包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究

文献情報

文献番号
201222001A
報告書区分
総括
研究課題名
包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究
課題番号
H22-心筋-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原 譲二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳卒中統合イメージングセンター)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学医学部脳神経外科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学医学部脳神経外科)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部救急医学講座)
  • 小野 純一(千葉県循環器病センター脳神経外科)
  • 宮地 茂(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座脳血管内治療学)
  • 永田 泉(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座神経病態制御外科学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学医学部公衆衛生学)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター脳血管内科)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立循環器病研究センター研究開発基盤センター先進医療・治験推進部)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢社会を迎え、地域医療が崩壊しつつある本邦にあって、年々増加する救急要請への対策は喫緊の課題である。緊急性の高い脳卒中治療については、医療機関の集約化、広域化と医療機関同士の連携強化は避けて通れない。地域における脳卒中の各疾患(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)の治療件数、成績、治療を担当する専門医数をhospital-based, population-basedで比較するとともに、医師の勤務状況と疲労度について検証する。
研究方法
本年度は、1)日本脳神経外科学会、神経学会の教育訓練施設を対象に、包括的脳卒中センターの推奨要件(Stroke 36: 1597-1616, 2005)に該当する「診療施設調査」の解析、2)初年度に施行した脳卒中診療施設調査の結果から、米国ブレイン・アタック連合が提唱した、包括的脳卒中センターの推奨要件に該当する25項目を満たす項目数を、当該診療施設の包括的脳卒中センタースコア(Comprehensive Stroke Center Score: CSC Score)として、平成23年度に施行した「脳卒中救急疫学調査」から得られた入院時死亡率との関係を、施設要因と患者要因を考慮して(hierarchical logistic regression analysis)検討した。
結果と考察
1)包括的脳卒中センターの推奨要件に関する、5つの大分類(専門的な人員、診断技術、外科・介入治療、インフラストラクチャー、教育・研究プログラム)中で、診断技術を除いた4つの大分類の合計スコアに、施設の都市圏分類間で有意差を認めた。2)256病院から、53,170症例の脳卒中症例を抽出した。入院時死亡率は、脳梗塞(n=32,671)7.8%、脳内出血(n=15,699)16.8%、くも膜下出血(n=4,934)28.1%であった。全ての病型において、CSC scoreは、入院時死亡率の減少に有意に関係した。
結論
今回の研究から、現在の脳卒中診療施設の中で、包括的脳卒中センターの推奨要件に関する地域格差が厳然と存在することが明らかとなった。「脳卒中救急疫学調査」では、脳卒中センターの機能が高い施設ほど、入院死亡率が軽減することが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201222001B
報告書区分
総合
研究課題名
包括的脳卒中センターの整備に向けた脳卒中の救急医療に関する研究
課題番号
H22-心筋-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 中川原 譲二(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳卒中統合イメージングセンター)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学医学部脳神経外科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学医学部脳神経外科)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部救急医学講座)
  • 小野 純一(千葉県循環器病センター脳神経外科)
  • 宮地 茂(名古屋大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座脳血管内治療学)
