地域におけるがん対策の推進と患者支援に資する介入モデルの作成に関する研究

文献情報

文献番号
201221006A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるがん対策の推進と患者支援に資する介入モデルの作成に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 清高(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん情報提供研究部・医療情報コンテンツ研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 清水秀昭(栃木県立がんセンター)
  • 篠田雅幸(愛知県がんセンター中央病院)
  • 岡本直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所 がん予防情報学部)
  • 今井博久(国立保健医療科学院)
  • 田城孝雄(順天堂大学 スポーツ健康科学)
  • 元雄良治(金沢医科大学)
  • 山口佳之(川崎医科大学)
  • 川上公宏(香川県立中央病院)
  • 篠崎勝則(広島県立広島病院)
  • 北村周子(三重県がん相談支援センター)
  • 照井隆広(医療法人社団爽秋会緩岡部医院)
  • 増田昌人(琉球大学医学部附属がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国民の不足感が強く、必要性の高いがん医療に関して、治療のみならず療養生活を含めた患者家族の自立的な意志決定支援を含めた、社会的支援の活用を促す取り組みを収集・検証し、自治体や医療機関を含めた関係団体向けに企画立案、実行計画策定、準備、評価と検証の各フェーズに応じて参照活用できるモデルを作成することにより、全国のがん患者・家族の療養生活の質を向上させることである。 この研究班で試作・提言・整備する「地域の療養(資源)に関する情報」の収集と作成、活用の取り組みによって、患者個人にとっては、より能動的に治療や地域における連携の取り組みに参加でき、地域においては、療養生活や社会生活を営む上で必要な連携や自治体や医療機関が核となった社会支援の整備を進めることができる。
研究方法
国立がん研究センターがん対策情報センターが、がん情報ツールとして作成した「患者必携」に含まれるべき地域社会支援体制に関する情報としての収集整備を行った。地域独自の取り組みと普及・活用状況等をもとに、情報提供と地域特性に応じた社会的支援のあり方に必要な行動計画として関係諸機関に対して推奨される施策を、モデル地域での先行取り組みの成果とともに提言を行った。
 検証・評価軸を実装し、比較検証、継続的な評価に向け、実行可能性も含めて研究調査を実施した。有用性や情報の充足感を、利用者である患者・家族及び医療者から評価を得ることで、今後の地域情報普及において得られた成果を活用する。
施設規模・がん患者の割合・相談支援センターや地域医療連携・在宅医療・緩和ケア・終末期/在宅看取りに対する意識、患者サロンや支援団体との関与、「地域の療養情報(研究班作成による試作版を含む)」の評価など、地域・施設ごとの状況把握と社会的・文化的背景を踏まえた課題設定を行った上で調査を実施した。
結果と考察
(1)がん患者の社会的支援に向けた取り組み状況の収集と活用の促進に向けた研究
一連の調査研究を通じて、都道府県をはじめとする地域における社会支援の現状が明らかになり、先駆的な取り組み例として提示するとともに、自治体における実行計画推進に必要な支援や評価のための評価体系のプロトタイプを確立することができた。こうした提案は2期がん対策基本計画において、県、地域のきめ細かなレベルの情報提供が重要である旨盛り込まれ、これまで地域の療養情報収集・作成支援を実施した(新規/更新9県、作成/改訂支援計17府県)。行政関係者・相談支援・医療者を含めた全国規模の研修会(東京24年11月、患者必携「地域の療養情報2012」の提供に向けて 地域における情報発信とがん患者支援)では23都府県74名の参加を得ることができ、事例報告に続き、地域における情報つくりと集約と共有、活用と連携構築に向けた意見交換、課題抽出を行った。すでにこの班で実施しているワークショップ形式による提案型研修を実践し、各地域での検討プロセスへ組み込むことについて合意形成を図ることが可能であった。これを踏まえ、さらに広い地域、さまざまな関係者に対しての提言につなげることができると考えている。
(2)療養生活の質の向上に資する支援施策の評価と検証
栃木、静岡、三重、愛媛、愛知、宮城、沖縄、兵庫、石川、熊本、広島、香川、東京の13地域16施設において、「患者必携 がんになったら手にとるガイド」の患者への配布を含むパイロット調査を実施、717名(男性40.9%)から回答を得た。必要とする情報は主に治療や副作用、食事や生活上の工夫に関する情報ニーズの多い診断後間もない患者が最も多かった。情報の入手方法(97%)、活用(本人91%、家族31%)についてよいとする意見がなされ、受け取った時期についてもちょうどよかった(61%)、不安の軽減に役だった(70%)など、時期、分量、難易度について概ね良好な結果であった。
地域の療養情報については(N=461)、利用頻度について「ほぼ毎日/数回(33%)」、「1度だけ(36.2%)」、有用性について「とてもよかった(12%)、ややよかった(24%)」など、「手にとるガイド」とくらべ利用頻度や有用性の評価は低いものの、自由回答では、地元の情報が記載されていることを評価した意見が多く寄せられていた。
