発達障害者に対する長期的な追跡調査を踏まえ、幼児期から成人期に至る診断等の指針を開発する研究

文献情報

文献番号
201224063A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害者に対する長期的な追跡調査を踏まえ、幼児期から成人期に至る診断等の指針を開発する研究
課題番号
H22-精神-一般-016
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(福島大学 人間発達文化学類)
研究分担者(所属機関)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健部)
  • 杉山 登志郎(浜松医科大学 児童青年精神医学講座)
  • 吉田 友子(ペック研究所)
  • 藤岡 宏(つばさ発達クリニック)
  • 深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報センター)
  • 行廣 隆次(京都学園大学)
  • 吉川 徹(心身障害者コロニー中央病院)
  • 辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
  • 宇野 洋太(よこはま発達クリニック)
  • 黒田 美保(淑徳大学)
  • 安達 潤(北海道教育大学 旭川校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,090,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の最終目的は, 自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorders: 以下ASD)の成人期診断の手法を開発し, 幼児期から成人期までのライフステージを通した診断・支援の方法を検討し, その結果に基づいて専門医, 非専門医の両者を対象にした幼児から成人期までの診断・支援のガイドラインを作成することである。
研究方法
ライフステージ別に、評価者の専門性に応じた妥当性・信頼性のある診断・評価ツールの開発を行う。さらに成人の自閉症スペクトラムの多次元的鑑別指標の同定に関する検討、早期支援方法の開発と効果を判定する。児童・思春期の発達障害のある子どもやきょうだいへの診断告知等の技法の検討を行う。一般の小児科医・精神科医向けの医学心理学教育パッケージの開発を行い、実際にセミナーを開催する。発達障害情報センターと発達障害者支援センターの情報共有と蓄積を効果的に行うためにWeb上での情報共有の方法を研究し、かつ支援介入効果についての実証的検討を行う。
結果と考察
臨床の現場が多様であることを踏まえた、成人期も含めたエビデンスに基づく複数の診断・評価ツールの開発を行った。具体的には、一般の小児科医・精神科医が、通常の外来である程度の診断・評価を可能にするための評定・観察尺度、精神症状などを合併し鑑別が困難な事例を対象に専門医が使用する診断用半構造化面接、臨床現場でスクリーニングツールとして使用できる質問紙などを開発し、鑑別診断のための補助診断の手法も検討した。ガイドラインでは、医師が外来で行う支援方法の概要についても盛り込む予定であり、その基礎的データを得るために、早期支援の効果検証も含めたライフステージを通した支援手法の検討・検証を行った。また、医師が行う支援として重要な、発達障害のある当事者への診断告知の効果判定を行うための評価尺度を作成した。さらにきょうだいへの診断告知の方法、思春期のASDを対象にした心理教育プログラムの開発、早期支援手法の効果判定を行った。開業医を受診するASD児・者の実態を把握する目的で児童精神科外来クリニックにおける疫学調査を行い、さらに、もれのない早期診断を可能にするために診断が思春期以降に遅れる事例の特徴を明らかにした。発達障害を診療可能な医師を養成する目的で医師研修の方法の検討し、臨床活動に必要な情報を専門家が共有するために発達障害情報センターと発達障害者支援センターの情報共有を行うためのシステムを開発した。
結論
診断方法、診断状況、支援方法、療育効果、研修方法、情報共有といったように今年度の研究対象は多領域にわたった。いずれも医師向けのガイドラインを作成するためには必要な研究であった。本研究班では従来軽視されがちであった成人期のASDの診断方法についても焦点をあてたのが特徴である。これらの結果を踏まえて、発達障害を専門としない医師も含めて多くの医師がASDの診断、支援が可能になることを目指し、日本のASD医療の質を高めるのが最終的な目標である。

