文献情報
文献番号
201221014A
報告書区分
総括
研究課題名
進行・再発肝細胞癌に対する動注化学療法と分子標的薬併用による新規治療法の確立を目指した臨床試験(Phase III)ならびに効果を予測するbiomarkerの探索研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-015
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 正俊(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 西尾 和人(近畿大学 医学部)
- 赤澤 宏平(新潟大学医歯学総合病院医療情報部 医療統計学・医療情報学)
- 奥坂 拓志(国立がんセンター中央病院 肝胆膵内科)
- 熊田 卓(大垣市民病院 消化器科)
- 池田 公史(国立がんセンター東病院 肝胆膵腫瘍科)
- 荒井 保明(国立がんセンター中央病院 放射線診断部)
- 永野 浩昭(大阪大学大学院医学系研究科 消化器外科学)
- 波多野 悦朗(京都大学外科(肝胆膵・移植外科) 肝胆膵・移植外科)
- 佐々木 裕(熊本大学大学院医学薬学研究部消化器内科学 肝発癌進展の分子機構の解明)
- 相方 浩(広島大学病院 消化器・代謝内科)
- 山崎 隆弘(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学 消化器内科)
- 金井 文彦(千葉大学医学部附属病院 消化器内科)
- 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器内科)
- 小尾 俊太郎(公益財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院 肝臓科)
- 山本 和秀(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器・肝臓内科学)
- 今井 康陽(市立池田病院 消化器内科)
- 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科)
- 高山 哲治(国立大学法人徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学・腫瘍学)
- 上嶋 一臣(近畿大学医学部 消化器内科)
- 石川 達(済生会新潟第二病院)
- 小川 力(高松赤十字病院 消化器内科)
- 小林 功幸(広島市立広島市民病院 内科)
- 辻 邦彦(手稲渓仁会病院 消化器病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
23,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝細胞癌においては、罹患率の高さや進行した場合の効果的な治療法がない現状から、根治および再発予防、生存期間の延長などの点で有効な新薬の開発や、新たな治療法の開発が望まれている。本邦において肝動注療法は、切除不能、局所壊死療法および肝動脈化学塞栓療法が適応とならない進行肝細胞癌患者に対して選択される療法である。しかしながら、奏効率が50%を超える報告があるものの、いずれも少数例を対象とした、あるいは対照を伴わない研究であるため、科学的根拠を持って推奨されている薬剤の組み合わせがないとされているのが実情である。また生存期間の延長については確認されていない。
一方、ソラフェニブは根治不能の進行肝細胞癌患者に対して奏効率は低いものの、唯一、臨床試験にて全生存率を延長させた薬剤である。
以上のことより、ソラフェニブと低用量シスプラチン/フルオロウラシル肝動注療法を併用することにより、前者の生存期間延長と、後者の奏効率上昇の相乗効果が期待されるため、臨床的に大きな意味があり、将来、標準的治療として位置づけられる可能性がある。またLow-dose FPの上乗効果が証明された場合、これまで前向き比較試験として検証されてこなかった肝動注化学療法(Low-dose FP療法)の有用性も客観的に評価されることとなる。
一方、ソラフェニブは根治不能の進行肝細胞癌患者に対して奏効率は低いものの、唯一、臨床試験にて全生存率を延長させた薬剤である。