結論
地域における療養支援情報の作成、普及活用を通して、身近な社会の文化・風土に根ざした主体的な療養の方針決定や納得につながり、良好な相互理解、療養生活上のアウトカムを得られると考えられた。協力地域の増加および地域における深化を進めることで、多くの関係者の参画と情報提供の最適化に向けた協力基盤構築につなげることができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201221006B
報告書区分
総合
研究課題名
地域におけるがん対策の推進と患者支援に資する介入モデルの作成に関する研究
課題番号
H22-がん臨床-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渡邊 清高(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センターがん情報提供研究部・医療情報コンテンツ研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 清水秀昭(栃木県立がんセンター)
  • 篠田雅幸(愛知県がんセンター中央病院)
  • 岡本直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所 がん予防情報学部)
  • 今井博久(国立保健医療科学院)
  • 田城孝雄(順天堂大学・スポーツ健康科学)
  • 元雄良治(金沢医科大学)
  • 山口佳之(川崎医科大学)
  • 川上公宏(香川県立中央病院)
  • 篠崎勝則(広島県立広島病院)
  • 北村周子(三重県がん相談支援センター)
  • 照井隆広(医療法人社団爽秋会緩岡部医院)
  • 増田昌人(琉球大学医学部附属がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国民の不足感が強く、必要性の高いがん医療に関して、治療のみならず療養生活を含めた患者家族の自立的な意志決定支援を含めた、社会的支援の活用を促す取り組みを収集・検証し、自治体や医療機関を含めた関係団体向けに企画立案、実行計画策定、準備、評価と検証の各フェーズに応じて参照活用できるモデルを作成することにより、全国のがん患者・家族の療養生活の質を向上させることである。
研究方法
国立がん研究センターがん対策情報センターが、がん情報ツールとして作成した「患者必携」に含まれるべき地域社会支援体制に関する情報としての収集整備を行った。地域独自の取り組みと普及・活用状況等をもとに、情報提供と地域特性に応じた社会的支援のあり方に必要な行動計画として関係諸機関に対して推奨される施策を、モデル地域での先行取り組みの成果とともに提言を行った。
 検証・評価軸を実装し、比較検証、継続的な評価に向け、実行可能性も含めて研究調査を実施した。施設規模・がん患者の割合・相談支援センターや地域医療連携・在宅医療・緩和ケア・終末期/在宅看取りに対する意識、患者サロンや支援団体との関与、「地域の療養情報(研究班作成による試作版を含む)」の評価など、地域・施設ごとの状況把握と社会的・文化的背景を踏まえた課題設定を行った上で調査を実施した。
結果と考察
(1)がん患者の社会的支援に向けた取り組み状況の収集と活用の促進に向けた研究
都道府県をはじめとする地域における社会支援の現状が明らかになり、先駆的な取り組み例として提示するとともに、自治体における実行計画推進に必要な支援や評価のための評価体系のプロトタイプを確立することができた。こうした提案は2期がん対策基本計画において、県、地域のきめ細かなレベルの情報提供が重要である旨盛り込まれ、これまで地域の療養情報収集・作成支援を実施した(新規/更新9県、作成/改訂支援計17府県)。行政関係者・相談支援・医療者を含めた全国規模の研修会(平成23年11月と24年11月に2回、患者必携「地域の療養情報」の提供に向けて 地域における情報発信とがん患者支援)では、事例報告に続き、地域における情報つくりと集約と共有、活用と連携構築に向けた意見交換、課題抽出を行った。すでにこの班で実施しているワークショップ形式による提案型研修を実践し、各地域での検討プロセスへ組み込むことについて合意形成を図ることが可能であった。これを踏まえ、さらに広い地域、さまざまな関係者に対しての提言につなげることができると考えている。
当研究班と東京大学グローバルCOEとの共催にて「合同シンポジウム がん医療と死生学」を東京にて23年2月に実施、各地域の文化的社会的背景や死生観を考慮した患者家族・地域に根ざした情報提供支援のあり方について医療従事者、人文科学研究者、行政担当者、一般市民の幅広い参画を得て議論検討を行い、今後の地域介入に向けた提言を得た。
(2)療養生活の質の向上に資する支援施策の評価と検証
栃木、静岡、三重、愛媛、愛知、宮城、沖縄、兵庫、石川、熊本、広島、香川、東京の13地域16施設において、「患者必携 がんになったら手にとるガイド」の患者への配布を含むパイロット調査を実施、717名(男性40.9%)から回答を得た。必要とする情報は主に治療や副作用、食事や生活上の工夫に関する情報ニーズの多い診断後間もない患者が最も多かった。情報の入手方法(97%)、活用(本人91%、家族31%)についてよいとする意見がなされ、受け取った時期についてもちょうどよかった(61%)、不安の軽減に役だった(70%)など、時期、分量、難易度について概ね良好な結果であった。