公開日・更新日

公開日
2013-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224063B
報告書区分
総合
研究課題名
発達障害者に対する長期的な追跡調査を踏まえ、幼児期から成人期に至る診断等の指針を開発する研究
課題番号
H22-精神-一般-016
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(福島大学 人間発達文化学類)
研究分担者(所属機関)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児児童・思春期精神保健部)
  • 杉山 登志郎(浜松医科大学 児童青年期精神医学講座)
  • 吉田 友子(ペック研究所)
  • 藤岡 宏(つばさ発達クリニック)
  • 深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報センター)
  • 行廣 隆次(京都学園大学)
  • 吉川 徹(心身障害者コロニー中央病院)
  • 辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
  • 宇野 洋太(よこはま発達クリニック)
  • 黒田 美保(淑徳大学)
  • 安達 潤(北海道教育大学 旭川校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の最終目的は, 自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorders: 以下ASD)の成人期診断の手法を開発し, 幼児期から成人期までのライフステージを通した診断・支援の方法を検討し, その結果に基づいて専門医, 非専門医の両者を対象にした幼児から成人期までの診断・支援のガイドラインを作成することである。
研究方法
ライフステージ別に、評価者の専門性に応じた妥当性・信頼性のある診断・評価ツールの開発を行う。さらに成人の自閉症スペクトラムの多次元的鑑別指標の同定に関する検討、早期支援方法の開発と効果を判定する。児童・思春期の発達障害のある子どもやきょうだいへの診断告知等の技法の検討を行う。一般の小児科医・精神科医向けの医学心理学教育パッケージの開発を行い、実際にセミナーを開催する。発達障害情報センターと発達障害者支援センターの情報共有と蓄積を効果的に行うためにWeb上での情報共有の方法を研究し、かつ支援介入効果についての実証的検討を行う。
結果と考察
臨床の現場が多様であることを踏まえた、成人期も含めたエビデンスに基づく複数の診断・評価ツールの開発と支援方法、医師研修方法、情報共有の方法の検討を行った。一般の小児科医・精神科医が、通常の外来で、ある程度の診断・評価を可能にするための評定・観察尺度、精神症状などを合併し鑑別が困難な事例を対象に専門医が使用する診断用半構造化面接、臨床現場でスクリーニングツールとして使用できる質問紙などを開発し、鑑別診断のための補助診断の手法も検討した。さらにガイドライン作成に必要な検討を行った。すなわち、①早期支援の効果検証も含めたライフステージを通した支援手法の検討・検証、②発達障害のある当事者への診断告知方法の検討とともに、告知の効果判定を行うための評価尺度の作成、②きょうだいへの診断告知の検討、③思春期のASDを対象にした心理教育プログラムの開発、④児童精神科外来クリニックにおける疫学調査、⑤診断が思春期以降に遅れる事例の特徴の検討。さらに⑥発達障害を診療可能な医師を養成する目的で医師研修の方法の検討、⑦臨床活動に必要な情報を専門家が共有するために発達障害情報センターと発達障害者支援センターの情報共有を行うためのシステムの開発をした。
結論
診断方法、診断の状況、支援方法、療育効果、研修方法、情報共有といったように本研究における対象は多領域にわたった。いずれも医師向けのガイドラインを作成するためには必要な研究であった。
一部未完成に終わった研究もあったが、成人のASDの診断方法についてガイドラインを作成するための準備はほぼ完成した。
 成人の診断方法については、診断機関の特性を考慮した診断方法を採用するのが現実的である。例えば診断困難例の多い3次センター的な機関で発達障害を専門とする専門医が十分な時間をかけて診断することを想定した場合はDISCOによる診断を行うことが有用であるし、比較的地域に密着した機関で、ある程度のトレーニングを受けた医師が1、2時間程度で診療する場面を想定すると児童・青年ではSCQ、成人ではSRS-Aでスクリーニングをしたあと陽性例にCARS-2HFを用いて診断することが妥当であろう。親などの養育者の協力が得られず発達歴の詳細が不明な場合に、精度の高い診断を下すにはADOSが有用である。今後、本研究班で得られた知見を活用し診断ガイドラインを作成する予定である。それにより従来軽視されがちであった成人期のASDの診断方法についても焦点をあてたのが特徴である。これらの結果を踏まえて、発達障害を専門としない医師も含めて多くの医師がASDの診断、支援が可能になることを目指す。