以上のことより、ソラフェニブと低用量シスプラチン/フルオロウラシル肝動注療法を併用することにより、前者の生存期間延長と、後者の奏効率上昇の相乗効果が期待されるため、臨床的に大きな意味があり、将来、標準的治療として位置づけられる可能性がある。またLow-dose FPの上乗効果が証明された場合、これまで前向き比較試験として検証されてこなかった肝動注化学療法(Low-dose FP療法)の有用性も客観的に評価されることとなる。
研究方法
本研究は、外科的切除、局所壊死療法および肝動脈化学塞栓療法が適応とならない進行肝細胞癌患者を対象としたソラフェニブとLow-dose FPによる肝動注化学療法の併用療法のソラフェニブ単独治療に対する優越性を確認するための前向き、無作為化、非盲検、多施設共同、並行群間、第III相、比較臨床試験である。目標症例数190例(片群95例)で、試験デザインはソラフェニブ単独群とソラフェニブとLow-dose FPによる肝動注化学療法の併用療法の2アームでの比較試験である。プライマリエンドポイントは全生存期間(Overall survival)である。
結果と考察
平成24年度(平成24年4月より平成25年2月)は、全国31施設で61例(月平均5.5人)が登録され、計152例(80.0%)の患者が登録され、順調に試験は進行している。
本研究は、進行肝細胞癌に対する標準的治療薬であるソラフェニブと、従来わが国で行われてきた。低用量シスプラチン/フルオロウラシルの動注化学療法の併用の有効性を検証するランダム化比較第III相試験である。前者はグローバル第III相試験において、生存期間の延長が明確に証明されている。また後者においては、明確なエビデンスは存在せず、世界的には標準治療ではないが、約40%の奏効率が得られる治療方法である。併用療法により、前者の生存期間延長と、後者の奏効率上昇が期待されるため、臨床的に大きな意味があり、将来、標準的治療として位置づけられる可能性がある。実際、先に行われた第I相試験の結果、本併用療法のTTPは9.7カ月と、ソラフェニブ単独療法5.4カ月及び動注化学療法単独療法4.1カ月を相加した結果であり、奏効率は38.9%であったことからも併用による治療効果が大いに期待される。また、低用量シスプラチン/フルオロウラシルの動注化学療法の上乗せ効果が客観的に証明された場合に、これまで前向き比較試験として検証されてこなかった動注化学療法の有用性も客観的に評価されることになり、世界に向けてエビデンスを日本から発信することができる。本研究で得られた結果は、エビデンスレベルの高い結果として臨床現場にフィードバックされ、肝細胞癌患者の治療に貢献し、予後改善につながることが予想される。
本研究は、進行肝細胞癌に対する標準的治療薬であるソラフェニブと、従来わが国で行われてきた。低用量シスプラチン/フルオロウラシルの動注化学療法の併用の有効性を検証するランダム化比較第III相試験である。前者はグローバル第III相試験において、生存期間の延長が明確に証明されている。また後者においては、明確なエビデンスは存在せず、世界的には標準治療ではないが、約40%の奏効率が得られる治療方法である。併用療法により、前者の生存期間延長と、後者の奏効率上昇が期待されるため、臨床的に大きな意味があり、将来、標準的治療として位置づけられる可能性がある。実際、先に行われた第I相試験の結果、本併用療法のTTPは9.7カ月と、ソラフェニブ単独療法5.4カ月及び動注化学療法単独療法4.1カ月を相加した結果であり、奏効率は38.9%であったことからも併用による治療効果が大いに期待される。また、低用量シスプラチン/フルオロウラシルの動注化学療法の上乗せ効果が客観的に証明された場合に、これまで前向き比較試験として検証されてこなかった動注化学療法の有用性も客観的に評価されることになり、世界に向けてエビデンスを日本から発信することができる。本研究で得られた結果は、エビデンスレベルの高い結果として臨床現場にフィードバックされ、肝細胞癌患者の治療に貢献し、予後改善につながることが予想される。
結論
本研究班はこの臨床試験の遂行を第一義として活動している。班員が一丸となって登録を推し進めており、進捗は順調である。本研究の成功は日本の肝細胞癌治療のすぐれた技術を世界に示すために必ず成功させる必要がある。
平成25年年9月までに190例の登録を終えることができるよう、鋭意登録促進中である。
平成25年年9月までに190例の登録を終えることができるよう、鋭意登録促進中である。
公開日・更新日
公開日
2013-08-21
更新日
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