緑内障のmultiple rare variantsの発見と病態機序の解明による予防・治療法の開発

文献情報

文献番号
201224034A
報告書区分
総括
研究課題名
緑内障のmultiple rare variantsの発見と病態機序の解明による予防・治療法の開発
課題番号
H22-感覚-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 溝田 淳(帝京大学医学部眼科)
  • 木村 至(順天堂大学医学部 浦安病院眼科)
  • 下澤 律浩(国立医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 渡辺 すみ子(東京大学医科学研究所 再生基礎医科学寄付研究部門)
  • 原 英彰(岐阜薬科大学 薬効解析学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,646,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
緑内障は視覚障害者の約25%を占める眼疾患であり、日本では失明率が最も高い眼疾患である。緑内障は遺伝や環境などのリスク因子によって発症する多因子疾患と考えられ、複数の病態に分類されているが、何れの病態についても根本的な治療法は存在しない。緑内障のように日本に約400万人の患者がいると想定されている発症頻度の高い疾患(common disease)に対して出現頻度が約5%の遺伝子多型(common variants)の探索が数千人規模の全ゲノム相関解析として行われてきたが、この解析から得られた結果は、オッズ比がきわめて低くく、生理学的な影響を証明することがきわめて困難な遺伝子多型であった。本研究は緑内障のようなcommon diseaseに対してcommon variantではなく、rare variantによって説明することを目的とする。
研究方法
本研究では家族歴のある開放隅角緑内障患者の家系調査を行い、DNAを抽出して、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を行う。ここで発見される遺伝子変異あるいはこの遺伝子に含まれる遺伝子多型と家族歴のない「一般的」な開放隅角緑内障患者を探索した。
結果と考察
7つの家系を調査した結果、1つの家系はオプチニュリン遺伝子の変異E50Kが原因で発症していることが明らかにされた。この家族からIPS細胞を樹立して神経細胞に分化させて解析した結果、変異体タンパク質は小胞体に凝集し、本来の分泌機能への影響が示唆された。この変異はマウスモデルを作製し、重篤な網膜障害を発症することが明らかとなった。残りの6家系には既知緑内障遺伝子の変異は検出されず、新規遺伝子による発症が予測された。一つの家系については原因遺伝子と予測される遺伝子を発見し、千人ゲノムやコントロール500検体、さらに3千人エクソームデータにおいても検出されなかった。この遺伝子に存在する遺伝子多型は緑内障と強い相関があり、緑内障患者の約10%と相関があった。
結論
家族性緑内障について7家系を調査し、既知遺伝子1家系と未知遺伝子1家系が明らかにされた。何れの家系も重篤な正常眼圧緑内障を発症しており、遺伝子解明によって共通する発症機序をお明らかにして治療法を開発している。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201224034B
報告書区分
総合
研究課題名
緑内障のmultiple rare variantsの発見と病態機序の解明による予防・治療法の開発
課題番号
H22-感覚-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
岩田 岳(独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター 分子細胞生物学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 溝田 淳(帝京大学医学部眼科 )
  • 木村 至(順天堂大学医学部 浦安病院眼科)
  • 下澤 律浩(国立医薬基盤研究所例調理医科学研究センター)
  • 渡辺 すみ子(東京大学医科学研究所 再生基礎医科学寄付研究部門)
  • 原 英彰(岐阜薬科大学 薬効解析学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
緑内障は視覚障害者の約25%を占める眼疾患であり、日本では失明率が最も高い眼疾患である。緑内障は遺伝や環境などのリスク因子によって発症する多因子疾患と考えられ、複数の病態に分類されているが、何れの病態についても根本的な治療法は存在しない。緑内障のように日本に約400万人の患者がいると想定されている発症頻度の高い疾患(common disease)に対して出現頻度が約5%の遺伝子多型(common variants)の探索が数千人規模の全ゲノム相関解析として行われてきたが、この解析から得られた結果は、オッズ比がきわめて低くく、生理学的な影響を証明することがきわめて困難な遺伝子多型であった。本研究は緑内障のようなcommon diseaseに対してcommon variantではなく、rare variantによって説明することを目的とする。
