進行卵巣がんに対する分子標的薬の国際共同・医師主導治験

文献情報

文献番号
201221029A
報告書区分
総括
研究課題名
進行卵巣がんに対する分子標的薬の国際共同・医師主導治験
課題番号
H22-がん臨床-一般-030
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
勝俣 範之(日本医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 波多江 正紀(鹿児島市立病院 産婦人科)
  • 藤原 恵一(埼玉医科大学 婦人科、婦人科腫瘍科)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部臨床統計部門)
  • 青木 大輔(慶応義塾大学医学部 産婦人科学)
  • 八重樫 伸生(東北大学 大学院医学系研究科 婦人科学分野)
  • 紀川 純三(鳥取大学医学部 生殖機能医学)
  • 杉山 徹(岩手医科大学医学部 産婦人科)
  • 竹原 和宏(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター婦人科)
  • 野河 孝充(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
23,415,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、進行上皮性卵巣癌、腹膜癌に対して、標準的化学療法(カルボプラチン/パクリタキセル)単独と比べて、化学療法+同時併用Bevacizumab、化学療法+同時併用Bevacizumabに引き続くBevacizumab単独維持投与の有用性を評価するものである。卵巣癌に対するBevacizumab投与のランダム化第三相試験としては、世界初の研究である。試験実施体制は、米国NCI傘下の公的臨床試験グループであるGOG(Gynecologic Oncology Group)のプロトコール(GOG218)へ、日本から国際共同・医師主導治験として参加し、Bevacizumab の卵巣癌に関する日米同時承認取得を目指す。
研究方法
[試験デザイン]多施設共同国際ランダム化第III相比較試験
[エンドポイント]プライマリーエンドポイント:全生存期間、セカンダリーエンドポイント:無増悪生存期間、腫瘍縮小効果、毒性、生活の質(QOL)、トランスレーショナル研究
[対象症例]
1) 組織学的に証明された上皮性卵巣癌、または、腹膜癌で、FIGO Stage IIIで残存腫瘍径が1cmを越える または、FIGO Stage IV
2) 以下の組織径を有する上皮性癌:漿液性腺癌、類内膜腺癌、粘液性腺癌、未分化癌、明細胞腺癌、混合型腺癌、移行上皮癌、悪性ブレンナー腫瘍、分類不能腺癌
3) Performance Status (PS) 0, 1, 2
4) 切除・診断・Staging目的の初回手術から12週以内であること
5) 測定可能病変は問わない
6) 臓器機能が保たれていること
7) 試験参加、かつ個人情報取得に関して、本人または代理人の署名付きの同意が得られていること
結果と考察
我が国としては、平成24年(2012年)まで施設監査・モニタリング、追跡調査を行い、日本人44名のデータを解析し、治験総括報告書を作成した(別紙)。
有効性の結果として、無増悪生存期間としては、
Kaplan-Meier法により推定した無増悪生存期間の中央値(月、95%CI)はArm Iでは17.45 (7.92 - 17.45)であった。一方、Arm II及びArm IIIではいずれも増悪の認められない割合が0.50に達しなかったため、中央値は得られなかった。全生存期間Kaplan-Meier法により推定した生存期間の中央値(月、95%CI)はいずれの群においても生存率が0.50に達しなかったため、中央値は得られなかった。安全性の結果としては、発現率の高い有害事象は、いずれの治療群においても特に高い発現率(いずれも75.00%以上)がみられた有害事象は、脱毛(頭皮または全身)、悪心、食欲不振、白血球、ヘモグロビン、血小板、好中球及び神経障害: 感覚性であった。G3-4の有害事象は、いずれの治療群も白血球(Arm I 85.00%、Arm II 91.67%、Arm III 83.33%)、好中球(Arm I 95.00%、Arm II 100.00%、Arm III 100.00%)で発現率が高かった。G3-5の副作用は、いずれの治療群も白血球(Arm I 85.00%、Arm II 91.67%、Arm III 83.33%)、好中球(Arm I 95.00%、Arm II 100.00%、Arm III 100.00%)で発現率が高かった。重篤有害事象(SAE)は、7例14件に発生したが、試験全体のSAE報告数775件の1.8%に相当するため、極めて少ないSAE報告であった。SAEのうちわけとして、発熱性好中球減少症5件、血栓/塞栓症1件、消化管穿孔1件、嘔吐1件、脱水1件、皮疹1件、消化管閉塞1件、大腸炎1件、胆嚢炎1件、原発性アルドステロン症1件であったが、死亡に至るケースはなかった。日本人での安全性は十分に確認されたと言える。
日本人データ44名の結果とともに、2012年10月5日に医薬品総合機構に承認申請を提出した。2013年度には、医薬品総合機構からの施設・データセンターに対する査察を予定している。
結論
進行卵巣がんに対するBevacizumabの有用性を検討するランダム化比較試験に国際共同医師主導治験として参加している。これまでに日本から44例登録。平成21年8月10日予定登録数を満たし登録終了となった。計1873症例が登録された。日本人44名のデータを解析し、2012年10月5日に医薬品総合機構に承認申請を提出した。

