白杖歩行・盲導犬歩行・同行援護歩行に対応したマルチモーダル情報処理技術に基づく訓練と評価の循環支援

文献情報

文献番号
201224048A
報告書区分
総括
研究課題名
白杖歩行・盲導犬歩行・同行援護歩行に対応したマルチモーダル情報処理技術に基づく訓練と評価の循環支援
課題番号
H24-感覚-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
蔵田 武志(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 興梠 正克(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
  • 関 喜一(独立行政法人産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門)
  • 石川 准(静岡県立大学 国際関係学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,895,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
視覚障害者の外出歩行や歩行訓練現場では、歩行者ナビに適用可能なスマートフォンの普及や同行援護の施行等の環境変化への適応が求められている。また、歩行訓練効果の継続的な定量評価が不十分であるため、歩行スキルに応じた歩行者ナビからの情報提供や訓練プログラム提供には限界があり、訓練士自体のスキル評価も難しい。さらに、実践に近い歩行訓練の安全性や効率を上げることも望まれている。これらの課題は決して独立ではないため、戦略的な取り組みにより複数の課題解決に同時に寄与することができる。そこで本研究では、歩行者音声ナビ(以下、音声ナビ)と仮想歩行訓練技術に基づくシステムを歩行訓練プログラムに組み込み、白杖歩行・盲導犬歩行を対象とした実証的取り組みを進める。同行援護については、訓練に直接組み込むのではなく、ガイドヘルパ向けナビシステムを用いて同行援護で歩行したルートを、視覚障害者が単独で後日歩行することの支援を、システムUIやその履歴等により支援することを目指す。
研究方法
H24年度FSは、「音声ナビの訓練プログラムの、訓練の進捗や効果の定量評価に特化した形で研究を実施する」ため、音声ナビと白杖操作もしくは盲導犬との間のO&Mへの寄与に関する機能的な相互補完関係に対する理解を深め、訓練の進捗や効果の定量評価のための指標設計について検討した。既存の音声ナビ、GPS、PDR(歩行者相対測位)、心拍計、脳波計等を用いて実施した歩行実験では、白杖歩行と盲導犬歩行を対象とした。
結果と考察
相互補完関係については、白杖歩行の場合のモビリティ確保の負荷や環境・反射音の寄与が盲導犬のそれらよりも高いため、音声ナビ使用の認知的負荷も高いことがインタビューで確認された。正確性については、歩行軌跡と設定ルートとの差をGPS及びPDRにより計測し、PDRの方がより正確であった(長距離では両者の連携が必要)。歩行時間の4割で音声案内がなされたが、案内直後の不規則動作が2.8回/分(それ以外:0.6回/分)となり、音声ナビがモビリティに負の寄与をした(不規則動作は目視確認であったが、PDRで自動計測する計画)。能率性については、白杖歩行で約3km/h、盲導犬歩行で約4km/hの平均速度であり、どちらも能率的であったと言えるが、音声ナビが能率性にどう起因したかの解明が必要である。
脳波からは、「自信有歩行」の方が「自信無歩行」よりもリラックス度は高く集中度は低いという結果が得られた。心拍について特徴的な結果は得らなかった。実験や訓練では倫理的に安全確保が必要だが、それが不安指標の定量評価を困難にするため、将来的には仮想訓練環境の構築にも取り組みたい。
訓練の進捗や効果の定量評価に向けて、正確性(局所・大局)、能率性(局所・大局)、不安指数、安全(適切)歩行指標、地理リテラシーに関する指標設計を進めているが、実験から、その多くに開発システムが寄与できることが確認された。さらに、「触軌跡」による訓練生へのフィードバックが有効であることも示唆された。
視覚障害者向けナビシステムの開発において、PDR、GPS、脳波履歴を記録可能なアンドロイド端末向けソフトウェアを開発した。
結論
本FSにより、音声ナビと白杖歩行・盲導犬歩行との相互補完関係や、歩行実験の設計方針についての知見が得られただけではなく、携帯・装着型装置で得られたPDR、GPS、脳波データから歩行状況の定量評価につながる指標が得られることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224048Z