わが国の健康増進事業の現状把握とその評価および今後のあり方に関する調査研究

文献情報

文献番号
201222031A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の健康増進事業の現状把握とその評価および今後のあり方に関する調査研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清原 裕(九州大学大学院医学研究院 環境医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病研究センター)
  • 細井 孝之(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 山下 喜久(九州大学大学院歯学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康増進事業である健康手帳の交付、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導、生活保護者の健診・保健指導、骨粗鬆症検診、歯周疾患検診の市町村における実施状況の実態や問題点を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.健康増進事業の現状把握のために、全国の自治体1,618か所を対象とした全国調査を実施し、その結果をもとに健康増進事業の見直しへの提言をまとめた。
2.骨粗鬆症検診における骨量測定を勧奨する対象者を絞り込むために、自己記入方式チェック表の作成を試みた。
3.歯周疾患検診における自己記入式質問票の有用性や、歯科保健指導が歯科医院への受診行動に及ぼす影響について検討した。
結果と考察
1.全国調査の回答率は61.8%であった。健康手帳は全体の84.0%の自治体で交付されていた。今後はその活用方法や事業の効果について評価が求められる。集団健康教育は全体の97.0%の自治体で実施されていた。しかし「一般に関する健康教育」や「病態別に関する健康教育」については、平成20年以降事業実施数が減少傾向にある自治体の割合が多かった。個別健康教育の実施率は17.4%と低かった。実施しない理由として、事業実施のためのマンパワーや実施時間の確保が困難であることが多くを占めていた。健康相談は、全体の97.1%の自治体で安定して実施されていた。機能訓練の実施率は全体の15.7%にとどまっており、実施しない理由として事業の対象者が減少したことや、その把握が困難であることが挙げられていた。対象者選定の方法や基準の見直しが求められる。訪問指導は全体の90.0%の自治体が実施していた。事業内容が特定保健指導や介護保険サービスなど他の法律に基づく事業と重複する部分があるため、効果的な事業実施に向けて国民健康保険などの医療保険者や介護福祉部門との連携強化が必要である。生活保護受給者への健診は全自治体の93.7%で実施していたが、健診受診率は全国平均で10.4%と極めて低かった。骨粗鬆症検診の実施率は62.3%と十分に高いとは言えなかった。また要精検者の判定に現行のマニュアルであるYAMの80%未満を使用していない自治体が少なからず存在した。さらに骨量測定を用いずとも骨折発生確率の算定を可能とするFRAXの周知度は極めて低かった。歯周疾患検診は全体の61.8%の自治体で実施していたが、推計検診受診率は5.2%と極めて低くかった。受診率に関わる要因について分析したところ、検診の個別負担金の有無が特に検診受診率に強く関連していた。
2.年齢毎のFRAXの主要骨粗鬆症性骨折10年確率のスクリーニングカットオフ値(平成23年度分担研究で提案)を用いて、これらの値に対応する骨折の危険因子の組み合わせを年齢層ごとに探索し、骨粗鬆症検診の自己チェック表を作成した。
3.福岡県糸島市のがん検診及び特定健診受診者6,698人に対し歯科質問票を配布し、6,017人より回答を得た。40~79歳人口における検診受診率は11.4%であった。質問票により歯科医療・保健指導が必要と判定された者に対し、歯科保健指導を行ったところ、その後歯科医院を受診した者は6.5%であった。平成23年度と比較し歯科医院を受診した者の割合が1.5倍と増加したことから、歯科保健指導は歯科医院への受診行動の誘導に効果があったと考えられる。
結論
1.健康増進法に基づく健康増進事業に関する全国調査を実施した。健康増進事業のうち、健康手帳の交付、集団健康教育、健康相談、訪問指導は、全国の自治体の84.0~97.1%で実施されており、事業として安定して実施されていることがうかがえる。一方、個別健康教育は全体の17.4%の自治体での実施にとどまり、その理由としてマンパワーや実施時間の確保が困難であることが挙げられた。機能訓練の実施率もまた全体の自治体の15.7%にとどまっており、事業の対象者条件に該当する者が少なく、把握も困難であることがその理由であった。生活保護受給者への健診は、全国の自治体の93.7%で実施していたものの、健診受診率は全国平均で10.4%ときわめて低かった。骨粗鬆症検診の実施率は62.3%であり、要精検者の判定に現行のマニュアルであるYAMの80%未満を使用していない自治体が少なからず存在した。歯周疾患検診の実施率は61.8%で、検診受診率の全国平均は5.2%と極めて低かった。