F.健康危険情報
本研究に、現在までに44例が登録されて、これまでに国内より、9例のSAE(重篤な有害事象)が報告されている(結果参照)。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221029B
報告書区分
総合
研究課題名
進行卵巣がんに対する分子標的薬の国際共同・医師主導治験
課題番号
H22-がん臨床-一般-030
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
勝俣 範之(日本医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 波多江正紀(鹿児島市立病院 産婦人科)
  • 藤原恵一(埼玉医科大学 婦人科、婦人科腫瘍科)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部臨床統計部門)
  • 青木大輔(慶應義塾大学医学部 産婦人科学)
  • 八重樫伸生(東北大学大学院医学系研究科 婦人科学分野)
  • 紀川純三(鳥取大学医学部 生殖機能医学)
  • 杉山徹(岩手医科大学医学部 産婦人科)
  • 竹原和宏(独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター婦人科)
  • 野河孝充(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、進行上皮性卵巣癌、腹膜癌に対して、標準的化学療法(カルボプラチン/パクリタキセル)単独と比べて、化学療法+同時併用Bevacizumab、化学療法+同時併用Bevacizumabに引き続くBevacizumab単独維持投与の有用性を評価するものである。卵巣癌に対するBevacizumab投与のランダム化第三相試験としては、世界初の研究である。試験実施体制は、米国NCI傘下の公的臨床試験グループであるGOG(Gynecologic Oncology Group)のプロトコール(GOG218)へ、日本から国際共同・医師主導治験として参加し、Bevacizumab の卵巣癌に関する日米同時承認取得を目指す。
研究方法
[試験デザイン]多施設共同国際ランダム化第III相比較試験
[エンドポイント]プライマリーエンドポイント:全生存期間、セカンダリーエンドポイント:無増悪生存期間、腫瘍縮小効果、毒性、生活の質(QOL)、トランスレーショナル研究
[対象症例]
1) 組織学的に証明された上皮性卵巣癌、または、腹膜癌で、FIGO Stage IIIで残存腫瘍径が1cmを越える または、FIGO Stage IV
[治療方法]以下の3群に割り付ける
Arm I (標準的化学療法群)
化学療法*(21日ごと、6 サイクル)+プラセボ**(21日ごと、2サイクル最初より開始し、5サイクル投与)に続いて、プラセボ**(21日ごと、16サイクル投与)
Arm II (同時併用Bevacizumab群)
化学療法(21日ごと、6 サイクル)+ Bevacizumab**(21日ごと、2サイクル最初より開始し、5サイクル投与)に続いて、プラセボ(21日ごと、16サイクル投与)
Arm III (同時併用+維持療法Bevacizumab群)
化学療法(21日ごと、6 サイクル)+ Bevacizumab(21日ごと、2サイクル最初より開始し、5サイクル投与)に続いて、Bevacizumab(21日ごと、16サイクル投与)
*化学療法:パクリタキセル 175mg/m2 静注3時間投与後、 カルボプラチン AUC 6 静注30分投与 day1(注: ドセタキセル 75mg/m2 静注1時間投与をパクリタキセルの代用として可)
**Bevacizumab / プラセボ: 15mg/kg静注day 1
結果と考察
平成19年11月6日独立行政法人医薬品医療機器総合機構へ治験届提出。平成20年1月登録開始。平成21(2009)年8月10日に登録終了した。治験全体として日本から44症例を登録、米国、韓国と合わせて計1873例が登録された。本試験の研究結果は、2010年6月7日ASCO(米国臨床腫瘍学会)Plenary sessionにて本臨床試験の結果が発表され、プライマリーエンドポイントである無増悪生存期間(PFS)において、Arm Iに対して、Arm IIIで、PFS中央値を3.8ヶ月延長した(p<0.0001)。さらに、2012年にNew England Journal of Medicine誌へ掲載された(NEJM 2011;365:2473-83)。我が国としては、2012年まで施設監査・モニタリング、追跡調査を行い、日本人44名のデータを解析し、2012年10月5日に医薬品総合機構に承認申請を提出した。2013年度には、医薬品総合機構からの施設・データセンターに対する査察を予定している。
結論
進行卵巣がんに対するBevacizumabの有用性を検討するランダム化比較試験に国際共同医師主導治験として参加している。これまでに日本から44例登録。平成21年8月10日予定登録数を満たし登録終了となった。計1873症例が登録された。日本人44名のデータを解析し、2012年10月5日に医薬品総合機構に承認申請を提出した。本研究は、医師主導治験の結果、承認申請まで至った我が国初の例であると思われる。今後、アカデミア中心の臨床開発として、さらに医師主導治験を推進していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2013-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221029C