  • 永田 泉(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座神経病態制御外科学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学医学部公衆衛生学)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター脳血管内科)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立循環器病研究センター研究開発基盤センター先進医療・治験推進部)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢社会を迎え、地域医療が崩壊しつつある本邦にあって、年々増加する救急要請への対策は喫緊の課題である。地域における脳卒中の各疾患(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)の治療件数、成績、治療を担当する専門医数をhospital-based, population-basedで比較するとともに、医師の勤務状況と疲労度について検証する。
研究方法
1)日本脳神経外科学会、神経学会の教育訓練施設を対象に、包括的脳卒中センターの推奨要件(Stroke 36: 1597-1616, 2005)に該当する「診療施設調査」を施行した。2)脳卒中診療担当医の勤務状況と疲労度調査:約10000人の脳卒中担当専門医にMBIおよびSF-36の一部の設問にてアンケートを行った。3)初年度に施行した脳卒中診療施設調査の結果から、包括的脳卒中センターの推奨要件に該当する25項目を満たす項目数を、当該施設の包括的脳卒中センタースコア(Comprehensive Stroke Center Score: CSC Score)として、平成23年度に施行した「脳卒中救急疫学調査」から得られた入院時死亡率との関係を、施設要因と患者要因を考慮して検討した。
結果と考察
1)包括的脳卒中センターの推奨要件に関する、5つの大分類(専門的な人員、診断技術、外科・介入治療、インフラストラクチャー、教育・研究プログラム)中で、診断技術を除いた4つの大分類の合計スコアに、施設の都市圏分類間で有意差を認めた。2)100例の予備的解析では46%がburn out syndromeに該当する可能性があった。やりがいに関しては平均3.6(基準2.2)であった。被調査者の平均睡眠時間5.74時間で、6時間以下の睡眠時間はburn out syndromeになるリスク因子であった。3)256病院から、53,170症例の脳卒中症例を抽出した。入院時死亡率は、脳梗塞(n=32,671)7.8%、脳内出血(n=15,699)16.8%、くも膜下出血(n=4,934)28.1%であった。全ての病型において、CSC scoreは、入院時死亡率の減少に有意に関係した。
結論
今回の研究から、現在の脳卒中診療施設の中で、包括的脳卒中センターの推奨要件に関する地域格差が厳然と存在することが明らかとなった。脳卒中診療に関わる専門医の約半数の医師が燃えつき症候群の疑いがあり、医師の負担軽減のためには、睡眠時間の増加、労働時間の軽減が必要と考えられた。「脳卒中救急疫学調査」では、脳卒中センターの機能が高い施設ほど、入院死亡率が軽減することが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201222001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本邦の脳卒中診療の基幹施設が、高度の脳卒中医療を行う「包括的脳卒中センター」としての機能を充足する割合を調査し、厳然とした地域格差があることを明らかとした。また脳卒中診療医が高率に「燃え尽き症候群」に該当することが明らかとなった。
本邦の脳卒中診療の基幹施設を対象とし、DPC情報を利用した、大規模脳卒中診療データベースを構築した。診療施設、患者要因を考慮したアウトカムの評価を行い、脳卒中センターの機能が入院死亡率に影響を与えることを明らかとした。
臨床的観点からの成果
脳卒中医療のアウトカムを改善するためには、自施設の治療成績が全国の診療施設の中でどの位置にあるのかを明らかとする必要がある。我々は、研究参加施設に、脳卒中死亡率のフィードバックを行い、ベンチマーキングを行った。また脳卒中の病型ごとに、死亡率に影響する施設側の因子を同定することによって、今後、施設がリスク因子の改善に取り組むことによって、脳卒中死亡率を低減させることが可能となる。
ガイドライン等の開発
現在、論文を英文雑誌に投稿中である。脳卒中死亡率に大きな影響を与える施設のリスク因子が明らかとなれば、脳卒中治療ガイドライン等へ記載されることとなるであろう。米国では、一昨年から包括的脳卒中センターの認証が開始されており、国際的な比較も可能となるものと思われる。
その他行政的観点からの成果
脳卒中診療医の疲労度調査は、本邦の専門医を対象としたものでは、初めての大規模調査であり、今後専門医の労務管理に重要な情報を与えとともに、地方において進む、燃え尽き・立ち去り型の退職の防止に貢献できる可能性がある。
またDPC情報を用いた大規模脳卒中データベースの結果は、診療施設の要因によって、脳卒中死亡率が大幅に低減する可能性があり、今後診療報酬加算の改定などにおいて、重要な基礎資料となりうる。
その他のインパクト
本年の国際脳卒中学会で3演題発表した他、国内主要学会で多数発表した。本研究のあり方は、脳卒中のみならず今後循環器疾患を初めとした他領域へも応用可能であり、DPC 情報を用いた大規模データベースを医療政策や患者アウトカムの改善に向けて活用できる可能性を示した点で、大きなインパクトを持つものである。この成果を今後活用して、参加施設数を増加させ、ベンチマーキングを行うことにより、今後参加施設のアウトカムが向上することを検証することができれば、その効果は計り知れないものと思われる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
飯原弘二、西村邦宏、嘉田晃子、他
脳卒中急性期治療の課題-包括的脳卒中センターの整備に向けて
脳外誌  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201222001Z