生活習慣や心理社会的要因などががん患者の予後や療養生活の質に与える影響を調べる乳がん患者コホート研究

文献情報

文献番号
201221034A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣や心理社会的要因などががん患者の予後や療養生活の質に与える影響を調べる乳がん患者コホート研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-035
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山本 精一郎(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供研究部医療情報評価研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 溝田 友里( 独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供研究部医療情報評価研究室 )
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)
  • 岩崎 基(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部)
  • 澤木 正孝(愛知県がんセンター中央病院 乳腺科)
  • 平 成人(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん患者のサバイバーシップ支援のため、乳がん患者に対する大規模前向きコホート研究を行うことにより、様々な要因(食事や運動など生活習慣、就労や社会活動、サポート、ストレス、困難、生きがいなど心理社会的要因等)が予後(再発、死亡等)やQOLに与える影響を疫学的に調べることである。また、その成果を実際の患者支援の実践につなげるため、患者、家族、医療関係者、行政等に研究成果を提供するとともに、再発予防のための患者の生活指針の作成など、エビデンスに基づいたサバイバーシップ支援の具体的なあり方を提案する。
本研究では、前身となる研究班において開始した乳がん患者前向きコホート研究の登録を続けるとともに、新たなコホートの立ち上げも行い、登録数をこれまでの557人から2,000人以上に増やし、予後の追跡を行う。
研究方法
複数の多施設共同臨床試験との共同研究や、単施設におけるコホート研究として、女性乳がん患者の大規模コホート研究を実施している。対象者に生活習慣や心理社会的側面、QOL等に関する自記式質問票を配布し、各時点(乳がん診断前、術直後、術後1~5年まで毎年)について回答してもらう。予後(再発、死亡)情報は、共同研究である臨床試験やカルテ情報から収集し、各要因と予後やQOLとの関連を検討する。
乳がん患者を対象とする多施設共同臨床試験の共同研究としては、現在3つのコホート研究「乳がん患者コホート研究05(コホート05)」、「乳がん患者コホート研究06(コホート06)」、「乳がん患者コホート研究07(コホート07)」を実施しており、国立がん研究センター中央病院の日常臨床においても、「乳がん患者コホート研究NCC(コホートNCC)」を実施し、データ収集を進める。また、新たなコホートの立ち上げを行い、登録を開始する。全体として5つのコホートで数千人規模の登録を目標とする。
また、乳がん患者コホートの比較対照群として一般住民コホートも実施している。さらに、研究に並行して、電話相談を主とする患者支援や、研究班ウェブサイト制作などを実施し、研究成果や乳がんに関する情報を効果的に普及させる方法の開発を行う。
結果と考察
本乳がん患者コホート研究は、平成19年度より6年間継続している。研究計画や質問票作成後、H19年末より対象者を登録した。開始当初は1つのコホート(コホート05)のみで5人/月程度の登録数であったが、その後、複数の臨床試験との共同研究(コホート06、07)や、国立がん研究センターの日常診療におけるコホート(コホートNCC)を開始した。今年度(H24年度)は、登録数を順調に伸ばし、4つのコホートで50~80人/月ペースで登録を進めた。さらに、本年度は新たなコホートを立ち上げ(コホート瀬戸内)、H25年2月より登録を開始した。5つのコホート全体で1年間に779人を登録し、合計登録患者数は2,655人(H25年3月末現在)と、研究開始当初の目標であった世界最大級のがん患者コホートとなった。
今年度、新たに開始したコホート瀬戸内は登録予定数2,000人であり、新たなコホートのスタートにより、さらに登録数を増やすことが可能になる。コホート研究におけるサンプルサイズは、その質を規定する重要な因子の一つである。現時点でも、登録数2,500人超と、本研究は世界最大規模の乳がん患者コホートとなっているが、さらにサンプルサイズを大きくすることで、より小さい効果の有無も調べることが可能となり、より良質な研究結果を得ることが可能となる。
また、乳がん患者コホートにおける患者の生活習慣や心理社会的要因などの特徴を評価するための対照群として、一般住民を対象とするコホート研究をH21年度から開始した。今年度は、対象地域を増やし、新たに2,221人を登録し、合計5,013人(H25年3月末現在)からデータを得て、がんの発症や死亡など追跡情報を取得する体制も整えた。
これまでに収集した登録時および登録1年後の追跡データを用い、横断的解析を行った結果、患者の食事や身体活動の現状や社会生活における困難が明らかになるとともに、ポジティブな変化や成長を感じることや生きがいを有することと短期的QOLとが関連していることなどが明らかになった。