2.骨量測定を必要とする者をスクリーニングするための自己チェック表をFRAXのカットオフ値を用いて作成した。
3.福岡県糸島市のがん検診及び特定健診受診者における歯科質問票を用いた歯周疾患検診の受診率は11.4%であった。健診会場で歯科保健指導を行ったところ、歯科医院への受診行動の誘導に効果があった。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201222031B
報告書区分
総合
研究課題名
わが国の健康増進事業の現状把握とその評価および今後のあり方に関する調査研究
課題番号
H23-循環器等(生習)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清原 裕(九州大学大学院医学研究院 環境医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小久保 喜弘(国立循環器病研究センター 予防健診部公衆衛生学)
  • 細井 孝之(独立行政法人 国立長寿医療研究センター)
  • 山下 喜久(国立大学法人九州大学 大学院歯学研究院口腔予防医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康増進事業である健康手帳の交付、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導、生活保護者の健診・保健指導、骨粗鬆症検診、歯周疾患検診の市町村における実施状況の実態や問題点を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.平成23年度は、自治体より国に報告されている地域保健・老人保健事業報告のうち、平成17~21年度に行われた健康増進事業実績のデータを用いて健康増進事業の実施数の推移について分析した。
2.平成24年度は、健康増進事業の現状把握のために、全国の自治体1,618か所を対象とした全国調査を実施し、その結果をもとに健康増進事業の見直しへの提言をまとめた。
3.骨粗鬆症検診における骨量測定を勧奨する対象者を絞り込むために、自己記入方式チェック表の作成を試みた。
4.歯周疾患検診における自己記入式質問票の有用性や、歯科保健指導が歯科医院への受診行動に及ぼす影響について検討した。
結果と考察
1.平成17~21年度において、健康手帳の交付、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導、骨粗鬆症検診の実施数は減少していた。これらの健康増進事業の中でも平成20年度以降、生活習慣病予防に関連した「一般に関する集団健康教育」や個別健康教育が特に減少していたが、対象者の多くが平成20年度より開始された特定健診・保健指導の適応となったことによると思われる。また機能訓練の実施数は平成18年度に著しく減少したが、機能訓練が必要な者は平成17年度より開始された介護予防事業の対象者になったと考えられる。歯周疾患検診の受診者数は平成21年度以降に増加していたが、その理由は不明であった。
2.全国調査の回答率は61.8%であった。健康手帳は全体の84.0%の自治体で交付されていた。集団健康教育は全体の97.0%の自治体で実施されていたが、「一般に関する健康教育」や「病態別に関する健康教育」については、平成20年以降事業実施数が減少傾向にある自治体の割合が多かった。個別健康教育の実施率は17.4%と低く、実施しない理由としてマンパワー不足や実施時間の確保が困難であるとの回答が多かった。機能訓練の実施率も15.7%にとどまっていた。事業の対象者が減少しその把握も困難であるとの理由が多く、対象者の選定法や基準の見直しが求められる。健康相談や訪問指導は、90%以上の自治体で安定して実施されていた。生活保護受給者への健診は全自治体の93.7%で実施されていたが、健診受診率は全国平均で10.4%と極めて低かった。骨粗鬆症検診の実施率は62.3%であり、要精検者の判定にマニュアルのYAM80%未満を使用していない自治体が存在した。歯周疾患検診は61.8%の自治体で実施していたが、推計検診受診率は5.2%と極めて低く、検診の個別負担金の有無が検診受診率に強く関連していた。
3.年齢毎のFRAXの主要骨粗鬆症性骨折10年確率のスクリーニングカットオフ値を用いて、骨折の危険因子の組み合わせを年齢層ごとに探索し、骨粗鬆症検診の自己チェック表を作成した。
4.福岡県糸島市のがん検診・特定健診受診者6,698人に対し歯科質問票を配布し、6,017人より回答を得た。40~79歳人口における検診受診率は11.4%であった。質問票をもとに歯科保健指導を行ったところ、その後歯科医院を受診した者は6.5%であった。平成23年度に比べその割合は1.5倍に増加しており、質問票および歯科保健指導は歯科医院への受診誘導に有効であった。
結論
1.平成17年~21年度における健康増進法に基づく健康増進事業の推移を検討した結果、健康手帳の交付、健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導、骨粗鬆症検診の実施数は減少していた。
