緑内障統合的分子診断法の確立と実証

文献情報

文献番号
201224045A
報告書区分
総括
研究課題名
緑内障統合的分子診断法の確立と実証
課題番号
H24-感覚-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
木下 茂(京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 森 和彦(京都府立医科大学大学院医学研究科 視覚機能再生外科学)
  • 田代 啓(京都府立医科大学大学院医学研究科 ゲノム医科学)
  • 中野 正和(京都府立医科大学大学院医学研究科 ゲノム医科学)
  • 田中 光一(東京医科歯科大学大学院疾患生命科学研究部 分子神経科学)
  • 長崎生光(京都府立医科大学大学院医学研究科 統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,561,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々はこれまでに4,600例を超す血液検体(細胞株樹立済み)と過去15年以上蓄積してきた臨床情報をもとに、緑内障の主要病型についてのゲノムワイド関連解析を行い、正常眼圧緑内障(NTG)と落屑緑内障(PE)に特有な塩基配列の違い(バリアント)を独自に見出している。更に、緑内障患者の血漿中で有意に上昇している4種類のサイトカインを同定し、バリアントのジェノタイプ情報(離散変数)とサイトカイン量(連続変数)を統合して発症リスクを予測する診断アルゴリズムを開発した。本課題では緑内障の主病型に対応するプロトタイプ診断チップを作製し、他施設と連携してその有用性の実証を目指す。狭義原発解放隅角緑内障(POAG)のバリアントは未同定であり、オッズ比が低いことが想定されるため、コピー数の違いのバリアント(CNV)についても精査する。更には、血液診断法として末梢血白血球の網羅的発現解析を実施し、クラスター解析を試みる。平成24・25年度にデータ取得と解析を実施し、分担・長崎を始め統計学の専門家と協力しながら統合的診断アルゴリズムの強化・至適化を図った上で、平成26年度に診断チップの有用性を検証する。本研究の第2の目的として緑内障発症機序へのバリアントの関与も解明する。緑内障は進行性の神経変性疾患であるため、特にグルタミン酸トランスポーターの解析を深める。
研究方法
1. 高密度チップによる緑内障ゲノムワイド関連解析(平成24年度)
高密度チップ(アフィ社・GeneChip SNP6.0, 100万SNP)による一連のゲノムワイド解析が進行中である。広義の原発性開放隅角緑内障(広義POAG: NTG + POAG)833例・対照686例の解析を筆頭に、眼圧値で症例群を正常眼圧緑内障(NTG)(503例)とPOAG(330例)に細分類した解析および落屑緑内障(PE)193例・対照686例の解析を実施する。
2. 既報の候補遺伝子バリアントの検証(平成24年度)
我々独自の検体(症例521例・対照519例と症例500例・対照500例の2ステージ)を用いて既報の緑内障関連遺伝子上のバリアント(約600 SNP/24遺伝子、イルミナ社製カスタムチップ)を検証する。
3.コピー数の違いのバリアント(CNV)の解析を検討するため、現在着手している。また、グルタミン酸トランスポーター・重要バリアントマーカー機能解析に関しては、既にヒトNTGの病態を反映したモデル動物としてグルタミン酸トランスポーター(GLAST)欠損マウスを樹立している。本研究では、GLASTの活性低下を伴うミスセンス変異についてTAL effector nucleaseによるノックインモデル動物を作製し解析することでNTGの病態解明の糸口とする。更に、NTGの新規治療薬候補としてGLAST活性化化合物を検索し評価する予定で、本研究で新規に同定した重要バリアントマーカーについてはその機能解析を実行する予定である。また、プロトタイプ診断チップの作製に関しては1.~3.のバリアント探索の結果に基づき、緑内障の主要な病型をカバーする精鋭バリアントを絞りこみ、プロトタイプ診断チップを作製していく予定である。 緑内障統合的分子診断法の確立と実証に関しては、これまでに実施した網羅的遺伝子発現解析を連続変数としてアルゴリズムに反映させた上で、バリアントの離散変数と統合した分子診断法の強化・至適化を図る。
結果と考察
高密度チップによる緑内障ゲノムワイド関連解析に関してはNTGに特異的なCDKN2B-AS1遺伝子を同定し報告した(PLos 1:2012;7(3):e33389)。またPEに関しては有意な遺伝子を同定し、現在再現性を取得中である。また既報の候補遺伝子バリアントの検証に関しては既報の遺伝子WDR-36遺伝子上のバリアントにp<0.05程度の弱いながらも有意に相関する遺伝子を同定した。コピー数の違いのバリアント(CNV)の解析に関しては現在データ解析のための環境を整えた。
結論
緑内障分子診断の精鋭バリアントを同定し、有用な緑内障診断チップの候補が絞られつつある。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224045Z