受動喫煙の防止を進めるための効果的な行政施策のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201222059A
報告書区分
総括
研究課題名
受動喫煙の防止を進めるための効果的な行政施策のあり方に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 雅規(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 江口 泰正(産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 中村 正和(大阪がん循環器病予防センター 予防推進部)
  • 欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
  • 河井 一明(産業医科大学産業生態科学研究所 職業性腫瘍学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
受動喫煙の問題を解決する最善の行政施策は、諸外国で既に実施されているようにサービス産業を含むすべての屋内、および、テラスなど屋内に準ずる空間を全面禁煙とする受動喫煙防止法・条例の成立に寄与することである。そのような立法措置が取られた国・地域では、国民全体の急性冠症候群や気管支喘息などの疾患が減少したことが報告されている。しかし、わが国ではそのような受動喫煙防止法を施行する準備は整っていない。逆に、厚生労働省が示した2002年の「分煙効果判定基準策定検討会報告書(以下、報告書)」、および、2003年の「職場における喫煙対策のための新ガイドライン」が推奨する「一定の要件を満たす喫煙室」の存在が全面禁煙化の阻害要因となっている事例も見受けられる。本研究では、主要な地方自治体の受動喫煙防止対策のモニタリングを行い、良好な禁煙化を実施している自治体の事例の収集、および、自治体の禁煙化の阻害因子を明らかにすることである。次いで、調査結果を各団体にフィードバックすることで、全面禁煙化が遅れている団体の気づきを促し、全面禁煙化への準備性を高めることが当面の目的である。最終的には、地方自治体の禁煙化を通じて、各地方の民間への波及効果を狙い、また、受動喫煙防止条例の施行を促し、国法としての受動喫煙防止法の成立に寄与することを目的とする。
研究方法
121の主要な地方自治体(47都道府県、46県庁所在市、23特別区、5政令市)に対して、郵送法による調査(①一般庁舎と議会棟の建物内・敷地内禁煙の状況、②勤務時間中の喫煙禁止の状況、③公用車の禁煙化)を行った。また、受動喫煙防止条例を実施した神奈川県と兵庫県の担当者のインタビューを通じて、条例の成立過程、内容、課題等の比較を行った。サービス産業に従事することで遺伝子障害が発生する可能性についても検討を行った。2010年より発売が開始された無煙タバコを吸引することで発生するガス状物質の検討もおこなった。
結果と考察
32道府県、18道府県庁所在市、23特別区のうち4区、20政令市の10市がすでに建物内禁煙を実施していた。合計121団体中(県庁所在市と政令市の重複を除く)の57団体が建物内禁煙であり、そのうちの5団体が敷地内禁煙、32団体が議会棟・フロアも含めて全面禁煙、5団体では勤務時間中の喫煙が禁止されていた。特に、県庁では平成22年2月の健康局長通知「受動喫煙防止対策について」(健発0225第2号)の発出以降に禁煙化した団体が多いことが分かった。公用車はほとんどの団体で禁煙化されていた。各団体の受動喫煙防止対策の実施状況は優劣がひと目で分かる一覧表として作成し、また、調査の過程で収集した好事例(グッドプラクティス)とともにフィードバックされた。さらに、これから全面禁煙化に取り組む団体のために「職場内禁煙推進マニュアル」の作成、および、海外で用いられている団体・企業を全面禁煙化するための教材の翻訳も行ない、各団体に配布された。また、すでに受動喫煙防止条例を施行している神奈川県と兵庫県の条例の成立過程、内容、課題等についての比較を行い、今後、他の自治体においてより良い条例を作成するためには、検討委員会のありかた、首長・議員への働きかけ、規制の対象と内容について十分な検討と対策を行う必要があることが確認された。受動喫煙に曝露されるサービス産業従事者の生体影響指標(唾液中8-OH-Gua)の検討を行ったところ、長時間の職業的な受動喫煙による遺伝子障害が発生する可能性が否定できないことが示唆された。無煙タバコ4製品を模擬的に吸入する実験の結果、ニコチンとメンソールが高い濃度で吸入されることが確認されたことから、無煙タバコを禁煙区域で使用することにより喫煙者が禁煙することの抑制に繋がる可能性が示唆された。
結論
地方自治体の禁煙化に関する本調査結果、特に、一部の自治体で行った微小粒子状物質(PM2.5)の測定による喫煙室からの漏れとサービス産業の受動喫煙の曝露濃度の高さについては、しばしば新聞等のメディアで取り上げられており、地方自治体の禁煙化を促す役割を果たしつつあると思われる。また、2012年6月以降、121団体の喫煙対策担当者に対して月3回の電子メールによる情報提供も行われており、各団体の受動喫煙防止対策の促進に寄与できると期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222059Z