2.健康増進法に基づく健康増進事業に関する全国調査を実施した結果、健康手帳の交付、集団健康教育、健康相談、訪問指導は、全国の自治体の84.0~97.1%で実施されており、事業として安定して実施されていることがうかがえる。一方、個別健康教育や機能訓練の実施率は低く、マンパワー不足や事業の対象者が少ないことなどが理由と考えられた。生活保護受給者への健診は、多くの自治体で実施されていたが、健診受診率は極めて低かった。骨粗鬆症検診の実施率は62.3%で、マニュアルの基準値を使用しない自治体が存在した。歯周疾患検診の実施率も61.8%で、推計検診受診率は5.2%と極めて低かった。
3.骨量測定を必要とする者をスクリーニングするための自己チェック表をFRAXのカットオフ値を用いて作成した。
4.福岡県糸島市において、歯科質問票を用いた歯周疾患検診の受診率は11.4%であり、健診会場で歯科保健指導を行ったところ、歯科医院への受診行動の誘導に効果があった。
5.以上の結果をもとに、健康増進事業の見直しについて提言書を作成した。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201222031C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の自治体1618か所を対象に健康手帳の交付、健康教育、健康相談、機能訓練、骨粗鬆症検診、歯周疾患検診など主な健康増進事業の項目の実施状況に関するアンケート調査を実施し、市町村におけるその実態と課題を分析した。その結果、健康教育や機能訓練において、事業方法や対象者選定の見直しが必要であることを明らかにした。また骨粗鬆症検診にて、より骨折リスクが高い者を絞り込む自己記入方式チェック表を作成した。さらに歯周疾患検診で歯科保健指導を行うと、その後の歯科医院への受診行動の誘導に効果があることを示した。
臨床的観点からの成果
本研究では、市町村におけるポピュレーションアプローチである健康増進事業の実態とその課題を明らかにした。この情報は、地域における生活習慣病の一次予防、二次予防を考える上で、貴重な資料になると考えられる。また歯周疾患検診や骨粗鬆症検診におけるより良いスクリーニング方法を検討したことは、今後それぞれの検診の精度を高め、効率の良い疾患の早期発見、早期治療につながると思われる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究では、健康増進事業の市町村における実態把握を行い、特に健康教育や機能訓練において実施率が低く、事業の実施方法や対象者の選定を見直す必要があることなどを明らかにした。この結果をもとに、既存の健康増進事業実施要領の見直しへの提言書を作成した。これらの提言は、現在行われている健康増進事業を評価するうえで有用な資料として活用され、今後行われる健康増進事業の見直しに資すると期待される。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Doi Y, Ninomiya T, Hata J et al
Two risk score models for predicting incident type 2 diabetes in Japan
Diabetic Med  (2012)
原著論文2
Fukuhara M, Arima H, Ninomiya T et al
Impact of lower range of prehypertension on cardiovascular events in a general population: the Hisayama Study
J Hypertens  (2012)
原著論文3
Ikeda F, Ninomiya T, Doi Y et al
Smoking cessation improves mortality in Japanese men: the Hisayama Study
Tob Control  (2011)
原著論文4
Yoshida D, Ninomiya T, Doi Y et al
Prevalence and causes of functional disability in an elderly general population of Japanese: the Hisayama Study
J Epidemiol  (2012)
原著論文5
Gotoh S, Doi Y, Hata J et al
Insulin resistance and the development of cardiovascular disease in a Japanese community: the Hisayama Study
J Atheroscler Thromb  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-06-23

収支報告書

文献番号
201222031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,410,000円
(2)補助金確定額
14,410,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 284,320円
人件費・謝金 7,682,552円
旅費 2,410,590円
その他 2,727,990円
間接経費 1,310,000円
合計 14,415,452円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-