今年度は、これらの研究の横断的な解析結果を、論文や学会での報告、自治体がん対策担当者や地域住民向け講演会、研究班ウェブサイトなどを通じて積極的に発信した。
結論
今年度までに計5つの乳がん患者コホートについて対象者登録体制を確立し、現時点でも2,500人超と世界最大級のコホートとなった。
今後、予後情報を収集し、各要因と予後情報との関連を検討することにより、乳がん患者の予後や長期的QOLに関連する具体的な要因を明らかにすることが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221034B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣や心理社会的要因などががん患者の予後や療養生活の質に与える影響を調べる乳がん患者コホート研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-035
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山本 精一郎(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供研究部医療情報評価研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 溝田 友里(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん情報提供研究部医療情報評価研究室 )
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)
  • 岩崎 基(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部)
  • 澤木 正孝(愛知県がんセンター中央病院 乳腺科)
  • 平 成人(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、がん患者のサバイバーシップ支援のため、乳がん患者に対する大規模前向きコホート研究を行うことにより、様々な要因(食事や運動など生活習慣、就労や社会活動、サポート、ストレス、困難、生きがいなど心理社会的要因等)が予後(再発、死亡等)やQOLに与える影響を疫学的に調べることである。また、その成果を実際の患者支援の実践につなげるため、患者、家族、医療関係者、行政等に研究成果を提供するとともに、再発予防のための患者の生活指針の作成など、エビデンスに基づいたサバイバーシップ支援の具体的なあり方を提案する。
本研究では、前身となる研究班において開始した乳がん患者前向きコホート研究の登録を続けるとともに、新たなコホートの立ち上げも行い、登録数をこれまでの557人から2,000人以上に増やし、予後の追跡を行う。
研究方法
複数の多施設共同臨床試験との共同研究や、単施設におけるコホート研究として、女性乳がん患者の大規模コホート研究を実施している。対象者に生活習慣や心理社会的側面、QOL等に関する自記式質問票を配布し、各時点(乳がん診断前、術直後、術後1~5年まで毎年)について回答してもらう。予後(再発、死亡)情報は、共同研究である臨床試験やカルテ情報から収集し、各要因と予後やQOLとの関連を検討する。
乳がん患者を対象とする多施設共同臨床試験の共同研究としては、3つのコホート研究「乳がん患者コホート研究05(コホート05)」、「乳がん患者コホート研究06(コホート06)」、「乳がん患者コホート研究07(コホート07)」を実施しており、データ収集を進める。また、新たなコホートの立ち上げを行う。全体として数千人規模の登録を目標とする。
また、乳がん患者コホートの比較対照群として一般住民コホートも実施している。さらに、研究に並行して、電話相談を主とする患者支援や、研究班ウェブサイト制作などを実施し、研究成果や乳がんに関する情報を効果的に普及させる方法の開発を行う。
結果と考察
本乳がん患者コホート研究は、平成19年度より6年間継続している。研究計画や質問票作成後、H19年末より対象者を登録した。開始当初は1つのコホート(コホート05)のみで5人/月程度の登録数であったが、その後、複数の臨床試験との共同研究(コホート06、07)を開始し、前研究期間(H19~21年度)までに557人を登録した。
本研究期間(H22~24年度)には、国立がん研究センターの日常診療におけるコホート(コホートNCC)および乳がん登録の共同研究としてのコホート(コホート瀬戸内)の2つのコホートを新たに立ち上げた。登録数を順調に伸ばし、H24年度には50~70人/月ペースで登録を進めた。本研究期間の3年間で新たに2,098人を登録し、合計登録患者数は2,655人(H25年3月末現在)と、世界最大級のがん患者コホートとなった。
引き続き登録を進めることにより、さらに登録数を増やすことが可能になる。コホート研究におけるサンプルサイズは、その質を規定する重要な因子の一つである。現時点でも、登録数2,500人超と、本研究は世界最大規模のがん患者コホートとなっているが、さらにサンプルサイズを大きくすることで、より小さい効果の有無も調べることが可能となり、より良質な研究結果を得ることが可能となる。
また、乳がん患者コホートにおける患者の対照群として、一般住民を対象とするコホート研究をH21年度から開始している。本研究期間(H21~24年度)は、対象地域を増やし、新たに3,344人を登録し、合計5,013人(H25年3月末現在)からデータを得て、がんの発症や死亡など追跡情報を取得する体制も整えた。
