早期遺伝子診断後の臨床応用を目指した遺伝性難聴の高効率内耳細胞治療法の開発

文献情報

文献番号
201224042A
報告書区分
総括
研究課題名
早期遺伝子診断後の臨床応用を目指した遺伝性難聴の高効率内耳細胞治療法の開発
課題番号
H23-感覚-若手-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 和作(順天堂大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 勝久(順天堂大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
  • 美野輪 治(独立行政法人 理化学研究所)
  • 飯塚 崇(順天堂大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
2,607,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性難聴は約1,600出生に1人と高頻度に発症し聴覚と言語発育障害の極めて高度なQOLの低下をもたらす。遺伝性難聴の根本的治療法は未だ存在しないが、我々は骨髄間葉系幹細胞を使って蝸牛線維細胞損傷モデルの聴力を改善させることに成功している。本研究では我々の開発した細胞移植法を応用し、遺伝性難聴の中で最も高頻度に発生するコネキシン26遺伝子の欠損モデルマウス(Cx26cKO)の聴力回復実験により、新規治療法を開発することを目的とした。
研究方法
内耳への移植細胞として骨髄間葉系幹細胞、人工多能性幹(iPS)細胞由来内耳前駆細胞、生体内耳幹細胞を用いた。移植細胞は半規管の外リンパ液還流法によって内耳に投与し、聴性脳幹反応(ABR)によってモニタリングした。蝸牛組織への幹細胞誘導(ホーミング)因子をRT-PCR法により発現遺伝子解析し、免疫染色により発現する局在を同定した。
結果と考察
遺伝子発現解析により蝸牛組織から分泌されるホーミングリガンド因子としてMCP1およびSDF1が同定された。これらの因子は心筋梗塞の際の幹細胞ホーミング因子としても知られており内耳でもこの機構を介した幹細胞誘導が行われることが示された。移植幹細胞においても培養上清中にMCP1、SDF1を一定の条件で加えることによりこれらの受容体CCR2、CXCR4(ホーミング受容体)の発現を大きく上昇させることに成功した。
上記の方法でCx26cKOマウスにおけるホーミングリガンドと移植細胞のホーミング受容体を同時に惹起して内耳細胞移植を行ったところ蝸牛への細胞導入効率が約4倍上昇した。
結論
近年各種臓器において幹細胞ホーミングの分子機構が明らかになっており、内耳においても今回初めて蝸牛組織への幹細胞誘導機構が明らかとなった。これを応用し生体組織におけるホーミングリガンド分子と移植細胞のホーミング受容体因子を同時に惹起することにより、遺伝性難聴モデルへの幹細胞導入効率は大幅に上昇することが示された。同方法を発展させることにより多量の多能性幹細胞を蝸牛組織内へ誘導させ、これまで不可能であった遺伝性難聴の聴力改善が更に現実化すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201224042Z