生活習慣病予防や身体機能維持のためのエネルギー・たんぱく質必要量の推定法に関する基盤的研究

文献情報

文献番号
201222048A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病予防や身体機能維持のためのエネルギー・たんぱく質必要量の推定法に関する基盤的研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田中 茂穂(独立行政法人国立健康・栄養研究所 基礎栄養研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 和子(独立行政法人国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部)
  • 木戸 康博(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院医学系研究科 公共健康医学専攻)
  • 吉田 英世(東京都健康長寿医療センター研究所 老年医学)
  • 海老根 直之(同志社大学 スポーツ健康科学部)
  • 引原 有輝(千葉工業大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準」におけるエネルギーおよびたんぱく質の必要量に関して、特に高齢者や小児における日本人の知見が乏しい。そこで、これらの値を決定するとともに推定法を改善・確立することが、本研究の主な目的である。
研究方法
1)自立した高齢男女37名を対象に、二重標識水法に基づく総エネルギー消費量および基礎代謝量と、それらから得られる身体活動レベルなどの調査を実施した。
2)そのうちの10名(75歳以上80歳未満)を対象に、指標アミノ酸酸化 (Indicator Amino Acid Oxidation; IAAO)法によるたんぱく質必要量の測定を実施した。被験者は、実験日に、9:00から18:00まで1時間ごとに、基礎代謝量×1.5kcal/日の1/12量のエネルギーおよび1日摂取量の1/12量のたんぱく質を含む実験食を摂取した。実験食は、たんぱく質源として玉子焼きを用い、体重当たりの摂取たんぱく質量は、0.5、0.7、0.9、1.0、1.2および1.4 g/kg/日とした。
3)自立した生活を営む後期高齢者(88~92歳)36人を対象として、訪問面接による3日間秤量式食事記録法を実施し、日常生活におけるエネルギー・栄養素摂取量に関する調査を行った。
4)成人男性69名、女性34名を対象に、二重標識水法および三次元加速度計のデータを収集・分析した。
5)首都圏郊外に位置する中学校の生徒を対象に、二重標識水法による調査を実施し、首都圏の中学校との比較・分析を行った。
6)幼児の推定エネルギー必要量の策定根拠として利用可能な文献資料の収集とその精査を行った。
結果と考察
1)男性、および女性の65~74歳では、国民健康・栄養調査と近い歩数が得られていたが、75歳以上の女性における歩数は、それよりかなり多かった。日本人としての代表性を確保するためには、今後の調査において、75歳以上の女性について、活動的でない対象者を中心に募集する必要がある。
2)高齢者を対象として、現時点で得られたたんぱく質の推定平均必要量は1.12 g/kg/日で、2010年版の値(0.85 g/kg/日)よりかなり大きな値が得られた。現行のたんぱく質必要量は、窒素出納法で算出されており、窒素出納法で算出される値は最小たんぱく質必要量であるのに対し、IAAO法で算出される値がたんぱく質代謝要求量であり、それぞれの算出値の意味するところが異なるため、本研究結果で高値を示したと考えられた。
3)自立した生活を営む後期高齢者における栄養素摂取量に関する資料を提示した。
4)成人の身体活動レベルには、男性では歩行活動が、女性では生活活動が影響しており、性差がみられた。
5)今回得られた首都圏郊外の中学校のPAL(1.77±0.16)は、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」における「ふつう」のPAL(1.65)より高かった。その一方で、首都圏の中学校のPAL(1.85±0.28)と比較して、やや低値を示したものの統計的な有意差は認められなかった。また、中学生の身体活動レベルは中高強度活動に要した時間との関係が強く、それは主に休み時間の過ごし方や学校部活動への参加状況に起因する可能性が示唆された。
6)PubMedを用いた検索から、幼児ならびに幼児を含む対象者で、一日の総エネルギー消費量と身体活動レベルが共に掲載されている原著論文が4篇存在した.しかし,いずれの論文も2010年版レビューにおける算入基準を満たしてはいなかった.幼児の総エネルギー消費量のみを報告している文献としては,4篇の原著論文が確認された。日本人幼児・小児を対象に二重標識水(DLW)法を用いた研究は国際データベース上には確認されなかった。幼児の場合、体重あたりのエネルギー必要量の基準値を示すアプローチの方が有効である可能性が示唆された。
結論
高齢者や小児を中心に、総エネルギー消費量や身体活動レベル、基礎代謝量推定法、たんぱく質必要量の問題点を指摘するとともに、新たな知見を提示した。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201222048Z