進行頭頸部がんに対する化学放射線療法を中心とした集学的治療の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201221016A
報告書区分
総括
研究課題名
進行頭頸部がんに対する化学放射線療法を中心とした集学的治療の開発に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 正人(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田原 信(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 清田尚臣(神戸大学医学部)
  • 全田貞幹(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 本間明宏(北海道大学医学部)
  • 松浦一登(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター)
  • 岩江信法(兵庫県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,546,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の主たるプロトコールとして進行頭頸部がんを対象に、S-1(TS-1)とCisplatin(CDDP)および放射線同時併用療法の有効性と安全性を第II相試験にて確認し、次の第Ⅲ相試験にて標準治療であるCDDP単独化学放射線療法に対する優越性を検証して新たな標準治療を確立する。第II相試験終了後、CDDP+S-1併用化学放射線療法の、CDDP併用化学放射線療法に対する優越性を検証するランダム化比較第Ⅲ相試験をおこない標準治療の確立を目指す。さらに、進行頭頸部癌に対する導入化学療法、術後の化学放射線療法についてJCOGプロトコールを作成する準備を行う。同時に、頭頸部がんに対する化学放射線療法の標準化のためのシンポジウムを行い今後の新規治療開発に関して検討する。
研究方法
全体計画:根治切除不能な局所進行頭頸部がんに対するCDDP+S-1を同時併用する化学放射線療法の第Ⅱ相試験(JCOG0706)を行い追跡調査により生存割合を検討する。JCOG0706に関する;研究期間:登録期間:2年、追跡期間:登録終了後3年、総研究期間:5年 主たる解析終了後も、secondary endpointsである全生存期間や晩期有害事象評価する目的で、登録終了後3年間を追跡期間とし、追跡期間終了後にすべてのエンドポイントについての最終解析を行う。
年次計画に従って、平成24年度は、主たる解析の後、生存追跡をおこなった。その結果は平成24年度のASCOで発表された。
化学放射線療法の標準化に関するシンポジウムを行った。今後導入される分子標的薬剤に関する検討も行い新規治療開発に関する検討を行った。【術後ハイリスク症例に対する化学放射線療法】
JCOG1008「局所進行頭頸部扁平上皮癌術後の再発High-Risk患者に対する3-Weekly CDDPを同時併用する術後補助化学放射線療法とWeekly CDDPを同時併用する術後補助化学放射線療法に関するランダム化第Ⅱ/Ⅲ相試験」プロトコールを作成しコンセプト承認となりプロトコールを作成した。平成24年度に登録開始となる。
結果と考察
JCOG0706症例登録の完了と主たる解析
症例登録は2010年7月2日で予定症例数45例が達成された。これらの症例は2013年まで追跡される。対象症例が「根治切除不能」であるので、病期としてはN2c(両側に転移リンパ節がある)症例が21例と多くを占めた。Tに関してはT4が22例であり、局所進行例が多く登録された。実施に当たっては胃瘻増設を推奨しており、32例で胃瘻が増設された。救済手術は6例に施行されたが原発部位の切除は2例のみで4例は頸部に残存したリンパ節の摘出にとどまった。主たる解析は平成24年2月に行われた。Primary endpointである腫瘍完全消失割合は、中央判定の結果64.4%であった。その内訳は、CR8例、goodPR21例、PR9例であった。2012年11月のモニタリングレポートでは3年の全生存割合は67.7%、3年無増悪生存割合は60.0%であった。グレード3以上の副作用は粘膜炎が46.7% 、嚥下障害が46.7%、食欲不振が42.2%、放射線皮膚炎が26.7%、好中球現象が26.7%であり重篤な副作用はなかった。
結論
JCOG0706「根治切除不能の局所進行頭頸部がんに対するCDDP+S-1を同時併用する化学放射線療法の第Ⅱ相試験」において主たる解析の結果、腫瘍完全消失割合が64.4%と優れた成績であった。また、全生存割合は67.7%、3年無増悪生存割合は60.0%と生存割合に関しても良好な結果となっている。そして、新しいレジメンとして術後ハイリスク症例に対する化学放射線療法に関するプロトコールもほぼ確定し早期の登録開始を目指している。 化学放射線療法の標準化に向けて研究が進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221016B
