が精神科地域医療体制の改善に資するよう、各方面から調査検討を行い、実際に運用可能な地域精神医療体制の具体像を作っていくこと、それらがうまく機能するための条件と適切なモニタ方法等を明らかにし、各都道府県が適切に医療計画を立案・実施できるよう支援するすることを目的として本研究を実施した。
研究方法
医療計画に関しては、わが国の精神科地域医療体制の全体像の検討が必要なので、精神科救急、総合病院精神科(身体合併症)、訪問看護、行動制限最小化、および、医療計画と工程管理、政策立案と評価指標に関する分担研究班を設け、それぞれの分担研究班において、実態を踏まえた医療機能および評価方法の検討を行うとともに、地域連携のあり方(医療連携パスの検討を含む)、医療計画の研究を実施した。
 
結果と考察
精神科救急医療について、都会型では受診率が低いが入院率が高く、重症者をトリアージして対応せざるをえない状況にあり、地方型では入院率は低く、それぞれの地域における役割の違いが明らかになった。全国の訪問看護ステーション事業所では精神疾患患者の訪問看護を実施している施設が年々増加して約50%に達していた。診療所の調査(約40機関)の結果、初診患者の約2/3が初めての精神科受診で、受診予約待機期間の中央値は5日、当日に1/3が受診し、全体の88%が2週以内に受診していた。事例検討の結果、行動制限最小化への阻害要因・促進要因は「患者、援助職、相互関係、臨床状況」の4局面における影響要因の強度として把握できることが明らかになった。総合病院(一般病院)では精神科医が十分配置されていないため適切な対応が行われていないことがある。医療施設への住民のアクセス性の格差について検証したところ、精神科救急入院料認可施設に国民の90%は2時間以内に搬送可能であるが、身体合併症を有する者の精神科救急はきわめてアクセスが悪いことが分かった。長野県東信地域を地域連携モデル地域として精神科地域連携会議の設立・運営を支援するとともに認知症に関する精神科地域連携クリティカルパスの初案を共同開発し、国際機関等での精神保健医療の評価指標を整理した。
結論
1)わが国の精神疾患医療について、精神科救急、訪問看護、クリニック、行動制限最小化、総合病院精神科医療などの実態調査にもとづき、改善するための方策を検討し、主要な課題が明らかになった。
2)河原分担研究者による「精神疾患医療体制確立のための政策体系」等は、医療計画の施策の具体化に貢献し、伊藤分担研究者による「精神疾患の医療体制(イメージ)」は医療計画の全体像を明らかにした。都道府県職員への説明会等で説明を行った。
3)「重度かつ慢性」の患者の基準については、ワーキングチームを組織して、実態調査のための調査票の作成と調査計画の検討を行った(別途報告)。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224065C

成果

専門的・学術的観点からの成果
伊藤班では、地域精神科医療に関するこれからの方向性に関する成果を学術誌World Psychiatryに発表するとともに、海外の専門家と共著で書籍として出版した。
臨床的観点からの成果
わが国の精神疾患医療について、精神科救急、訪問看護、クリニック、行動制限最小化、総合病院精神科医療などの実態調査にもとづき、それらを改善するための方策を検討し、主要な課題が明らかになった。
ガイドライン等の開発
伊藤班で作成された「精神疾患の医療体制(イメージ)」等は、厚生労働省で開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」(平成24年4月27日等)で参考資料として用いられた。またこの資料は、都道府県が策定している医療計画における精神疾患の医療体制(イメージ)として参考にされている。
その他行政的観点からの成果
河原班で作成された「精神疾患医療体制確立のための政策体系」は、わが国の精神疾患の医療体制を向上させていくために必要な課題を多元的・包括的に示したもので、厚生労働省の施策に貢献するとともに、各都道府県における医療計画策定を支援する役割を果たしている。
その他のインパクト
伊藤弘人分担研究者は、本研究班における研究成果を踏まえて、都道府県職員への説明を行った。河原和夫分担研究者は、本研究班における研究成果を踏まえて、大阪府精神病院協会で講演するとともに東京都医療計画改訂部会の座長を務め、本研究班の研究成果を実務の計画策定に応用した。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
47件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
三宅薫
保護室における食事への援助の実態
日本精神科看護学会誌 , 53 (2) , 276-280  (2010)
原著論文2
三宅薫,大谷須美子
保護室における解放観察の実態
日本精神科看護学会誌 , 53 (2) , 92-96  (2010)
原著論文3
美濃由紀子、熊地美枝 、宮本真巳、他
医療観察法病棟の規模や構造が行動制限最小化に影響を及ぼす要因
日本精神科看護学会誌 , 54 (3) , 182-186  (2011)
原著論文4
熊地美枝 、美濃由紀子、宮本真巳、他
:医療観察法病棟における常時観察への取り組み-行動制限最小化と安全性の確保-
日本精神科看護学会誌 , 54 (3) , 177-181  (2011)
原著論文5
三宅薫、大谷須美子
保護室から見えるもの
日本精神科看護学会誌 , 54 (2) , 101-105  (2011)
原著論文6
熊地美枝 、美濃由紀子、宮本真巳、他
常時観察の運用状況と一般精神医療への還元 -司法病棟における常時観察の現状と問題点-
日本精神科看護技術協会編:精神看護出版 ,  ( ) , 291-295  (2012)
原著論文7
三宅薫
保護室における換気と消臭に関する援助の実態―37施設を対象にした調査より―
日本精神科看護技術協会編:精神看護出版 , 205-209  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201224065Z