研究方法
平成22年度から家族歴のある開放隅角緑内障の家系を対象に調査し、家系図の作成と血液検体の採取を行った。平成23年度はDNAを抽出して、次世代シークエンサーを用いたエクソーム解析を行い、候補となる遺伝子を得た。平成24年度はこれらの候補遺伝変異から一つの遺伝子変異が選択され、家族歴のない開放隅角緑内障の患者について、この遺伝子の解析が行われた。
結果と考察
平成22~24年度の間に7つの家系を調査した結果、1つの家系はオプチニュリン遺伝子の変異E50Kが原因で発症していることが明らかにされた。この家族からIPS細胞を樹立して神経細胞に分化させて解析した結果、変異体タンパク質は小胞体に凝集し、本来の分泌機能への影響が示唆された。この変異はマウスモデルを作製し、重篤な網膜障害を発症することが明らかとなった。残りの6家系には既知緑内障遺伝子の変異は検出されず、新規遺伝子による発症が予測され、一つの家系については原因遺伝子と予想される原因遺伝子変異を解明した。千人ゲノム配列、コントロール500検体、さらに3千人のエクソームデータにおいても検出されなかった。この遺伝子に存在する遺伝子多型は開放隅角緑内障と強い相関があり、正常眼圧緑内障患者の約10%と相関する。
結論
家族性緑内障について7家系を調査し、既知遺伝子1家系と未知遺伝子1家系が明らかにされた。何れの家系も重篤な正常眼圧緑内障を発症しており、今後2つの遺伝子に共通する発症機序をお明らかにして新たな治療法の開発に応用したい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201224034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
緑内障は視覚障害者の約25%を占める眼疾患であり、日本では失明率が最も高い眼疾患である。緑内障は多因子疾患と単一遺伝子変異によって発症するものがあり、これらの関係については明らかにされていない。本研究では家族性の正常眼圧緑内障の原因遺伝子を明らかにし、家族歴のない緑内障患者におけるこれらの遺伝子の関与を解析した。
臨床的観点からの成果
国内に400万人の患者がいる緑内障はその原因が明らかにされておらず、本研究はその一部の患者の発症を説明する有力な原因遺伝子を解明した。この遺伝子は特に日本人に多く存在する正常眼圧緑内障の患者と統計学的に強く相関する。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
日本眼科学会、国際眼科研究会議 (ISER)、アメリカ眼研究学会 (ARVO)などで研究内容を報告した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
日本眼科学会など
学会発表(国際学会等)
4件
国際眼科研究会議 (ISER)、アメリカ眼研究学会 (ARVO)など
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Chi Z-L, Iwata T, et al.,
Overexpression of optineurin E50K disrupts Rab8 interaction and leads to a progressive retinal degeneration in mice.
Human Molecular Genetics , 19 , 2606-2615  (2010)
原著論文2
Chi Z-L, Iwata T, et al.
Mutant WDR36 directly affects axon growth of retinal ganglion cells leading to progressive retinal degeneration in mice.
Human Molecular Genetics , 19 , 3806-3815  (2010)
原著論文3
Shen X, Iwata T, et al.
Processing of optineurin in neuronal cells.
The Journal of Biological Chemistry , 286 , 3618-3629  (2011)
原著論文4
Minegishi Y, Iwata T, et al.
Enhanced optineurin E50K-TBK1 interaction evokes protein insolubility and initiates familial primary open-angle glaucoma.
Human Molecular Genetics , 22 , 3559-3567  (2013)
原著論文5
岩田岳
緑内障の遺伝子とその機能解析
高齢者の視覚障害とそのケア  (2013)
原著論文6
岩田岳
Optineurinと正常眼圧緑内障
Medical Science Digest  (2013)
原著論文7
Iwata T
Animal Models for Eye Diseases
Handbook of Laboratory Animal Science III , 195-217  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201224034Z