報告書区分
総合
研究課題名
進行頭頸部がんに対する化学放射線療法を中心とした集学的治療の開発に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 正人(独立行政法人国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 田原 信(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 清田尚臣(神戸大学医学部)
  • 全田貞幹(独立行政法人国立がん研究センター)
  • 本間明宏(北海道大学医学部)
  • 松浦一登(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター)
  • 岩江信法(兵庫県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の主たるプロトコールとして進行頭頸部がんを対象に、S-1(TS-1)とCisplatin(CDDP)および放射線同時併用療法の有効性と安全性を第II相試験にて確認し、次の第Ⅲ相試験にて標準治療であるCDDP単独化学放射線療法に対する優越性を検証して新たな標準治療を確立する。第II相試験終了後、CDDP+S-1併用化学放射線療法の、CDDP併用化学放射線療法に対する優越性を検証するランダム化比較第Ⅲ相試験をおこない標準治療の確立を目指す。さらに、進行頭頸部癌に対する導入化学療法、術後の化学放射線療法についてJCOGプロトコールを作成する準備を行う。同時に、頭頸部がんに対する化学放射線療法の標準化のためのシンポジウムを行い今後の新規治療開発に関して検討する。
研究方法
JCOG0706プロトコール作成と症例登録:JCOG0706に若干のプロトコール改訂を行いJCOGの承認の元で確定して症例の登録を行った。Primary endpointは完全奏効割合(CR割合)、Secondary endpointは局所無増悪生存期間、無増悪生存期間、治療成功期間、全生存期間、栄養補助を要さない期間、有害事象である。化学療法スケジュールはS-1+ CDDP療法であり、放射線治療開始と同時にS1とCDDP併用のレジメンを5週1コースとして2コース繰り返す。追加化学療法としてS-1+ CDDP療法を施行する。化学放射線療法にてCR、Good PR、PRの場合、最終の放射線照射日から4週間後に追加化学療法を開始する。追加化学療法は化学放射線療法時と同じ化学療法レジメンを4週1コースとして2コース繰り返す。救済手術もプロトコール治療としCR/Good PR以外で救済手術が行えなかった場合にはプロトコール治療中止、後治療自由とする。予定登録数は1段階目25名、2段階目20名の計45名となった。
結果と考察
症例登録は2010年7月2日で予定症例数45例が達成された。これらの症例は2013年まで追跡される。主たる解析は平成24年2月に行われた。Primary endpointである腫瘍完全消失割合は、中央判定の結果64.4%であった。その内訳は、CR8例、goodPR21例、PR9例であった。2012年11月のモニタリングレポートでは3年の全生存割合は67.7%、3年無増悪生存割合は60.0%であった。グレード3以上の副作用は粘膜炎が46.7% 、嚥下障害が46.7%、食欲不振が42.2%、放射線皮膚炎が26.7%、好中球現象が26.7%であり重篤な副作用はなかった。救済手術は7例に行われた。術中の合併症として術中損傷-頸動脈grade2が一例のみであった。術後の合併症は、創傷合併症-非感染grade3、grade1がそれぞれ一例、発熱grade2が一例、grade1が2例、皮弁の部分壊死は一例のみ、術後肺炎も認められなかった。3年生存割合67.7%と根治切除不能局所進行頭頸部扁平上皮癌を対象とした臨床試験結果としては良好な結果である。晩期毒性も懸念されたが、grade3以上のもので20%を超えるものは認められなかったが、嚥下障害、口腔内乾燥、唾液腺変化と放射線療法によるものが認められた。根治切除局所頭頸部癌に対してS-1+CDDPを同時併用とする化学放射線療法は認容性があり、抗腫瘍効果、生存も良好な結果であった。救済手術も安全に実施可能であったことから、今後も検討に値する治療法と思われる。
結論
JCOG0706「根治切除不能の局所進行頭頸部がんに対するCDDP+S-1を同時併用する化学放射線療法の第Ⅱ相試験」において主たる解析の結果、腫瘍完全消失割合が64.4%と優れた成績であった。また、全生存割合は67.7%、3年無増悪生存割合は60.0%と生存割合に関しても良好な結果となっている。そして、新しいレジメンとして術後ハイリスク症例に対する化学放射線療法に関するプロトコールもほぼ確定し早期の登録開始を目指している。 化学放射線療法の標準化に向けて研究が進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221016C

収支報告書

文献番号
201221016Z