学校健康教育におけるがんについての教育プログラムの開発研究

文献情報

文献番号
201221076A
報告書区分
総括
研究課題名
学校健康教育におけるがんについての教育プログラムの開発研究
課題番号
H24-がん臨床-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
植田 誠治(聖心女子大学 文学部)
研究分担者(所属機関)
  • 衞藤 隆(母子愛育会日本子ども家庭総合研究所)
  • 渡邉 正樹(東京学芸大学 教育学部)
  • 物部 博文(横浜国立大学 教育学部)
  • 助友 裕子(国立がん研究センター)
  • 杉崎 弘周(新潟医療福祉大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
6,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんは、日本人の死因の1位であるにもかかわらず、学校教育の中で、がんについて学ぶ機会は限られている。本研究の目的は、児童生徒のがんの意識と知識の実態と日本と諸外国の学校健康教育の動向を踏まえたうえで、学校健康教育におけるがんについての教育のあり方について総合的に検討するとともに、教師向け指導書と児童生徒用教材についての教育プログラムを開発することである。平成24年度においては、まず児童生徒のがんの意識と知識の実態と諸外国の学校健康教育の動向とその中でのがんに関する内容の位置づけを中心に明らかにした。
研究方法
全国の小学校5年生、中学校2年生、高等学校2年生の児童生徒を対象に、がんに関する意識と知識との調査を行った。調査は学校に依頼し学級単位で実施することとした。対象校の抽出には、全国の学校一覧名簿を用い、各都道府県を層とし、小学校、中学校、高等学校の在籍児童数に比例させて都道府県ごとの対象校の抽出を行った。以上により、全国から小学校213校、中学校222校、高等学校208校が選ばれた。2013年1月~2月に調査を実施し、有効回答数は、小学校5年生が2260部、中学校2年生が3058部、高校2年生が3821部であった。また、カナダ、米国、英国の政府機関ならびに非営利団体を対象とする半構造化インタビューを行い、学校健康教育プログラムとその中でのがんについての内容の位置づけについて検討した。
結果と考察
児童生徒を対象とした全国調査の主な結果は次のとおりである。
①がんについてこわいという印象は、小学生71.9%、中学生65.9%、高校生68.9%であった。
②「将来がんになると思う」については、小学生8.5%、中学生13.3%、高校生19.7%であり、学年進行で増加した。
③がんは「治療で治ると思う」とする者は、小学生25.8%、中学生24.0%、高校生22.8%であり、「予防できると思う」とする者は、小学生57.4%、中学生47.9%、高校生43.0%であり、学年進行とともに減少した。
④がんの治療方法について知っているものを複数選択させたところ、中学生は手術88.3%、抗がん剤77.8%、放射線治療64.2%、高校生は、手術88.3%、抗がん剤89.7%、放射線治療71.3%であった。
⑤該当年齢になったらがん検診を受けようと思っている者は、小学生77.8%、中学生68.1%、高校生67.2%であった。
⑥がんの検診を健康な人が受けると思っている者は、小学生37.7%、中学生60.7%、高校生68.2%であった。
⑦子宮頸がんのワクチンを知っているのは中高生女子は90%以上であり、男子は約半数であった。

諸外国の学校健康教育プログラムにおけるがんの内容の位置づけの主な結果は次のとおりである。
①カナダブリティッシュコロンビア州では、科学的根拠に基づいた5分野-たばこ、肥満、運動不足、偏った食生活、日焼け-を主とした予防教育プログラムが開発されており、Prevention Education Leaderによる学校への支援体制も認められた。
②米国では、がん協会がスポンサーとなり健康リテラシーを高めることに焦点をあてた学校健康教育内容規準を作成している。それに基づき、カリフォルニア州では、1)基本的な健康概念の修得、2)健康への影響の分析、3)確かな健康情報へのアクセス、4)コミュニケーションのとり方、5)意志決定、6)目標設定、7)健康を高める行動の実践、8)ヘルスプロモーションの8つからなる規準が示されている。そして飲酒・喫煙・薬物の内容や個人や地域の健康に関する内容において、がんの基本的概念を学ぶようになっているが、むしろ健康リテラシーを獲得するための典型教材として、がんを取り上げていく方法がとられている。
③米国カリフォルニア州では、医療関係の会社がスポンサーとなり、民間によるがんについての教育の学校への出張授業も行われている。
④英国においては、ヘルシースクールの活動により学校全体で健康へ取り組みが行われており、PSHE(人格,社会性と健康教育)という特別活動も行われているものの、それらの中で、積極的にがんが内容として取り扱われてはいない。
結論
今回調査された児童生徒のがんの意識と知識の結果を踏まえて、教師用ならびに児童生徒用教育プログラムを開発することが必要である。そして、日本の学校教育課程にがんについての内容を取り入れる際には、がんに対する恐怖を払拭したり、がんの予防に関する社会的な取り組みについてを含めていくこと、がんに関する三次予防から一次予防までを含んでいくこと,そしてがんを学習することによって健康リテラシーをも育成することなどの考慮が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221076Z