公開日・更新日

公開日
2013-07-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201224063C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 国際的に汎用される自閉症スペクトラムの一次スクリーニング(SRS-A)、二次スクリーニングツール(SCQ)、最終診断に使用される半構造化面接(DISCO-11)、直接観察尺度(CARS-2, ADOS)の日本語版の作成・標準化を行った。特に従来乏しかった成人の発達障害に利用可能なスクリーニング・診断ツールが得られたことにより、児童に加えて成人例の研究を国際英文専門誌に投稿する条件が整い、生物学的な研究も含めて日本の研究成果を世界に向けて発信することや海外の研究者との共同研究が促進される。
臨床的観点からの成果
 我が国で初めて前方視的に早期支援の効果検証を行った。当事者やきょうだいへの適切な診断告知方法を明らかにした。また告知の効果判定を行うための評価尺度を作成し、今後のより効果的な告知方法を検討するために役立つ。思春期を対象にした心理教育プログラムを開発した。診断が思春期以降に遅れる事例を検討し、成人の一般外来で自閉症スペクトラムを疑う事例の特徴を明らかにした。発達障害を診療可能な医師を養成する目的で医師研修の方法の検討し研修パッケージの提案を行った。
ガイドライン等の開発
 本研究の目的の一つである成人の診断・支援方法についての以下のようなガイドラインを出版準備中である。診断困難例の多い3次センター的な機関で発達障害を専門とする専門医が十分な時間をかけて診断することを想定した場合はDISCOとADOSによる診断を行い、比較的地域に密着した機関で、ある程度のトレーニングを受けた医師が1、2時間程度で診療する場面では児童・青年ではSCQ、成人ではSRS-Aでスクリーニングをしたあと陽性例にCARS-2HFを用いて診断することを推奨する。
その他行政的観点からの成果
 地方都市において民間児童精神科外来クリニックにおける疫学調査を行い出生年後7年8年累積すると2.54%もの高頻度で自閉症スペクトラムが診断されることを見いだし、支援ニーズが高いことを明らかにした。また臨床活動に必要な情報を専門家が共有するために発達障害情報センターと発達障害者支援センターの情報共有を行うためのシステムを開発し、全国規模で適切に情報共有し発達障害の児・者に最新の情報による支援を行うための基盤と作った。
その他のインパクト
 平成24年、第108回の精神神経学会の学術総会において「発達障害再考:診断閾値の臨床的意義を問い直す」のシンポジウムを行い多くの参加者があった。9人のシンポジストのうち7人が本研究班の研究者である。その成果を踏まえ一般精神科医向けに成人精神科医と共著(内山登紀夫、宮岡等著)で「大人の発達障害ってそういうことだったのか」(医学書院2013年5月)を発行、第109回の精神神経学会で多くの読者を得た(平成25年6月7日現在精神医学ジャンルでベストセラーランキング第三位、アマゾン調べ)。

発表件数

原著論文(和文)
18件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
62件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka, K, Uchiyama,T, Endo, F
Informing children about their sibling's diagnosis of autism spectrum disorder: An initial investigation into current practices
Research in Autism Spectrum Disorders , 5 (4) , 1421-1429  (2011)
原著論文2
杉山登志郎、原仁、山根希代子 他
早期療育の成果に関する前方向視的研究
乳幼児医学・心理学研究 , 20 (2) , 115-125  (2011)
原著論文3
辻井正次
子どもたちの「できること」を伸ばす--発達障害のある子どものスキル・トレーニング実践(12・最終回)楽しい生活のために必要なこと
こころの科学 , 157 , 116-121  (2011)
原著論文4
Uno Y, Uchiyama T.
The combined measles, mumps, and rubella vaccines and the total number of vaccines are not associated with development of autism spectrum disorder. The first case-control study in Asia
Vaccine , 30 , 4292-4298  (2012)

公開日・更新日

公開日
2017-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224063Z