成果

専門的・学術的観点からの成果
進行卵巣癌に対して、標準的な化学療法とベバシズマブを併用し、さらにベバシズマブによる維持療法を行うことで、無増悪生存期間が延長することが証明された。本試験は、米国NCI(国立がん研究所))傘下の臨床試験グループGOG(Gynecologic Oncology Group)のプロトコール(GOG218)へ、日本から本邦初の国際共同・医師主導治験として参加した。本試験結果は、New England Journal of Medicine誌へ掲載された(NEJM 2011;365:2473-83)。
臨床的観点からの成果
卵巣癌患者に対して、新たな標準的薬物治療が確立されることになる。日米での公的臨床試験に基づく卵巣癌効能に対する同時期の承認申請・取得が得られることになる。その結果、卵巣癌に対する治療成績向上への国際貢献に結びつくことになり、また海外とのドラッグラグ解消の糸口となる可能性がある。
ガイドライン等の開発
本臨床試験の結果、米国でのガイドラインが改訂された。
NCCNガイドライン(米国)
http://www.nccn.org/clinical.asp
我が国のガイドライン(日本婦人科腫瘍学会)も2014年には改訂版が出版される予定であり、その中に引用される予定である。
その他行政的観点からの成果
本試験は、医師主導治験初の国際共同試験であり、医師主導治験の活性化、また、国際共同臨床試験を推進させるための基盤整備の充実、参加施設の臨床・研究レベルの向上2012年10月5日に医薬品総合機構に承認申請を提出した。さらに、婦人科領域初の医師主導治験であり、当該領域の体制整備、人材育成にも貢献したと考えられる。
その他のインパクト
メディカルトリビューン誌掲載2010/3/18
日経メディカルオンライン掲載
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2010/201006/515464.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201210/527122.html

発表件数

原著論文(和文)
27件
原著論文(英文等)
36件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
10件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
薬剤の承認申請
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
勝俣範之
米国多施設共同研究グループへの参加
腫瘍内科 , 2 (3) , 220-225  (2008)
原著論文2
Keiichi Fujiwara, MD, PhD, Noriyuki Katsumata, MD, PhD, and Takashi Onda, MD, PhD
Dose-Dense Chemotherapy and Neoadjuvant Chemotherapy for Ovarian Cancer
ASCO educational book , 349-354  (2012)
原著論文3
勝俣範之
ここまで進歩した外来がん化学療法婦人科癌
日本医事新報 , 4627 , 61-64  (2012)
原著論文4
Trimble EL, Fujiwara K et al.
Improving cancer outcomes through international collaboration in academic cancer treatment trials.
Journal of Clinical Oncology , 27 (30) , 5109-5114  (2009)
10.1200/JCO.2009.22.5771.

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201221029Z