これまでに収集した登録時および登録1年後の追跡データを用い、横断的解析を行った結果、患者の食事や身体活動の現状や社会生活における困難が明らかになるとともに、ポジティブな変化や成長を感じることや生きがいを有することと短期的QOLとが関連していることなどが明らかになった。
これらの研究の横断的な解析結果を、論文や学会での報告、自治体がん対策担当者や地域住民向け講演会、研究班ウェブサイトなどを通じて積極的に発信した。
結論
乳がん患者コホート研究は、前研究期間(H19~21年度)までに3つのコホートを立ち上げ557人を登録していたが、本研究期間(H22~24年度)には、新たに2つのコホートを新たに立ち上げ、3年間でに2,098人を登録し、合計登録患者数は2,655人(H25年3月末現在)と世界最大級のがん患者コホートとなった。
今後、予後情報を収集し、各要因と予後情報との関連を検討することにより、乳がん患者の予後や長期的QOLに関連する具体的な要因が明らかになる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2014-03-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201221034C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん患者の予後と生活習慣や心理社会的側面との関連を明らかにするエビデンスレベルの高い研究は世界でもまだ始まったばかりであり、国内においては、他がん種も含め全国に渡るがん患者コホートは本研究のみである。本研究は研究期間の3年間に2,098人を登録し、2013年3月末現在合計2,655人と、世界でも最大級の乳がん患者コホートとなった。対象患者の予後追跡体制も整えてあるため、本研究の追跡終了時には、日本、アジアのみならず世界でも非常に有用なデータを公開していくことが可能となる。
臨床的観点からの成果
がんの再発予防方法を知りたいという患者からの要望は強いが、世界的にもエビデンスレベルの高い研究は始まったばかりで、がん患者の再発予防のための国際的指針(WCRF/AICR, 1997)でも、再発予防のための明確な推奨が出せずにいる。しかし、本研究により、各栄養素、身体活動、代替療法等様々な要因に関して、予後に関連する要因が具体的に明らかになるため、患者の予後改善につなげることが可能になる。
ガイドライン等の開発
研究代表者の山本精一郎、研究分担者の岩崎基、平成人が日本乳癌学会編「患者さんのための乳がん診療ガイドライン 2012年版」(金原出版株式会社,2012)、日本乳癌学会編「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン②疫学・診断編2011年版」(金原出版株式会社,2011)の疫学担当作成委員となり、本研究による乳癌再発に関連する要因についての最新研究レビュー結果をガイドラインに反映させた。
その他行政的観点からの成果
がん患者のサバイバーシップ支援の中で、就労は行政施策でも近年重点的に取り組まれているが、比較的若い患者や男性患者が中心となる。本研究では、就労に加え、定年後の患者や、多くが主婦である乳がん患者も含めた、全てのがん患者にとって重要な要素となり得る、社会活動、生きがいなどにも焦点を当てている。患者の予後追跡期間終了後には、予後や長期的QOLとの関連から、各要因の重要性を改善効果の大きさとともに示すことが可能となり、エビデンスに基づいた患者への生活指針、支援指針を作成することができる。
その他のインパクト
研究班ウェブサイトを2011年に立ち上げ、月1回のペースで更新し、本研究に関する情報提供や世界の最新知見の紹介等を行っている。またCSPOR-BC(本研究の共同研究グループ)と日本乳癌学会との共催による公開サテライトシンポジウム「日本から本当にインパクトあるエビデンスを発信するために」(2011,9,3)、「臨床試験の結果を吟味する-このデータはどう読むべきか-」(2012,6,29)、平成22年度第15回在宅ケア連携カンファレンス(2011,1,13)において、本研究に関する情報発信を行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mizota Y, Yamamoto S
Prevalence of Breast Cancer Risk Factors in Japan.
Jpn J Clin Oncol. , 42 (11) , 1008-1012  (2012)
原著論文2
溝田友里、山本精一郎
がん患者コホート研究:予後改善へのエビデンス.
医学のあゆみ , 241 (5) , 384-390  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201221034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
14,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,323,988円
人件費・謝金 1,515,618円
旅費 2,836,970円
その他 7,323,424円
間接経費 0円
合計 14,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-