地域の療養情報については(N=461)、利用頻度について「ほぼ毎日/数回(33%)」、「1度だけ(36.2%)」、有用性について「とてもよかった(12%)、ややよかった(24%)」など、「手にとるガイド」とくらべ利用頻度や有用性の評価は低いものの、自由回答では、地元の情報が記載されていることを評価した意見が多く寄せられていた。
結論
地域の特性や患者動向に応じて個別的に利用できるための、情報提供・相談支援、情報等の充実をテーマに行政関係者、研究協力者、医療従事者との協働を積極的に行った。今後の情報収集や更新、普及に向けた取り組みにおいて、自治体・医療機関の連携の必要性、さまざまな職種間の協働の重要性は介入した地域に関わらず同様であったが、その進捗や合意形成については地域ごとに異なっていた。協働する地域の増加および地域における深化を進めることで、多くの関係者の参画と情報提供の最適化に向けた協力基盤構築につなげることができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201221006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
癌治療学会8回、公衆衛生学会3回、医療の質・安全学会11回、その他サイコオンコロジー学会、看護管理学会、クリニカルパス学会、医療・病院管理学会など幅広い分野の専門学会にて特別企画を含めて当研究班の研究成果を発信した。情報提供にとどまらず、地域における療養資源に関わる情報の収集・整理・活用・普及と実践における課題を提示し、がん対策としての論点や事例の共有、地域の身近な情報提供の活動に結びつきつつある。
臨床的観点からの成果
情報ツールの導入、各地域や医療機関での情報介入時などにおいて、情報提供に関わる各職種が現場のニーズに応じた普及・活用に向けた提案が多く寄せられた。療養介護、地域における家族観、宗教観、死生観を交えた情報作成と普及は、緩和ケアや療養支援に向けた情報提供に当たっても重要である旨が当センター主催の研修会や講演会で多く寄せられたことから、地域における緩和ケアと療養支援情報作成に向けた提言等実施した。717名を対象とした地域の療養情報の提供を含めた介入前後の調査の分析を行い報告予定。
ガイドライン等の開発
患者向けのがんの療養支援、がんに関わる情報提供の施策として、拠点病院あるいは都道府県がん診療連携拠点病院として今後取り組むべき具体的事例として平成25年6月7日開催第2回がん診療提供体制のあり方に関するワーキンググループにて紹介されたり、拠点病院連絡協議会(国立がん研究センター主催)、がん医療政策に関するミーティングで情報提供のモデルとして提示されるなど、全国レベルおよび都道府県などさまざまな地域において広くがんの情報提供における標準的なツールとして提示がなされた。
その他行政的観点からの成果
がん対策推進基本計画の中間報告でも普及の必要性が説かれるとともに、基本計画・アクションプランで23府県において患者必携の普及が施策目標に盛り込まれた。地域の療養情報の作成は25年6月時点で試作を含め24府県が公開され、29道府県で具体化され、地域独自の工夫や情報を盛り込みながら、作成と普及、活用のための議論がなされている。 地域におけるがん対策や療養資源の情報はがん情報サービスでも各県のサイトへのリンクを一覧で提示することにより、好事例の共有やより広い関係者への普及のきっかけとなってきている。
その他のインパクト
地域における情報の作成、活用、普及の各プロセスにおいて職種・地域横断的に介入モデルを具体的に提示、研修会「患者必携『地域の療養情報』の提供に向けて 地域における情報発信とがん患者支援」や、各地域での研修などを通して成功のための要素と具体例を提示、活用普及プロセスに介入し、患者・医療者双方の評価を得ることで、利用者視点での情報提供モデルを確立し、がんにとどまらず慢性疾患の医療提供の今後のあり方を提示する機会となった。地域の情報作成や県域を越えた連携の取り組みにつながりつつある。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
10件
(2010年)成人病と生活習慣病,外来看護,薬学図書館,(2011年)日本ヘルスコミュニケーション学会誌,月刊ナーシング,(2012年)都道府県がん対策の推進-計画策定のガイドブック-等
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
38件
癌治療学会8回、公衆衛生学会3回、医療の質・安全学会11回、その他サイコオンコロジー学会、看護管理学会、クリニカルパス学会、医療・病院管理学会など
学会発表(国際学会等)
2件
がん情報普及 包括的な情報処方プログラムに関する発表(UICC、2010、2012年)
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
39件
各都道府県において地域における情報提供が施策目標に盛り込まれた。地域の療養情報の作成はH27年時点で35道府県公開され、改訂更新されている。国立がん研究センターがん情報サービスにて公開。
その他成果(普及・啓発活動)
185件
がん情報の普及、患者必携、情報活用と普及に関しての講演会、取材、成果の発信をマスメディア、専門誌、医療機関、患者・市民向けなど幅広く成果の発信とともに実施した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2015-09-02

収支報告書

文献番号
201221006Z