ATLの診療実態・指針の分析による診療体制の整備

文献情報

文献番号
201221063A
報告書区分
総括
研究課題名
ATLの診療実態・指針の分析による診療体制の整備
課題番号
H23-がん臨床-一般-022
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
塚崎 邦弘(独立行政法人国立がん研究センター東病院血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 俊樹(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
  • 飛内 賢正(独立行政法人国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科)
  • 宇都宮 與(公益財団法人慈愛会今村病院分院)
  • 鵜池 直邦(国立病院機構九州がんセンター血液内科)
  • 石澤 賢一(東北大学病院臨床試験推進センター)
  • 石田 陽治(岩手医科大学内科学講座血液・腫瘍内科分野)
  • 内丸 薫(東京大学医学研究所附属病院血液内科)
  • 田中 淳司(北海道大学大学院医学研究科血液内科学分野)
  • 石塚 賢治(福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科)
  • 石田 高司(名古屋市立大学大学院医学研究科腫瘍・免疫内科学)
  • 野坂生郷(熊本大学医学部附属病院がんセンター血液内科)
  • 今泉 芳孝(長崎大学病院血液内科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学医学部皮膚科学)
  • 河井 一浩(鹿児島大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野)
  • 天野 正宏(宮崎大学医学部感覚運動医学講座皮膚科学分野)
  • 大島 孝一(久留米大学医学部病理)
  • 岩永 正子(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATLはHTLV-1が病因の単一疾患であり、難治性でかつ多様な臨床病態をとる。ATLの予後予測と治療法の選択には、その自然史によって作成された臨床病型分類が有用とされるが、その予後は他の造血器腫瘍よりも不良であり、HTLV-1感染者におけるATL発症予防法は全く開発されていない。本研究では、塚崎ほかが分担研究者をつとめたH21-3次がん-一般-002(渡邉班)の追加課題で明示されたATL診療体制の問題点の改善を目指す。
研究方法
 ①全国の医療機関におけるATLの診療実態と治療成績の分析
昨年度の3調査結果と、1988~1998年に行われたATLの大規模全国実態・予後調査に関連する資料の問題点により、近年の診療技術に対応した新しい調査票案と研究計画書を作成する。
 ②ATLの発症形態による4病型分類の再検証
本研究参加施設での病型診断が困難、経過が非典型な症例を解析する。臨床病型について皮膚型の提唱の可能性の検討、HTLV-1感染者とくすぶり型ATLの識別のための末梢血ATL細胞の評価、リンパ腫型の病理再評価、慢性型の予後不良因子の再評価を行い、新規臨床・分子病態マーカーの探索的研究も行う。
 ③ATL診療ガイドライン(GL)の解説の作成
日本血液学会が作成中の造血器腫瘍診療GLと、日本皮膚科学会・日本皮膚悪性腫瘍学会が改訂した皮膚悪性腫瘍診療GLを検討する。その結果に基づいて、それぞれの専門医の協同での相互観点から、皮膚科と血液内科の学会によるGLについて、一般内科医・皮膚科医とATL専門医を対象として、複合的に幅広くその解説を取り纏める。
 ④患者の目線から見たATLに対する診療体制のあり方の確立
①、②、③を踏まえ、がん対策・HTLV-1/ATL対策のグループ、学会、患者団体とも連携し、研究の3年目には適切な診療体制の構築を目指す。
結果と考察
 ①国の医療機関におけるATLの診療実態と治療成績の分析
昨年度の3調査結果を取りまとめた。すなわちATL患者/HTLV-1キャリアを診ている血液内科・皮膚科医へのアンケートでは、多発地域と非多発地域では、その病型ごとの治療方針に少なからぬ差異があった。全国1000超例の後方視的解析と、1990年代からの3臨床試験登録276例による前方視的併合解析の結果では、それぞれ予後予測モデルを提唱できたが、いずれも予後良好群であっても生存期間中央値は16/14カ月と他の造血器腫瘍と比べて不良であった。その結果と、1988~1998に行われたATLの全国実態・予後調査資料の問題点の抽出により、近年の診療技術に対応した新しい調査票案を作成した。来年度にATL診療実態・予後の全国調査を再開する研究計画書を作成し、代表者の施設IRB承認後に、全国の血液内科・皮膚科への調査準備を進めた。
 ②ATLの発症形態による4病型分類の再検証
①の多数例での種々の病変の臨床病態による予後解析の評価と並行して、本研究参加施設における病型診断が困難、あるいは診断後の経過が非典型な症例を検討した。その中で皮膚病変を有するくすぶり型の一部が予後不良なこと、限局期リンパ腫型が予後良好なことなどが報告された。施設間での各病変の評価法などのばらつきも指摘されたので、症例の臨床・病理情報を持ち寄っての病態検討会を計画している。新規の臨床・分子病態マーカーの探索的研究と予後因子による層別化の開発も検討している。 
 ③ATL診療GLの解説の作成
血液学会が作成中でほぼ最終化したGLと、皮膚科学会が改訂したGLに関わっている分担研究者を主に、一般内科医・皮膚科医とATL専門医を対象とし、複合的に幅広くその解説を取りまとめる準備を進めた。更にはその解説の概要書を患者向けに作成することとした。
 ④患者の目線から見たATLに対する診療体制のあり方の確立
①、②、③での対策を踏まえて、本班と同時期に始まった(H23-がん臨床-一般-020)内丸班と合同班会議を2回開催して、ATLを含むHTLV-1関連疾患の診療体制確立の方策を協議した。
 考察:難治性で多様な病態をとるATLの全国調査により、近年の医療実態にそったATLの病態・診療実態が明らかとなり、約25年前のATLの実態と近年のATLの実態の違いや地域毎の比較、血液内科・皮膚腫瘍科におけるATL診療実態の比較などで、ATL診療における新たな知見が期待できる。病型見直しとGLの解説の取り纏めを血液内科/皮膚科医が病理学、ウイルス腫瘍学、疫学の専門医と連携して行い、ATL診療指針の見直しができれば、患者保健医療の向上への大きな寄与が予想される。
結論
本研究では、現在整備されつつあるがん対策・HTLV-1/ATL対策のグループ、学会、患者団体とも協同し、患者に分かり易く安心なATL診療のネットワークを構築する。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201221063Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,500,000円
(2)補助金確定額
20,498,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,594,168円
人件費・謝金 353,462円
旅費 3,864,360円
その他 956,646円
間接経費 4,730,000円
合計 20,498,636円

備考

備考
自己資金額636円

公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
-